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アート引越にTSUTAYA…相次ぐMBOの背景とは

2011.02.10 THU

ここのところ、大企業のMBOが相次いでいる。MBOとは、Management Buyoutの略で、経営陣が自社を買収するという意味だ。その中でも「創業者」がMBOする例としては、引っ越し業のアートコーポレーション、レンタルビデオ店・TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が国内ではあり、海外では男性誌・プレイボーイの例がある。

こうした動きの背景について、大阪学院大学流通科学部准教授の奥田真也氏は「四半期決算や内部統制監査の導入などディスクロージャー(情報公開)に対する規制が厳しくなるなどした結果、上場維持コストが以前と比べて上昇していることがあげられるだろう。また、IFRS(国際会計基準)の導入など、ディスクロージャー規制によって追加的なコストが将来的にも発生する可能性は高いと思われる」と説明する。

上場していると、株主に対し説明責任など「面倒くさい」ことが多いうえに、株主から経営に口出しをされることに各社がデメリットを感じているというのだ。実際、CCCの増田宗昭社長もMBOの狙いについて、「非公開化することで上場維持に伴うコストを削減すると同時に、機動的な経営戦略を実践するため」と説明している。

さらに、奥田氏はコストの問題も指摘。「優良企業にとっては、低金利政策のおかげで銀行からの借入金利が低く抑えられているので、資金調達のコストはかなり低い。それに対して、そもそも投資家が要求する収益率(配当利回りなど)は、銀行からの借入金利などに比べて高いうえ、上場維持コストが高まってきているので、株式による資金調達コストは相対的に高くなっている」。

また、マネー誌『マネーポスト』(小学館)編集長の鈴木崇司氏は「創業者」がMBOをする理由について、上場企業は経営の自由度が低く、ステークホルダー(利害関係者)の意向に配慮しなければならず、経営者としては歯がゆい思いをすることが少なくないことをあげる。

そして、「上場を目標に会社を始める創業者は多いが、実際に上場してみると自由がきかないことに気が付く。創業者は会社への愛もあるため、会社が伸び悩んでいる時には会社を良くしたい、新機軸に切り込みたい、と思うもの。そのためにはリスクをとる挑戦も必要になるが、上場していればそれを嫌がるステークホルダーの意向にも配慮せざるを得ず、経営スピードが鈍りかねない。だが、経営者がオーナーであれば思い切った決断もしやすい、ということで創業者によるMBOが相次いでいるのでは」と分析する。

だが、「上場をやめる」ということは、資金調達や信用面でデメリットにはならないのか? 
前出の奥田氏はCCCの場合は微々たるものだと説明する。「上場維持のためのコストがベネフィット(恩恵)を大きく上回ると予想できるからこそMBOが盛んになってきているのだと思われる。上場子会社の完全子会社化が盛んになっているのも同様の理由だろう」(奥田氏)。

では、これからMBOはますます増えてくるのか? 鈴木氏は、その可能性はあるとみる。「基本的にMBOをするのは、国内市場だけを相手にする『新たな資金調達の必要が低い企業』でしょう。世界と戦う会社はMBOはまずしません。最近MBOが増えているのは、日本企業の手詰まり感を象徴しています」。

つまり、昔からある成熟産業で斬新な事業展開のプランを描きづらい場合、縮小トレンドの国内市場に特化してビジネスするのであれば大規模な新規投資は必要なく、上場をやめたほうが得策ということだ。ただ、そう判断する企業が相次ぐということは、逆にいえば「世界市場での競争」に背を向けて国内に引きこもる意思と読み取ることもできる、というのが鈴木氏のいう「手詰まり感」の意味だ。

もちろん、MBOをして上場廃止するすべての企業が、そうした後ろ向きな意思を抱いているわけではないだろうが、創業者によるMBOが相次ぐ背景には、国内市場の縮小という大きな流れが影響していることは間違いないようだ。

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