オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

テクノロジーよ、どこへ行く?

2011.03.25 FRI


『メタルカラーの時代15 町工場からノーベル賞まで』 山根一眞/小学館文庫/590円
文系人間にこそ読んでほしい
“喩え”が冴える技術トーク

著者の山根さんは、1991年からクリエイティブな技術者を取材し続け、「メタルカラーの時代」と題するシリーズ本にまとめてきた。単行本と文庫をあわせて、シリーズ合計で24冊というから、この仕事は山根さんのライフワークと呼ぶべきものだ。
本書は文庫版「メタルカラー」シリーズでは一番新しい作品。ノーベル賞を受賞した野依良治氏、田中耕一氏から、町工場や民間企業の技術者まで、18本の取材原稿が収められている。
読んでなにより驚嘆したのは、山根さんの類まれなる“噛み砕き力”だ。たとえば、田中耕一氏のノーベル賞受賞の理由は「生体高分子の同定および構造解析のための手法開発」だが、これじゃ素人には意味不明。それを山根さんは「命あるものの材料であるタンパク質の素性を突き止め、その構造を知る方法」と平易な言葉で翻訳してくれる。喩え話を投げかけて、取材相手の説明欲をくすぐるのもじつに上手い。
そんな山根さんの誘いに乗るかのように、技術者の面々も、通り一遍の研究紹介にとどまらず、技術開発に懸ける思いを熱っぽく語る様子が行間からうかがえる。
ある炊飯器開発担当者は、入社して20年間「ただひたすら毎日、会社のなかでコメを炊いてきた」と語る。僕らが美味しいご飯を食べられるのは、こうした技術者の地道な実験や研究の積み重ねがあってこそ。
多くの未熟児の命を救った人工呼吸器、ベルリンの壁を破壊した巨大ペンチなど、隠れた“名”技術ガイド本としても楽しめる。科学を敬遠しがちな文系人間にこそ読んでほしい1冊だ。

  • これまでのサイエンスの話をしよう

    『科学史年表 増補版』
    小山慶太/中公新書/1029円

    天文観測に大きな業績を遺したティコ・ブラーエが亡くなった1601年から小惑星探査機「はやぶさ」が帰還した2010年まで約400年。その歴史をぎゅっと詰めた一冊だ。X線の発見、特殊相対性理論の発表、原爆の開発、地球温暖化論争など、科学史のハイライトが次々と目に飛び込む。今の科学技術がどのような歴史的背景を持っているのかが立体的に見えてくるはずだ。
  • これが本当のスーパーロボット大戦!?

    『ロボット兵士の戦争』
    P・W・シンガー/日本放送出版協会/3570円

    無人潜水艦が海上を偵察し、無人飛行機は上空から敵を発見のうえ、たちまち殺害…。これはSF映画のエピソードではない。この本は、研究開発が進められ、実際に活用もされつつある軍事技術を丹念にレポートしたもの。新しい戦争が我々の眼前に現れつつあるのがよくわかる。そして、優れた技術が平和的なものばかりを生み出すわけではないという現実も見えてくる。
  • テクノロジーが気持ちを伝える

    『満月をきれいと僕は言えるぞ』
    宮田俊也、山元加津子/三五館/1575円

    脳幹出血で倒れ、植物状態と医師に言われた“宮ぷー”こと宮田俊也。しかし、彼を支える一人、山元加津子(愛称“かっこちゃん”)は意思伝達装置の力を借りて、その思いを受けとっていく──。本書には、宮ぷーとかっこちゃんたちが意思を伝えあっていく軌跡が綴られている。当事者の努力と、体の一部を使って意思伝達を可能とした技術のコラボには心を揺さぶられる。
テクノロジーよ、どこへ行く?

※フリーマガジンR25 282号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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