オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

明るい未来の見つけ方

2011.04.07 THU


『八日目の蝉』 角田光代/中公文庫/620円
日常を喪失した人生を
いかに受け止めるか

生まれてから7日で死んでしまうといわれている蝉。「でも、もし、七日で死ぬって決まってるのに死ななかった蝉がいたとしたら、仲間はみんな死んじゃったのに自分だけ生き残っちゃったとしたら」。
まもなく映画も公開されるこの長編小説のタイトルには、日常を喪失した人生をいかに受け止めるかという重い問いが込められている。
物語は、希和子が不倫相手の家に忍び込み、赤ん坊を連れ去るシーンから始まる。第1章では、3年半以上にわたる二人の逃亡生活が希和子の視点から綴られていく。恵理菜という名を持つ赤ん坊を「薫」と名づけた希和子は、東京から名古屋、奈良、小豆島へと移動しながら、偽りの母として目一杯の愛情を薫に注ぐことになる。
第2章では視点が恵理菜に切り替わる。大学生となった恵理菜によって語られるのは、事件後からずっと振り払うことのできない「八日目の蝉」として生きる感覚だ。本当の両親のもとに戻されてからの恵理菜は、家族とも世間ともうまく折り合えないままの日々を過ごす。その不全感の責を、自分を誘拐した希和子に求めるものの、同時にかつて豊かな日常を与えてくれたのも希和子だったのだ。そんな恵理菜は、どうやって自分の生に向き合えばいいのだろう――。
多くの人から日常を奪っていった3月11日以後の日本もまた、恵理菜と同じく「八日目の蝉」かもしれない。“前向きに生きよう”なんて簡単な言葉では癒やせない人生がある。そんな人たちを、この傑作長編はとても柔かくそして静かに励ましてくれる。

  • 何度でも立ち上がってきた

    『復興計画 ─幕末・明治の大火から阪神・淡路大震災まで』
    越澤 明/中公新書/882円

    「我が国の都市計画、まちづくりの歴史をふり返ると、災害復興の繰り返しであったといっても過言ではない」と都市計画を専門とする著者は言う。幕末や明治の大火、関東大震災、空襲などによる戦災、そして阪神・淡路大震災の後に都市はいかに復興したのかを追う1冊。天災や人災に直面した先人たちの努力と苦闘の軌跡をたどり、今に生かすべき知恵を読み取りたい。
  • 危機に表われる人間の本質

    『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』
    レベッカ・ソルニット・著、高月園子・訳/亜紀書房/2625円

    巨大な災害が起こった時、人間はどのような行動をするだろう? 各人が自分のことばかり考えて勝手な振る舞いをするのでは――と思う人も多いだろう。だが、この本は巨大地震やハリケーン、9・11事件などの大惨事で完全に逆の事態が生じたことを示す。人々は助け合い、ともにピンチへ向き合った。危機に際して立ち現れる人の本質に、未来を開く力は宿っている。
  • かくして大いなる旅は始まった

    『ONE PIECE STRONG WORDS』上巻
    尾田栄一郎/集英社新書/各798円

    本書は超人気漫画『ONE PIECE』の数多ある見せ場から「旅立ち」「戦い」「覚悟」「智慧」「別れ」のテーマごとにグッとくるセリフをまとめたものだ。海賊王をめざす主人公ルフィが叫び、仲間の剣豪ゾロや航海士ナミたちもその生き様が垣間見えるような言葉を口にするなど、名シーンが目白押し! 力強い言葉は明日へ漕ぎ出そうとする者の背中をきっと押してくれる。
明るい未来の見つけ方

※フリーマガジンR25 283号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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