オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

教え上手になる秘訣

2012.04.19 THU


『伝説の灘校教師が教える 一生役立つ学ぶ力』 橋本 武/日本実業出版社/1365円
即効性を求めない
スローティーチングのススメ

「すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる」。伝説の灘校教師が実践していた授業のエッセンスは、この一言に尽きる。
昭和9年に国語教師として灘校に赴任した著者は、中学3年間をかけて中勘助の小説『銀の匙』をひたすら読み続ける授業を行った。単に読み込むだけではない。作品の中で凧揚げのシーンがあれば、実際に凧揚げをする。駄菓子が登場すれば、教室内で食べてみる。主人公が百人一首を覚えるエピソードが登場したら、百人一首を覚えさせる。
子どもたちの興味を惹く“横道”の要素をふんだんに盛り込んだ著者の授業。「子どもが遊ぶような感覚で学ぶように仕向ける」という言葉は、最近流行りのゲーミフィケーションとも一脈通じている。
ぜひとも真似たいと思ったのは、苦手な分野とのつきあい方を語っているくだり。新米教師だったころ、著者は国文法の勉強を一からやり直したのだが、その際、「自分自身のための教科書をつくるつもりで勉強に取り組」んでいったという。そうやって、教える側と学ぶ側双方の立場に立ったことで、ゴチャゴチャした知識がひとつの流れとして整理できた。なるほど、教えるつもりで勉強するという方法は、けっこう効果が高そうだ。
「スローリーディング」と銘打たれた著者の授業は、手間暇をかけて教材研究やプリントづくりをしたからこそ、生徒たちにもその面白さが伝わったのだろう。教えることに、即効性を求めることは禁物。その意味で本書は「スローティーチング」のススメでもある。

  • オレ流の精髄、ここにあり。

    『采配』
    落合博満/ダイヤモンド社/1575円

    中日ドラゴンズ前監督の個性的なスタイルが「オレ流」と称されていることは有名だろう。彼が監督として8年間采配を振った経験に基づき、組織や指導者について大いに論じたのが本書だ。「ミスは叱らない。だが手抜きは叱る」「平均点から一芸を磨け」など、才能を育んで伸ばすためのストレートな言葉はどれも重い。こちらもしっかりミットを構えよう。
  • 教えるテクニックを指南

    『「分かりやすい教え方」の技術』
    藤沢晃治/講談社/840円

    仕事でも趣味でも、著者曰く「日常のあらゆる場面」で、教える立場に立たなければいけない局面に人は出くわす。そんな時のために、この本で分かりやすく教えるテクニックを学んでおこう。心構えと技術という二つの柱を軸に解説される中身はなかなか実践的。生徒となる側をお客様と見なし、先生はサービス提供者としてふるまうべし、というスタンスも明快だ。
  • 指導の鉄人

    『9割は伸ばせる できる人の教え方』
    安河内哲也/中経出版/600円

    人気の予備校講師というまさに教えることのスペシャリストが、僕らに教え方をレクチャー! 20年以上のキャリアに裏打ちされた、細かいところにまで配慮が行き届いた方法には感服だ。間や抑揚を効果的に使うことや、実のある配布資料を作ることなど、幾つものコツが紹介されている。教える内容をシンプルにすべきとの見解は、教えられる側にとってもありがたい。
教え上手になる秘訣

※フリーマガジンR25 306号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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