オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

経営者目線で仕事を見る

2013.05.16 THU


『ヤバい経営学』 フリーク・ヴァーミューレン/東洋経済新報社/1680円
実証的な経営学は
ビジネスの常識を破壊する

学問の面白さというのは、僕らが常識だと思っている事柄をデータや実験を通じてくつがえしてくれるところにある。その見事なお手本を示してくれるのが、本書『ヤバい経営学』だ。

たとえば会社の収益が悪化したとき、人員削減をするのは、ごく一般的な経営策になっている。ところが本書が紹介する調査によれば、「人員削減は意味がないどころか、多くの場合、利益率を悪化させていた」。なぜなら、人員を削減すると、残りの社員のモチベーションが下がり、その後「自己都合退職が増える」からだという。

“危機の時代を乗り越えるためには、リスクを取る「イノベーション」が必要だ”という主張を否定する人は少ないだろう。しかし恐るべきことに、統計は真逆の事実を告げるのだ。すなわち「イノベーションを起こす会社は早く死ぬ。ほとんど例外なくだ」。

なんて具合に、本書は“ビジネスの常識”を次々と木っ端微塵に破壊していくのだが、こうした「ヤバい経営学」の知見は、社会で働く僕ら一人ひとりの生存戦略にもかなり応用が利きそうだ。たとえば、業績が悪いときは小さな収入源を増やし、好調のときは特定のビジネスに力を入れるという戦略は、会社だけでなく個人単位でもかなり当てはまる。ところが会社も個人も、その逆をやりがちなのだ。

ビジネスにまつわる多くの「常識」は、特殊な成功例の一般化や物真似のリピートによって作られていく。多くのビジネス書もしかり。うまい話に踊らされないための予防薬として本書を活用してもらいたい。

  • 大戦略を練るために

    『戦略論の名著 孫子、マキアヴェリから現代まで』
    野中郁次郎・編著/中公新書/840円

    「国家や組織運営の場」において必要とされる戦略。それを研究してきた執筆陣が、古今東西の戦略論12冊を論じた好著だ。『孫子』や『君主論』のような古典に始まり、石原莞爾や毛沢東、そして今世紀に入ってから刊行された人類の宇宙における活動を視野に入れた本までもが扱われている。大局的な見地に立つためのブックガイドとして、手に取ってみては?
  • 日本の誇る経営者

    『小倉昌男 経営学』
    小倉昌男/日経BP社/1470円

    宅急便の生みの親として知られ、晩年は福祉事業に力を尽くした小倉昌男が、現役の経営者として活躍したころを振り返った1冊。といっても、功成り名遂げた人物による漠然とした思い出に終始するような本ではない。市場の分析、サービスとコストの関係、そして何よりもフェアな姿勢…最前線で考え、決断を下してきた軌跡から学べるポイントは数知れない。
  • なるほど! ザ・経営学

    『世界の経営学者はいま何を考えているのか』
    入山章栄/英治出版/1995円

    ドラッカーをアメリカの経営学者はほとんど読んでいない──。冒頭から意外な指摘を行う本書は、学問としての経営学が直面しているテーマを丁寧に解説したもの。イノベーションやネットワークについて、科学性を重視する第一線の経営学者がどう取り組んでいるのか。日本の経営書とはずいぶん異なる、世界の経営学の潮流を見ておいて損はないはずだ。
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※フリーマガジンR25 329号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

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