オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

あなたが知らない国家

2013.06.20 THU


『謎の独立国家ソマリランド』 高野秀行/本の雑誌社/2310円
世界が認めていない
ハイパー民主主義国家の正体

ソマリランドに関心がない人でも、冒頭2~3頁でまちがいなく引き込まれる。

アフリカ東北部のソマリア共和国は「リアル北斗の拳」と呼ばれるほど、無数の武装勢力に埋め尽くされた「崩壊国家」。海も「リアルONEPIECE」状態で海賊が跋扈している。「いったい何時代のどこの星の話かという感じがするが、そんな崩壊国家の一角に、そこだけ十数年も平和を維持している独立国があるという」。そこが本書のタイトルとなっているソマリア北部のソマリランドだ。「未知」や「謎」が大好物である著者は、この不思議な独立国の実態を確かめるため、自ら「謎の未確認国家」に足を踏み入れる──。

取材のメイン会場は「カート宴会」。カートとは覚醒植物で、ソマリランドの男たちは午後になると、このカートをばりばり食べながら宴会を始める。そこに加わり、一緒にカートをかじってハイになりながら、ソマリランドの氏族システムや内戦が終結した理由などを聞き出していく。この氏族体系とソマリ人の歴史を、藤原氏、源氏、平氏という日本の歴史上の氏族になぞらえて説明するところが実に上手い。

平和なソマリランドだけでは飽きたらず、同じくソマリアにある海賊国家や「リアル北斗の拳」が繰り広げられている南部にまで取材に赴く。南部にいたっては命がけで、護衛を雇っての厳戒態勢だ。

ソマリア全土を取材した著者は、ソマリランドを「ハイパー民主主義国家」と呼び、システムとしては欧米や日本以上だという。その奇跡の姿をぜひあなたにも本書で目撃してほしい。

  • 山椒は小粒でも…

    『世界の小国 ミニ国家の生き残り戦略』
    田中義晧/講談社/1575円

    なかなかニュースなどで目にすることは少ないが、実は「世界における国家のおよそ五分の一強はミニ国家」なのだ。それら人口100万人以下の小国の個性を描き出そうと試みたのが、この本である。金融に注力する島国もあれば、観光に特化したところも登場する。グローバリゼーションの世だからこそ、大国のみならず小国ともお付き合いをしていきたいものだ。
  • 若き日の彼らは勉強熱心?

    『独裁者の教養』
    安田峰俊/星海社新書/903円

    若きノンフィクション作家が、ヒトラー、毛沢東、カダフィら独裁者の原点にあたる教養について調べ論じた一冊。それだけでも面白いテーマだが、さらに本書は著者が「中国雲南省とミャンマーの国境地帯にある」独裁政権下のワ州特区へ潜り込んだ取材内容も掲載。資料と実地の体験を通じ、各地の独裁者の履歴書を覗き込んだ気分になれる。各々のお国柄も見えてくる!?
  • 今となっては昔のことだが

    『消滅した国々 第二次世界大戦以降崩壊した183ヵ国』
    吉田一郎/社会評論社/2940円

    第二次大戦以降に消滅した183カ国がどのように誕生し、どのように潰れていったのかを詳細に解説。それにしても、あらためて「消滅した国々」の数に驚愕。183カ国は現存する国とほぼ同数なのだ。それゆえ聞いたこともない国も多数。これだけの数の国の生成から消滅を、ユニークなエピソードとともにまとめあげた著者の腕力に感服。超一級の世界史マニア本だ。
あなたが知らない国家

※フリーマガジンR25 331号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

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