斎藤哲也の読んでるつもり?

“エロ”は研究に値する

2013.09.19 THU

BOOKレビュー


『エロゲー文化研究概論』宮本直毅/総合科学出版/1890円 桜井としき= 撮影
■30年も過ぎればエロゲーも「歴史」になる

これだけ情報環境の変化が激しいと、新しい文化も、20年、30年という単位で大きく移り変わっていく。それだけに「歴史」として記録する価値も生じるのだろう。

80年代を黎明期とするアダルトゲームもそのひとつ。『エロゲー文化研究概論』は、80年代から現在まで、時系列に沿ってアダルトゲームの歴史をたどった一冊だが、作品紹介だけでなく、周辺の社会的・文化的トピックに触れながら、奥行きのあるゲーム文化史を描き出している。

著者の宮本直毅氏が調べた限りでは、日本製エロゲーの元祖は81年にハドソンから発売された『野球拳』。「女体図を描くにも曲線が使えないテキストキャラクターで強引にカクカクと表現されていた」そうで、そのエロ・クリエイティビティに頭が下がる。

それから30年の間に生まれたエロゲーの数々を見ると、育成シミュレーション、恋愛、格闘ゲーム、触手などなどまさに百花繚乱、著者もいうように「『エロ』と一言でいっても、それが指し示す欲望の種類は山ほどある」のだ。

「研究概論」と銘打つだけあって、記述はいたって中立的。たとえば東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄サリン事件、秋葉原連続殺人事件に触れる場合でも、事実の記述とエロゲー業界に与えた影響に言及するにとどめている。その禁欲的な書きっぷりが、本書の資料的価値を担保しているといえるだろう。

■日本屈指のインテリエロ研究集団!?

同じ30年でも『セックスメディア30年史』は、電話風俗、出会い系サイト、エロ雑誌、アダルト動画、大人のオモチャなど、幅広い領域を対象にしたメディア研究の書。

「オカズ系」「出会い系」「性サービス系」という3分類をもとに、それぞれのセックスメディアの変化とその要因を整理する手際のよさは、さすが気鋭の評論家。出会い系サイトの代表取締役、アダルト専門書店社長、オナカップメーカー社長などへのインタビューは時代の証言として貴重であると同時に、ビジネスモデルのケーススタディとしても参考になる。

最後は、日本屈指のインテリエロ研究集団として知られる関西性欲研究会の『性欲の研究』で締めくくろう。鹿島茂と井上章一という両巨頭の対談「西のエッチ 東のエッチ」を皮切りに、19世紀中国で流行った「相公」と呼ばれる「女装の美少年」風俗、日中間の理想の性器像の違いなど、東アジア近代とエロをかけあわせたディープな論考が並ぶ。巻頭対談の「日本のエロ文化が、グローバルスタンダードになる日が来るかもしれない」(井上氏)という言葉が印象深い。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『エロゲー文化研究概論』宮本直毅/総合科学出版/1890円
●『セックスメディア30年史 欲望の革命児たち』荻上チキ/ちくま新書/861円
●『性欲の研究 エロティック・アジア』井上章一(編集)/平凡社/1890円

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