斎藤哲也の読んでるつもり?

創作欲刺激「作ってみた」の究極形

2014.12.04 THU

BOOKレビュー


『ゼロからトースターを作ってみた』トーマス・トウェイツ/飛鳥新社/1470円 桜井としき= 撮影
■トースター作りのために鉄鉱石を採掘!?

最初に『ゼロからトースターを作ってみた』という書名を目にしたときは、何が面白いのかさっぱりわからなかった。トースターぐらい、部品を買い集めればなんとか作れるんじゃないの?

ところが読んでビックリ! 大学院でアートを専攻している著者のイギリス男子は、部品を買い集めるのではなく、鉄や銅といった鉱物を地中から掘り起こし、材料を精製することもひっくるめて、ポップアップ式トースターを作ろうというのだ。

まずは市販の安いトースターを解体し、パーツを確認。部品を「バラ」に分解した結果、部品数は404個、材料も100種類以上にのぼることが判明した。これらすべてをゼロから作るのは無謀すぎる。そこで材料やパーツを絞り込んで、いよいよプロジェクトはスタートした。

鉱山まで出向いて鉄鉱石を採掘し、そこからさらに鉄を抽出する。この時点から失敗の連続で、読んでいるこちら側も出来上がる気が全然しない…。それでもめげずに策を変えて何とか鉄の精錬に成功。さらにマイカ、プラスチック、銅、ニッケルを求めて東奔西走する。そしてちょっとばかりのズルもする。

はたして目論見通り、トーストを焼けたのかどうかは読んでみてのお楽しみだが、このプロジェクトの肝は著者がアート専攻というところにある。出来上がったカバー写真を見てほしい。これをアート作品に近いと思うのは僕だけじゃないだろう。

■いつかナウシカが現れる日のために

日本のアーティストだって負けちゃいない。『ナウシカの飛行具、作ってみた』は、メディアアーティストの八谷和彦氏が、『風の谷のナウシカ』に登場する一人乗り飛行具“メーヴェ”の制作過程を語った1冊。

八谷氏にメーヴェを作ることを決意させたのはイラク戦争だった。開戦まもなく、日本はイラク特別措置法を成立させて自衛隊をイラクに派遣した。その状況が漫画版のナウシカの世界と重なって見えた八谷氏は「いつか現れるナウシカのために、調停のための飛行機を作って世界が変わるのを待とう」と思い、プロジェクトを始動させたという。10年の年月を経て、メーヴェは見事離陸した。その姿はニコニコ動画やYou Tubeで目撃することができる。

『清く正しい本棚の作り方』は、「本好きの本好きによる本好きのための本棚作り」の解説書。なぜ本棚を「自作」するのかという薀蓄から始まり、設計、材料、組立、塗装、設置と懇切丁寧に本棚作りのイロハを指南する。「本書は単なる『DIY関連』の類書とは一線を画」すというように、この本にはただならぬ気迫が充満している。カラー写真をまじえた解説を見るうちに、本棚製作欲が湧いてくることうけあいだ。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『ゼロからトースターを作ってみた』トーマス・トウェイツ/飛鳥新社/1470円
●『ナウシカの飛行具、作ってみた』八谷和彦、猪谷千香/幻冬舎/1470円
●『清く正しい本棚の作り方』(TT)戸田プロダクション/スタジオタッククリエイティブ/1785円

※この記事は2013年12月に取材・掲載した記事です

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