最近、なに読んだ?

間瀬元朗「集合知で社会は動くか」

2015.02.16 MON

BOOKレビュー


『不揃いの木を組む』 小川三夫、聞き書き・塩野米松/文藝春秋/680円 1977年に寺社建築会社「鵤(いかるが)工舎」を設立し、多くの後進を育てた宮大工・小川三夫氏が、その教育論を語る。彼の仕事観や独自の徒弟制度は、特殊な業界の事例としてだけでなく、社会のあり方を考えるうえでも興味深い。 (桜井としき=撮影)
無作為に選ばれた参加者たちが、チャットと多数決でロボットの言動を決定する。漫画『デモクラティア』は、民主主義や集合知でよりよい“人間”は生まれるのかと問いかけている。作者の間瀬元朗さんが、この漫画の構想時に読んだ本とは…。

──『デモクラティア』はネット上の集合知で動くロボットの話ですよね。その着想はどこから?

前作の『イキガミ』を描いていた頃に中東で革命が起こって、「アラブの春だ」「SNSで革命が起こった」と騒がれました。あの革命に参加した人たちって、ネットで集まったわけですよね。生々しいしがらみのある関係ではなく、独立した個々人の票の寄せ集めでムーブメントができているような印象を受けて、時代が変わったなと思ったんです。

──世界中で、SNSが爆発的に普及した時期でもありました。

そう。ただ、そのことになんか引っかかりを感じたので、漫画のなかに架空のSNSを作ってみようと考えたのが、デモクラティアです。

──構想時に間瀬さんが読んだという『不揃いの木を組む』は、小川三夫という棟梁に弟子たちが従う徒弟制の話。集合知や多数決とは対照的です。

最初は宮大工志望のキャラを出したくて読んだんですが、思いのほか本質的なところで当時考えていたテーマと絡んでいました。小川さんが作った鵤(いかるが)工舎もデモクラティアも、一個のコミュニティですよね。そういう集団をある方向に動かすには集合知だけじゃだめで、ひとつ核となる意志がいるんじゃないかと思うんです。それに、集団の意志をみんなで共有するためには、一人ひとりがとことんわかりあっていないといけない。

──ネット上のコミュニケーションだけではわかりあえない?

鵤工舎が住み込みで、生活をともにしながら仕事や教育を行っているのは、自由が制限された環境で棟梁の考えや技術を身につけるためですよね。そんな昔ながらのやり方の是非はともかく、そうやって密な人間関係の土台をつくったうえじゃないと、集合知ってあんまり意味がないんじゃないかな。それに多数決って、ひとりでも多かったら正しかろうが間違っていようが、数だけで決まってしまうでしょ? それが暴走したらって考えると不気味だし、胸のなかがざらざらする。その感じを漫画で描きたかったんです。


【間瀬元朗の読み方】

▼フィクションを素直に楽しめないという職業病?

「フィクションの本は、もう10年くらい読んでいませんね。自分も同業だから、なんか分析しながら読んじゃうんです。そういう読み方って全然楽しくもないし、知的好奇心も満たされない。それよりは事実を知りたいです」

▼キャラクターや設定を掘り下げるための読書

「たとえばプラモ好きで宮大工志望のキャラを出すと決めたら、関連書籍を漁る。ほかにも半身不随の状態や、無差別殺傷事件を起こした犯人の心理、ロボット研究の現状などを知りたくて、連載開始前に30冊くらい読みました」

▼人と見分けのつかないロボットは必要なのか…?

「ロボット関連で面白かった本は、石黒 浩さんの『どうすれば「人」を創れるか』。技術面、思想面で参考にさせてもらいましたけど…外見だけを人に似せたロボットが、社会にとって必要なのかは正直疑問でした(笑)」

(宇野浩志=取材・文)

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