「残業代ゼロ法案」でサービス残業はますます悪化する

「持ち帰り残業代」支払わせる方法

2015.05.21 THU


ryanking999 / PIXTA(ピクスタ)
仕事が終わらず、自宅で“持ち帰り残業”をする破目に…。サラリーマンなら誰しも経験のある話では? 近年、残業代を抑えたい企業が「長時間労働防止」なる大義名分のもと、「残業禁止」を命じたり、所定の時間になると職場からの強制退出を促したり…なんて話も耳にする。

そこで気になるのが「残業代」の有無。サラリーマンとしては、会社だろうが自宅だろうが、仕事をした以上は残業代をいただきたいところ。

とはいえ上司に、「昨日は家で2時間仕事したので、残業代を申請しても良いですか?」とは聞きにくい。思いきって切り出したら、

「業務時間中に仕事が終わらないのはキミの仕事が遅いのが原因。そんな人に残業代を払っていたら、仕事が遅い人ほど給料が増えてしまう。頑張って業務時間中に仕事を終わらせている人には不公平になってしまうので、残業代は支払えない」

…と説教された、なんて話も。そう言われると、上司の言い分にも一理ある気がして、それ以上、言えなくなってしまう人も多いだろう。かくして「持ち帰り“サービス残業”」を強いられるケースが多発。果たしてこの上司の言う通り、「持ち帰り残業」の残業代を払ってもらうことはできないのだろうか?

そこで弁護士に取材したところ、決してそんなことはないという。会社は原則として、従業員の労働時間に対応した賃金を支払わなければならない。「持ち帰り残業」も、客観的に労働時間と認められるなら、残業代を支払わないことは法律違反になる。

ただしポイントは、「労働時間と認められるかどうか」という点。これは会社の「指揮命令下」にあるか否かによって判断される。

たとえば、上司の指示で「持ち帰り残業」をした場合、これは労働時間に含まれる。微妙なのは、自発的に「持ち帰り残業」をした場合だ。仮に上司がその事実を知らなければ、会社の指揮命令下にあるとは認められない可能性も大。

問題は、「残業禁止」を掲げて職場からの強制退出を迫る一方、明らかに所定の勤務時間内では終わらない仕事量を課しているケース。

この場合、 実質的には「家に帰ってやれ」と言っているようなもの。こうした状況であれば、よほどの事情がない限り、「持ち帰り残業時間」は労働時間と判断される。「よほどの事情」とは、同僚に比べて、本人の仕事が格段に遅い…といったケースだ。

ただ、訴訟を起こしても、「明らかに所定時間内では終わらない仕事量が与えられていた」ことを証明するのは非常に難しい。自宅での「持ち帰り残業時間」も、自己申告によるしかないのが実情だ。

こうした立証の難しさを承知の上で、表向きは「残業禁止」の大義名分を掲げ、事実上「持ち帰りサービス残業」を強いている悪質な企業も少なくない。ある意味、会社での深夜残業を放置している企業よりタチが悪いといえる。勤務先がこうした企業であれば、従業員の立場で争うのは、かなり困難だろう。

現状では、サラリーマンが泣き寝入りを強いられている面が非常に大きい。数少ない対抗手段として覚えておきたいのは、「持ち帰り残業」をした場合は、業務時間や業務内容をきちんと記録しておくことだ。

また、残業代は2年間で時効にかかってしまうので、「辞めるときに請求してやれ」というもくろみは通用しない。実際、辞めた後に会社を訴える人は少なくないが、大半が時効で消滅していた、なんてことがザラにある。

労働時間や残業代をめぐる状況は、ことほどさようにサラリーマンには極めて不利な状況にもある。にもかかわらず、いわゆる「残業代ゼロ法案」が閣議決定され、与党の“数の力”で押し切られようとしている。サラリーマンがこれに対抗することはほぼ不可能に近い(デモするくらいしかない)が、せめて誰がこの法案を推し進めようとしているのか、注視しておいたほうが良いだろう。結局のところ、サラリーマン一人一人が意思表示をする場は「選挙」しかないのだから。

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