「東京・森と市庭」菅原和利さんの逆境仕事論

業界も変える!林業を進化させる29歳の“非常識”

2016.12.08 THU

会社では学べない!ビジネスマン処世術 > 逆境オトコインタビュー


(撮影=飯本貴子)
「逆境」的業界で戦う30オトコにインタビューするこの連載。第10回は前回に引き続き、「林業」の異端児、「東京・森と市庭」の営業部長・菅原和利さんに話を聞いた。

●東京には東京の木材が一番 日本の住宅業界の常識も変革していく?

学生時代を過ごした奥多摩、そしてそのシンボルである森を守るため、成り立たなくなりつつある林業の「構造」を変えたいと話す菅原さん。

「今の日本の住宅って、その多くが25年ほどで寿命がくるんです。新築しても25年経ってしまうとガタがくるし、市場での価値も0にされるから、場合によっては建て替えなければならない。でも実はそれって、ビジネスの都合で設定された寿命に過ぎないんです。本来、法隆寺が(修理をされているとはいえ)つくられてから約1400年以上経っても現存しているように、木造建築ってとても寿命が長いんですよ。奥多摩にも築300年の木造古民家があります」

フラットな目線で業界にメスを入れる新世代の林業マン。だが、主流となっている産業の構造を変えるのは、簡単ではないはず。

「大手企業だと、なかなかできないかもしれませんね。でも、うちみたいに小さな組織が生産・流通・加工・販売までをトータルで勝手に行う分には、そこまで文句も言われないでしょう(笑)。まずは東京で小さく始めて、いずれは日本全体の林業の構造を変えたいですね」

また、東京に“的を絞って”営業することには、こんな意味もあるという。

「そもそも、長持ちする木造建築をつくるためには、その土地の木材を使うのがベスト。湿度や温度などの風土と、木材の性質が合ってますから当然なんです。東京の都市空間でリノベーションをする際、東京の木を選びたくなるような商品を作っていきたいですね。また、東京に木材の生産地となっている森が存在するんだと都内で暮らす人たちに知ってもらうことも、僕の重要な仕事だと思っています」

●邪道でもいいから「ニーズがありそうならチャレンジ」したい

意外なことに、東京の面積の約36%は森である。23区の面積より、森林部分の面積のほうが大きいのだ。しかし、その事実を認識している都民は少ないだろう。

「東京で暮らす人の多くは、森を遠い存在だと感じていると思いますけど、実は違うんですね。面積的な意味合いでもそうですが、この仕事をしていて僕が感じているのは、『都市と森は同期している』ということ。都市がコンクリートに頼って木材を使わないでいると、木を伐採する機会が減って、森が暗くなっていくんです。都市に木材を使った空間が増えると、間伐された場所から光が入って、森が明るくなる。都市に温かみのある空間を増やし、森の質も上げる。東京で林業に携わる人間として、両者を向上させたいという想いが常にありますね」

同じ東京にある「都市」と「森」をつなげるため、様々な企業の社員を招いて、森で獲れた鹿の肉を使ってBBQをふるまう企業研修など、独自の感覚で林業に携わっている。さらに、こんな角度からも、林業の可能性を探っていた。

「過去に、丸太の一番外側の“耳”と呼ばれる部分を壁材にしてリノベーションを行ったことがあります。丸みがあるんで本来は木材としてはあまり使われることがなく、薪として燃やされたり、捨てられたりする部分なんです。でもあえてその丸みを活かして、パッチワークのように壁に貼り付けることで、自然を感じるうえに立体的で意匠的にも斬新な壁面ができあがりました。

こういうのって、従来の林業からしたら邪道なんだと思いますが、市場にニーズが生まれるならやっていくべきだと思ってて。意外と誰もチャレンジしていないことがまだたくさんあるんじゃないかと気付いたので、今後いろんな実験をしていきたいと思います」

凝り固まった業界の構造、そして常識にとらわれずに未来を切り開く菅原さん。29歳の異端児が先導する林業の進化に注目していきたい。

(黄 孟志/かくしごと)
菅原和利(すがわら・かずとし)「東京・森と市庭」営業部長。1987年生まれ、神奈川県小田原市出身。東京都奥多摩町在住。法政大学人間環境学部在学時から奥多摩町でまちづくりに取リ組み、卒業後は同町へ移住。空き家をシェア別荘化する事業や、地域資源を活かしたアウトドアウェディング事業などを行う地域プロダクション会社を23歳で起業。その後、不動産営業を経て現社へ
菅原和利(すがわら・かずとし)「東京・森と市庭」営業部長。1987年生まれ、神奈川県小田原市出身。東京都奥多摩町在住。法政大学人間環境学部在学時から奥多摩町でまちづくりに取リ組み、卒業後は同町へ移住。空き家をシェア別荘化する事業や、地域資源を活かしたアウトドアウェディング事業などを行う地域プロダクション会社を23歳で起業。その後、不動産営業を経て現社へ

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