新聞や雑誌でよく見かける

「モラルハザード」の正しい意味を知ってる?

2006.03.23 THU

企業や政治家、官僚の不祥事が発覚するたびに、テレビや新聞で「モラルハザード」ということが指摘されている。

まず具体例を挙げると、ライブドア事件について「過剰な拝金主義が経営者のモラルハザードを招いた」とか、耐震強度偽造問題を挙げて「企業社会のモラルハザードを象徴している」とか、大学教授のセクハラ事件にふれて「近年の教職者のモラルハザードは目に余る」とか。つまりモラルハザードは「個人が倫理観を失って悪事に走ったり、社会に道徳観がなくなって犯罪が増えること」といった意味で使われている。「moral(倫理)がhazard(危機)だ」という直訳の結果だろう。

だが「モラルハザード」はもともと保険業界の専門用語だ。正しくは「保険をかけている安心感から注意を怠って、かえって事故の発生率が高まること」という意味で、後に一般化して、「セーフティネットがあるために、かえってリスクが高まること」を示すようになった。例えば、生活保護が手厚すぎると国民が安心して勤労意欲を失うとか、預金者が「預金保険があるから大丈夫」とつぶれかけの銀行に高利を目当てに預金するとか、銀行が「最後は公的資金の救済があるから」と経営改善の努力を怠るとか。

モラルハザードは国立国語研究所の外来語言い換え提案で「倫理崩壊」や「倫理の欠如」と言い換えられている(ただし用例も意味も本来の意味ではなく誤用の方だ)。

そのためか新聞もたいてい「モラルハザード(倫理の欠如)」と( )で言い換えているのだが、そもそも誤訳なのだから、「モラル低下」とかいったほうがわかりやすいのに。政治家や金融・経済の専門家のなかにも、不用意に「モラルハザード」を誤訳の意味で使ってしまう人をちらほらと見かける。そういう知ったかぶりさんを発見したら、ニヤリとほくそえむことにしよう。でもこのぶんでは、いずれ誤訳のほうが一般化してしまいそうだけど…。

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