業界別ビジネスモデルの謎

第6回 紅茶の美味しい猫屋敷?猫カフェの謎

2009.02.06 FRI

業界別ビジネスモデルの謎


イラスト/村田らむ 東京といっても公園や路地裏は猫だらけ。そんな猫ちゃんたちを利用して商売を始められたら間違いなく、楽して儲かるのでは!?

不景気下こそチャンス!?猫カフェのビジネス形態



「猫カフェ」という名前を聞いて、果たしてそれは
猫を連れていけるカフェなのか、
猫がたくさんいるカフェなのか、
迷うところでしょう。

「トータルカフェプロデュース ミニャルディーズ」を構想・展開するシグマ精機(株)のカフェコンサルタントの鈴木聖さん、正解はどちらですか?

「『猫カフェ』といえば、後者になるでしょうね。たくさんの猫が放し飼いされている店内で、自由に猫とふれ合うことができるカフェになります。対して『ドッグカフェ』というものがありますが、そちらは犬を連れていける、犬同伴での来店OKなカフェとなります。カフェ(飲食店)は成熟した産業で、常に市場細分化という進化が顕著です。そんななかで登場した猫カフェという形態は、1998年に台湾の台北市で開店した『猫花園』が始まりだといわれています。もっともその店は一般的な日本の猫カフェとは若干システムが違っていたようです。現在、日本で人気の猫カフェは、ターゲットとされる愛猫家に、カフェというスタイルで猫とふれ合う時間と空間を提供する、『愛猫家向けサロン』といった向きが強いですね」

大好きな猫に囲まれて、大好きな猫の話を、愛猫家同士で交わすサロンというわけですね。カフェというよりも、その空間を提供しているという意味合いが強いと。
ただ猫ちゃんがいるだけでは「猫カフェ」は成立しません。希少な猫を含め、多種多様な猫がいることで猫好きの方々は足を運んでくれるのです
「空間を時間貸しするのが一般的です。ほとんどの猫カフェは利用時間に対する課金というサービスを採っていることからして、マンガ喫茶やネットカフェといった複合カフェに近いですね。猫を接客スタッフと考えるなら、メイドや執事といったコスプレ系カフェにも近い」

なるほど、そう考えるとビジネスモデル的な観点から考えるとどのようになりますか?

「マーケティングとオペレーションはしやすい業態ですね。
具体的には、『客層は猫好き、もしくは猫に興味・関心がある人がメインなので、傾向を分析して対策を練りやすい。猫好きにとって居心地がいい空間作りを考えればいい』
また、『カフェに力を入れて、たとえば美味しいメニューを提供したとしても、猫嫌いや猫アレルギーの人まで呼ぶことはできない。カフェでの顧客拡大は難しい。このデメリットは逆に考えれば、そちらにあまりコストをかけなくても大丈夫ということ』などなど。ターゲットを絞ったことによるメリットが大きな業態と言えます。だからこそ、昨年(2008年)は猫カフェオープンラッシュが起こり、チェーン展開も目立ちました。結果、都内での店舗数は一昨年より倍増したといわれてます」

しかしこの不景気、今後はどうなるでしょうか?

「不景気下で客足が遠のくことは確かでしょうが、不景気下こそ、癒やしを求める心理的傾向が働くとも考えられます。つまり猫とのふれ合いで癒やしが得られる猫カフェはまだまだチャンスのあるビジネスだと思いますよ」

なるほど、猫カフェは今から始めても間に合う商売だと。
否、むしろ癒やしが必要な現代だからこそ、時代が求めてるといっても過言ではないのかもしれません。
「猫のまほう」の店内の様子。基本、猫ちゃんたちはフリーダム! 人なつっこい猫もいれば、ほとんど相手をしてくれない猫も。でもそんな自由気ままなところが猫ならではの魅力!

猫が好きなだけじゃ無理!?実は大変な猫カフェ経営



たくさんの猫とふれ合い、癒やしを求める愛猫家たちのサロンである猫カフェ。
カフェというよりも、猫がたくさんいる空間を時間貸しするといった形態であるならば、ますます誰でもできそうな気がするんですけどね。

だって、保健所に引き取られた猫をたくさんもらってきて、借りた部屋に放し飼いにして、猫好きのお客を招き入れ、それでお金をもらうだけですよね? 簡単、簡単。今すぐにでも始めた方がいいと思うんですけど、どうなんですか? 猫カフェ「猫のまほう」名古屋長者町店・東京西五反田店・東京蒲田フランチャイズ店を経営・運営している中村はじめさんに聞いてみました。

「そんなに簡単じゃないですよ。まず商売をするためだという理由で保健所から猫ちゃんを簡単にもらえるでしょうか? 行政サイドもいろいろと後々のことを検討されるので難しいと思います。またお客さんの話をうかがっていると、自分では飼っていない種類の猫ちゃんとふれあってみたい方が多いように思います。お店のすべての猫ちゃんが血統・種類・特徴が必要なわけではありませんが、いろいろな猫ちゃんがいることが基本です」

確かに公園とかでいつでも見かけられるような猫しかいなかったら、わざわざ猫カフェに行きませんよね。では猫はどうやって集めてるんですか?

「当店では直接交渉しブリーダーさんなどから購入することもありますし、愛護団体の方から猫ちゃんを引き取る事もあります。個人でやるなら、ペットショップに相談するか、ブリーダーを探すところから始めないといけません。たとえば購入後、家族にアレルギーが出てしまったりとか、何らかの理由でペットショップに返されてお店も困るケースがあるんです。そういった子が出てしまった場合に引き取れないか、交渉するのもありかもしれません」


ペットショップであれば、猫だけでなく、今後エサなども買い続けるということで交渉できるかもしれませんし、大口割引のメリットも発生するかも。B to B(business to buisiness)として、ペットショップとの提携は欠かせないですね。

「B to Bということでいうと、獣医師との連携も欠かせませんね。十数匹という多頭飼いをすることになりますから、あらかじめ専属の獣医師を持った方がいいでしょう。猫ちゃんには保険が利きませんから病気になった際の費用は大きな出費になったりします。そのためにも、早期発見、早期治療が重要です。すべての猫ちゃんのストレス管理・体重・体温は毎日チェックするのが基本ですから、オペレーション対策で最も重要なのが、猫ちゃんの健康管理になるでしょう」

なんだか、大変そうな気がしてきました。
カフェならではのメニューを準備するのもアリ。写真は「猫のまほう」の人気メニュー「にゃんコロ~♪ お絵書き用ケチャップソース付き」(500円)と「カフェオレ」(500円)です
「まだまだ、大変なことはあります。猫カフェを運営するには資格が2つ必要です。まずは飲食店関係の許可ですが、『食品衛生責任者』の資格が必要です。これは1日の講習を受けるだけで取れますからそんなに難しくありません。問題はもうひとつの『動物取扱業』という資格です。これは業種ごとに細分化されていて、例えばペットショップなら『販売』、ペットホテルなら『保管』など。猫カフェは動物園と同じ『展示』という資格が必要なんですが、一般的には動物関係専門学校(もしくは通信教育)に2年通わないと取得できないんですよ。当店ではその資格を持った実務経験のあるスタッフをそのお店に配置することでフランチャイズ店を短期間で出店できるようにしてますが、個人の場合はこれが一番のネックになるでしょうね」

今から始めても最短で2年後かぁ、ハードル、高いなぁ。

「確かに資格の面などで、一般的にはそんなに簡単にお店をオープンできないので、逆にいえばライバルが少ない分チャンスかもしれません。今、ドッグカフェという単語を知っている人が、10人のうち6、7人で一般的になっていることから考えると猫カフェという名前を知っている人は10人のうち2、3人ではないでしょうか。だいたい認知度が4割になるあたりで急速に一般化していくのではないかと思います。今はまだ猫カフェが世の中に認知される前。当店以外にもいろんな猫カフェがありますが、他の猫カフェのお話をうかがっていると、各猫カフェは月間1000~2500人のお客様がご利用になられているようです。今はまだ店舗の稼働率にすると、およそ30%ぐらいでしょう。一般的に認知が進めば、さらに店舗の稼働率も上がっていくと思います。新しい業態なので、まだまだ伸びしろのある業種だと思いますよ。ただし、猫ちゃんは20年ぐらい生きる。もしブームが去り、お店がつぶれたあとのケアも考えて経営を始めてほしい。決して安易にやるのではなく、まともに管理ができないならやらない方がいい。お金が欲しいからというだけの人は向かない仕事だと思います」

はい、すみませんでした。
猫カフェよりも、猫ちゃんのことを、もう少しちゃんと考えてみます。
動物をあつかうビジネスは儲けのほかにも大切なものがあるということ。気軽に始められるとは言いがたいビジネスのようです。 猫カフェのお客さんには、猫は飼いたいけど20年くらい生きるので、自分たちより長生きした場合に猫だけが残されてしまう。そうなるとほかに迷惑をかけるから飼えないといった老夫婦もいるといいます。

そんな真摯な人たちと向き合うためにも、自分自身も猫の将来のことまで考えなければならないし、猫の世話は大変ですし、なかなか猫好きなだけではつとまらない業種でした。

というわけで、ボーッとしてても儲かる、「楽して儲けるビジネスモデル」探しはまだまだ続きます。

みなさんが気になる業種、気になるお店、店主は店内でボーッとしているだけなのになんだか儲かっている様子のお店を調べてほしいという要望、またビジネスモデルに対する疑問・質問がございましたら、多少にかかわらず、お便りお寄せください!

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