知られてなくともスゴイ企業

第1回 日本で一番“甘さを知る”会社

2009.05.29 FRI

知られてなくともスゴイ企業


アタゴの「ペン糖度・濃度計(PEN-J)」。片手で持って測りたい対象に挿す、もしくは当てるだけで濃度がわかるという使い勝手の良い最新商品

糖度計=屈折計ってどんな計器?



以前、R25本誌のRRで「レモンとイチゴの糖度は実はほとんど同じだった!」
という記事を掲載したことがあります。その時、果物の糖度を測るのに使った見慣れない計器、それが糖度計です。

この糖度計で国内シェア9割、世界シェア3割を持つ会社、アタゴさんにお話をうかがいました。

企画部企画課課長の板倉芳江さん、まず糖度計ってどんなものなんですか?

「糖度を測ることが多いので糖度計と呼ばれていますが、実際には屈折計です。光の屈折率を見て、濃度を測る計器なのです」

光の屈折率文系の自分にはさっぱり理解できない話ですが。

「これは誰でもできる実験なので、実際に試していただくとわかりやすいです。何も混ぜてない水をコップに入れてストローを入れるとわずかに曲がって見えます。これに砂糖を混ぜるとさらに曲がって見えるようになるのです。混ぜれば混ぜるほど曲がり方が大きくなる。その角度を目盛りに置き換えたのが糖度計、すなわち屈折計なのです」

(出された水で実際に実験)あ、ほんとだ! なるほど!!
今回お話をうかがった企画部企画課課長の板倉芳江さん
「水に何かが混ざっている度合いが濃度。ジュースや果物の場合、混ざっているものがほとんど糖分ですので、その濃度=糖度となり、糖度計と呼ばれます。ま た、ラーメン店のチェーンなどでスープの濃さを店舗を通じて一定に保つために屈折計を用いているのですが、そこでは濃さ=濃度を測るので濃度計と呼ばれて います」

糖度計=濃度計=屈折計なんですね。
となると、顧客は飲料メーカー、食品関連企業がメインですか?

「JAS(日本農林規格)ではあらゆる飲料や調味料のBrix(可溶性固形分)の濃度規定がなされていますので、飲食関連企業さんの多くでご利用いただいております。また果物や野菜農家さんでも出荷物のBrix規定がありますのでご購入いただいております」

ほかに意外な使われ方とかあるんでしょうか?

「油や香料、化学薬品など液体の検査に屈折計が使用されたり、フィルム(ペットボトルの原材料など)やコンタクトレンズ、ブルーレイディスクなど固体の屈折率測定にも利用していただいておりますので、石油化学関連企業さんにも多くご利用いただいております」

一般の方の利用はありますか?

「化学の実験用として数多くの学校で使っていただいておりますし、個人では家庭菜園で作った収穫物の糖度を測ったり、味の探求のために使用する料理好きの方がいらっしゃったり。ちなみに夏休みの自由研究で使うお子さんには貸し出しサービスも行っています」

ただ糖度を測るだけではなく、結構いろいろなニーズがあるんですね。
屈折計の世界なかなか奥が深いです!
アタゴの生産方式は、ラインによる流れ作業ではなく一人生産方式と呼ばれるもの。部品作り、組立て、調整、検査、梱包の出荷までをすべて一台ずつ一人で製造することで作業効率を高めている

屈折計というニッチな市場に挑んだ理由は?



糖度や濃度を測る道具、屈折計において国内シェア9割を誇る株式会社アタゴ。
なぜ、このようなニッチな分野に挑むこととなったのか、企画部企画課課長の板倉芳江さんにお話を伺いました。
なぜ屈折計を扱うようになったのですか?

「弊社の創業者である雨宮喜平治が、ドイツの学者エルンスト・カール・アッベが発明した屈折計を日本に持ち込んだのですが、これが設置式の大型で使い勝手が悪い。ならば小型化して使いやすい業務用の屈折計を作ってしまおうと会社を起こしたのが始まりです。1940年9月のことです」

便利さの追求。商品開発の基本ですね。

「伝え聞くところによれば、もともと、光の屈折率を測るための計測器だったアッペ屈折計を、糖度や濃度を測ることに応用していったのが弊社なんです。小型化を進めていった結果、1953年に『手持屈折計』の開発に至り、農家で果物の糖度を測るのが一般的となっていき、やがて加工食品の製造現場でも使用されるようになったんです。そして、あらゆる飲料や調味料を、JAS規格(日本農林規格)のBrix(可溶性固形分)濃度規定で管理するという決まりが作られていきます。こうして次第に需要が増え、マーケットは右肩上がりに拡大。時代が進むにつれ、品質管理の意識は高まっていき、弊社のシェアも拡大の一途をたどっていきました」
板橋に居を構えるアタゴ本社ビル。売り上げは、右肩上がりで、2008年6月の決算で22億円くらいだそうです
光の屈折を測るものを濃度や糖度を測ることに応用したことで、様々な現場で濃度計が使われることが一般的となり、その現状を反映して品質管理の基準ができ、結果さらなる需要を得ていく。なんて理想的な商品売り上げ増加スパイラルなんですか! スゴイ!!

「小型化したことは輸出コストの低下をもたらし、海外進出のきっかけにもつながりました。さらに1976年、世界初デジタル表示の屈折計を開発、加えて2003年には世界最小で防水性のある屈折計を開発したことが世界シェアの拡大に大きく貢献しました」

商品を絞り、ひたすら利便性を追求していったことが功を奏してるようですね。

「弊 社では営業部門からマーケティング課を分離独立させるなど、マーケティングには力を入れてます。いかに現場で使用するお客様のニーズを反映できるか。 『ラーメンスープ濃度計』や『ひもの用塩分計』などはまさにニーズに応えた商品といえるでしょう。マーケティングから企画、開発、製造、アフターサービス まで一貫して自社でやっているというのは、お客様からの信用を得られる大きな要因になっていると思います」

なるほど。従業員は何人くらいなんですか?

「110人くらいです。品質の高い製品を作るためにはコミュニケーションが大切という考えと、経営方針の一つに『社員が参画できる組織体系』とありますので、社員数はこれくらいがベストと考えているんです」

国内シェア9割を握っている会社の従業員数が100人ちょっととは、正直、驚きです。
まさに少数精鋭! 本当にスゴイ会社です。 ちなみにこの会社、「スタンダード&プアーズ社」の「日本SME格付け」において2007年、2008年の2年連続で最高位の「aaa(トリプル・エイ)」評価を受けています。

株式会社アタゴ。
本当にスゴイ会社です。はい。

計測器メーカーの基本である「利便性(使いやすさ)の追求」。
さらなる利便性はユーザーのニーズからしか知り得ないことであり、得られたニーズを反映させるにはマーケティング部門と開発、製造部門、社内のすべてが情報を共有しなければならない。それを踏まえた客との距離感、社員同士の距離感がニッチな市場規模とベストマッチしているというのを感じました。

いやはやスゴイ会社です。

そんなわけで、今後も「有名じゃないけどスゴイ会社」を続々と取材していきます。
みなさんがひそかに知っている意外なスゴイ会社を教えてください。
私、野中が、その会社を取材して、紹介させていただきたいと思います。

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