知られてなくともスゴイ企業

第7回 プルプルを生み出す会社

2009.08.21 FRI

知られてなくともスゴイ企業


ゼラチンの成形工程。ちなみに原料の状態からゼラチンにするには半年以上の時間がかかるそうです

ゼラチンの作り方、知ってます?



ゼリーやプリンのプルプルな食感を出すために欠かせない材料、ゼラチン。
実に国内シェア50%強を担っているスゴイ会社があるんです。

社名にゼラチンの名が付いている会社、新田ゼラチン株式会社。

ちなみにゼラチンって何からどうやって作られるのか、みなさんはご存じですか?
私、野中、恥ずかしながらよくわかっていません。
新田ゼラチン営業部主務の谷口彰さん、教えてください!

「ゼラチンとは動物の体を形作る繊維状のタンパク質から抽出したものです」

え!? ゼラチンって動物から取れるんですか??

「厳密に言いますと、動物の体の中にあるコラーゲンという物質から抽出したものです。コラーゲンは水と一緒に加熱すると水に溶け出します。その溶かした液体から不純物を取り出し純度を高め、固めたものがゼラチンになるのです。例えば魚の煮汁をそのまま置いておくと、周りの汁が固まってしまいますよね? あれは魚の皮や骨に入っているコラーゲンが煮出されて、ゼラチンとして固まった状態なのです」

あれってゼラチンのおかげで固まっていたんですね。なるほど。
となると、ゼラチンは魚から取るっていうことですか?
今回お話をうかがった新田ゼラチン営業部主務の谷口彰さん。新田ゼラチンの本社近くで生まれ育って気がついたら新田ゼラチンに入社していたとのこと
「煮魚がわかりやすかったので例として挙げましたが、どんな動物からでも取れます。一般的には牛や豚を使っています。体が大きいので一度にたくさんのゼラチンが取れるというのが主な理由です。ちなみに牛1頭500kgから取れるゼラチンは4~5kgくらいです」

それってまさか、牛1頭を丸々煮出して取る、とか?

「いやいや、コラーゲン質が多く含まれた皮や骨から取ります。骨の場合は砕いて脂を洗い流し、カルシウムを取り除いた後、アルカリ性の溶液で60~90日漬け込むことで、精製を重ねたコラーゲンにお湯を注いでゼラチンを抽出します」

それを固めて製品化するというわけですね。
お取引先はやはりゼリーやグミなどを作っている会社がメインになりますよね?

「そうですね。あと、例えばCVS(コンビニ)で売られているデザート類や汁物総菜。特に弁当関連のレンジで温めると液体になるものは全部ゼラチンが入っています。ゼラチンで固められた液体は濃度にもよりますが、25~30度で液化するので、温めると汁になるというわけです。今はそういった食品関係の会社がメインの取引相手になりますが、20年ほど前は写真加工としての用途がほとんどだったので、写真関係がメインでした」

え!? 写真にゼラチンが使われているんですか?

「えぇ、フィルムや印画紙の表面に塗布される『写真乳剤』はゼラチンから作られてます。当時は使い捨てカメラなどフィルムカメラが主流だったので、写真用としてのゼラチン需要が高かったんです。しかしデジタルカメラの普及によって、その需要は激減しました。当時は写真用、医療用、食用の割合が6:2:2くらいだったのですが、今は1:3:6くらいになっています」

写真用と食用が逆転していますね。
ちなみに医療用というのもありますけど、それはどのような用途で?

「薬のカプセルなどがゼラチンで作られています」

へぇ~。あのカプセルって化学素材だと思っていました。

「いまだに天然素材のゼラチンが使われてるということは、それに勝る化学素材がないってことでしょうね」

写真での需要が激減しても、医薬品や食料品の需要はまだまだあるってことですね。
大阪市浪速区にある新田ゼラチン本社工場

ゼラチンを扱うようになったきっかけは?



意外にも写真用としての需要が最も多かったというゼラチン。
今は食用や医療用での需要の方がはるかに多いと、国内シェア50%強の新田ゼラチン営業部主務の谷口彰さんは語る。

名前にゼラチンと入っていることからして、最初からゼラチンを作るために設立された会社だったんですか?

「いや、1885年に創業した新田株式会社という革ベルトを作る会社が基にありまして、革ベルトといっても腰に巻くベルトではなく動力用のベルトです。自動車でいうと、エンジンと駆動側をつなぐタイミングベルトなどです。その製作過程で余る牛革の切れ端を煮詰めればニカワが取れる。ニカワはいわば、不純物の多いゼラチンなので、それを精製することでゼラチンも作れる」

なるほど、副産物だったわけですね。

「はい。それで1918年にゼラチンとニカワの製造部門を社内で創業。のちに1945年2月、新田膠質(こうしつ)工業株式会社として独立しました。当時は戦時中で、軍事的に航空写真が必要でしたが、交戦中だったために海外からゼラチンが入ってこなくなった。結果、写真用ゼラチンのまとまった需要ができたので終戦前にゼラチン部門を会社として独立させたという経緯になります。ちなみに現在の社名になったのは1960年のことです」

最初は写真用だったわけですね。
社名を変更されたりもしたようですが、その後、会社は順調だったんですか?

「いいえ、ずっと問題がなかったわけではないです。社歴の中で、弊社のみならず業界全体がピンチに立たされたことがありました。BSE問題です」

あ、なるほど。牛から抽出しているわけですからね。
しかも皮や骨から抽出しているとなると。

「弊社だけでなく、当時、国内の食用ゼラチンの7~8割は牛でした。海外では豚を使っていますから、豚に変えればいいじゃないかと言われましたが、日本人にはニオイがキツいんですよ。また実際にはBSEの原因とされていたプリオンはゼラチン製造工程で不活化することが証明されております。そのことをお客様にいくら説明しても聞いてもらえず、返品も多数ありました。弊社としては少なからず痛手を被りましたが、リーディングカンパニーとして業界を救うべく、BSE安全セミナーなどを行って信用回復に取り組みました」

まったく知りませんでしたが、BSE問題の時にゼラチン業界も打撃を受けていたんですね。それを乗りきって今があると。ちなみにシェア1位を占めている理由は何だと考えられていますか?

「最も高純度を要求される写真用を長年にわたって作ってきた、その技術力が大きいと思います。その技術を基に臭いの少ないゼラチンやコラーゲンペプチドの製造に応用しております。従って高純度のゼラチンを作る技術では世界的にもトップクラスだと自負しています」

なるほど。最後に今後のゼラチン業界についてはどうですか?

「コラーゲンが健康食品として話題となっていますが、こうしたコラーゲンの有効成分の研究のみならず、ゼラチンのもつさまざまな可能性を追求していきます。また、エコの時代という意味合いでも、肉と共に出てくる皮や骨を有効利用し抽出するゼラチンが、自然に優しい食材として見直されるかもしれません。以上のような流れに会社としても進んで行けたらと思っています」

ちなみに、ゼラチンは長く研究されてきましたが、完全にその代替となる化学物質は発見されてないし、今後もしばらくは難しいだろうとのこと。というわけでゼラチンの市場もしばらくは安泰(順調)みたいです。 ちなみにニカワ(純度の低いゼラチン)はクレオパトラの時代から接着剤として使用されていたとのこと。
日本でも蹴鞠(けまり)に使う鞠の結合部はニカワを使っていたようです。

CDになったので少なくなりましたが、レコードジャケットの貼り合わせにはニカワが使われていました。合成系接着剤だと湿度や気温によって反り返ってしまうのが、ニカワなら大丈夫だということで使用されていたようです。

しかも動物性タンパク質なので、当然、土にかえる生分解性の素材。
環境のことを考えた場合、接着剤として見直される可能性が大いにあります。

そんな天然素材のゼラチンとニカワを扱う新田ゼラチン。
今後、さらなる成長が期待できますね。

いやいや、もっとスゴイ会社を私は知っているという方。
ぜひ、その情報を私、野中宛にお寄せください! 待ってます!!

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