日本人初の栄誉を手にしたデザイナーが「愛される理由」

斬新ジュエリーで世界一・小寺智子

2015.12.17 THU

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昔の上司が手帳に書いてくれた“継続は力なり”という言葉が、ずっと心に残っていると言う小寺さん。「私は特別な目標があるわけでもないし、特別スゴくもなれないけれど、作り出した物はマイナスにならないように、毎年1%ずつでいいから成長し続けていきたい」
去る10月29日、ダイヤモンドの本場・ベルギーで開催されたHRDダイヤモンドジュエリーデザインコンペティションで、日本の小寺智子さんが見事グランプリを獲得した。1984年に始まり今年で16回目を迎えたこの由緒ある世界大会で、日本人が頂点に立ったのは初めてのこと。審査員が満場一致で即決したという受賞作品は「Rice husks—もみ殻」。もみ殻の棘やささくれを模した針と1mm程度の小さなダイヤモンドが、23種類・計400ピースの微細なブローチ一つひとつにあしらわれている。

「ジュエリー=ゴージャズという概念から見れば、とても落差がある作品なのかもしれません。でもジェリーには二つの役割があって、一つはそれを持つ人を満足させるラグジュアリーとしての側面。もう一つは、たとえば子どもの頃、大好きなお友達に花の首飾りを作ってかけてあげたように、大切な人に美しいものを身につけてほしいという気持ちを形にする側面。“もみ殻”はそういった“気持ち”のウエイトが高いジュエリーといえると思います」

「あなたのジュエリーには未来がある――」。審査員からそう評された斬新すぎるアイデアは、決して一朝一夕に思いついたものではない。ジュエリーデザインの専門学校に通っていたとき、小寺さんは“身につけるということの意味とは?”という自らの問いかけを追求。その答えとして、自然と身に“ついてしまう”もみ殻に着目した。表参道や地下鉄のホームで行き交う人に声をかけ、体のさまざまな個所にもみ殻をつけてもらって撮った写真を「ジュエリー」というコンセプトの作品にし、25年以上も大切にしてきた。

「街中でセーターにもみ殻を2、3粒つけている人を見かけたら、『こんな大都会でなぜ? この人はいったいどこから来たんだろう…』と、想像が膨らみますよね。地面に落ちていればただのゴミだけれど、“身についた”ことで初めて記憶を辿るという時間が生まれ、意味を持つ。ところがそれをジュエリーにした途端、“作り方や出来栄え”といった部分に意識がいき、見る人の記憶を喚起させる目的が弱くなってしまう気がしたんです。それで、今まで立体にしないできましたが、今回のコンテストのテーマが“食”だったので、キャリアを積んだ今の私にとって表現しきれる最高のタイミングなのかなと。なので、作品が完成したときからグランプリを取る自信はありました」

小寺さんがジュエリーデザイナーを志すようになったのは、京都の美大を卒業後、テキスタイルデザイナーとして入った会社を退職した後のことだ。ドイツ人の友人の家で、雪のように白い肌をした赤ちゃんの耳に輝いているパールのピアスを見て、「うわ~、カワイイ。私もつけたい!」と一目惚れ。その勢いで友人に連れられ、町の宝石屋さんでピアスをあけてしまった。帰国後、ジュエリーデザインという仕事に興味を持った小寺さんは、専門学校の夜間コースに入学。勉強のかたわら先生の紹介で始めたダイヤモンドディーラー・柏圭でのアルバイトがきっかけになり、卒業後、社員に登用された。そしてそれから6年後、同社初のデザイナーズブランドとなる「TOMOKO KODERA」を立ち上げた。

「最初は営業事務で入ったのですが、欠員が出てデザイン室に異動になったんです。その後ブランドとしてジュエリーを作らせてもらうようになり、立ち上げ当初から好調だったんですよ。たくさんあるジュエリー中でも、誰が作ったかわかる商品がお客様のニーズとして高まっていた頃でしたので、いつの間にか自分の名前が出ていたという感じですね(笑)」

自身のブランドが誕生して、来年でちょうど20周年。これだけの長きにわたって多くの人々から支持され続けるのには、もちろん理由がある。小寺さんがデザインするうえで大事にしているのは、“体に無理なく、自然に馴染むフォルム”。イヤリングやピアスならば、耳たぶが厚い人にも薄い人にも合うように留め具などをアレンジ。リングは丸い輪っかではなく、指の傾斜にしっかりフィットするよう曲線を描いている。

「ジュエリーはとても高価なものですから、買うまでには、皆さんすごく悩まれると思うんです。だからこそ、お客様を絶対に後悔させない、しっかりと良さが伝わるジュエリーを作り上げなくてはいけないと思っています」

(菅原悦子)

■TOP WOMAN 第5回

  • こだわり仕事道具

    職人さんにデザインを正確に伝えるための「デザイン画」と「加工指示書」。使用する石の形や色などから、石を支える爪の形や数を細かく指示している
  • 世界が認めた瞬間

    1500点を超えるデザインの中から、「HRD AWARDS 2015インターナショナルダイヤモンドジュエリーデザインコンペティション」グランプリを受賞した
  • もみ殻

    使用したダイヤモンドの総量は6カラット。コンテスト史上最少だったにもかかわらず「作為がなく、国や世代を超えて誰にでもわかる作品」と大絶賛された

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