世界のフロマジェが語る「タイトルの重要性」

チーズの本場で世界一・村瀬美幸

2016.03.31 THU

働く女子を応援!L25タイムス > TOP WOMAN


村瀬さんが講座を行っている「THE CHEESE ROOM academie」は、チーズを本格的&専門的に学べる日本で唯一のスクールだ。理事を務める「日本チーズアートフロマジェ協会」では、昨年11月の「チーズプラトー検定」に続いて、今年7月には「フロマジェ資格」試験も開設予定。後進の育成にも力を注いでいる
ワインは「ソムリエ」、洋菓子は「パティシエ」、コーヒーは「バリスタ」のように、チーズのスペシャリストは“フロマジェ”と呼ばれる。2013年6月にフランスで開催された、チーズのプラトー(盛り付け)やカットの技術、知識などを競う「世界最優秀フロマジェコンクール2013」で、日本代表の村瀬美幸さんがアジア人として初めて世界の頂点に立った。3度目の世界挑戦でようやく手にした、念願のビッグタイトルだった。

「日本人がチーズの本場であるフランスに乗り込んでトップを勝ち取るには、誰が見ても圧倒的に良いものを作り上げなければならない。そのために、現在勤めるチーズスクールの校長の金子敏春氏と二人三脚で、綿密な戦略を立てて臨みました。建築デザイナーでもある金子氏からは、チーズがより美しく見える盛り付けの見せ方を徹底的に学びました。9つの課題のうちのひとつ“子どものためのチーズプラトー”では、メリーゴーランドなどをあしらった360度・立体構成の遊園地を表現。アメリカ人の司会者は『You are like a magician!』と目を丸くし(笑)、フランス人はじめ各国の審査員からも『これは素晴らしい』と高い評価をいただきました」

村瀬さんが短大卒業後に最初に就いた職業は、国際線の客室乗務員だった。もともと習い事が好きで機内サービスの業務にも生かせることから、フライトのない日にはワインやチーズ、料理など様々な講座に通い見識を高めていた。そして入社から11年後、「客室乗務員としてできることは、すべてやり尽くした。次は何か別のことをしよう」と転職を決意。それから1年ほど田崎真也氏のワインスクールで学んでいたところ、ソムリエの資格を取得していたこともあり、田崎氏に勧められてワイン講師へと転身したが…。

「田崎さんをはじめ講師の皆さんは、様々なコンクールで世界一や日本一などの称号を持っている方々ばかり。私だけが何の実績も肩書きもない立場で、生徒さんたちにはどう思われているのだろう…というプレッシャーや劣等感に悩まされました。そんな時、『村瀬さんはワインよりもチーズのことを話している時の方が、イキイキとして楽しそうですね』という生徒さんの言葉で、自分の本当の持ち味に気づいたんです」

チーズ講師に転向すると、ちょうど同時期にチーズの世界コンクールも始まった。村瀬さんは2006年に行われた国内予選を勝ち抜き、翌年の「インターナショナル カゼウス アワード」に出場。しかし、結果は3位とわずか3点差の4位に終わり悔し涙を流した。次こそはメダルを持ち帰ろうと3位以上を目標に再挑戦した2009年は、見事2位に入賞。ところが、達成感に包まれる村瀬さんに届いた恩師・田崎氏からのメールには“日本のチーズ業界にとっては輝かしい成績だけれど、本当に残念だったね”と書かれていた。

「世界大会に出場するからには必ずTOPを目指しなさい、と田崎さんからは常々言われていました。世界一になることで説得力のある発信ができるようになるんだということは、彼の背中をみて感じてきたことです。田崎さんが世界一を獲得した1995年以降、日本にワインブームが起こり、ソムリエという職業も広く認識されるようになった。2位ではそこまでの力はない。タイトルの重要性、世界1位の影響力をよくご存じだからこその言葉だったんです」

本気で世界一を獲るために――。村瀬さんは自分に足りない“現場力”を養おうと、講師の職を離れてチーズ専門店に約2年間勤務。日々の業務を通してチーズをグラム単位で正確にカットする技術や、ホテルのパーティー会場などで提供する華やかなプラトーの創作力など、多彩な技も磨いていった。そして前回大会から4年後、新たに設立された世界コンクールに出場。フロマジェとして培われた確かな技術が、金子氏のアドバイスによって他国の選手では真似できないアート性の高いチーズのデザイン力となって花開き、初優勝へとつながった。

「人の前に立つ場も増えましたし、チーズ業界の発展に貢献できることはどんどんやっていくつもりです。チーズは自らカットしてみることで新たな美味しさを知ることや、盛り付けの美しさで感動を呼ぶこともできる。知識以外の魅力も普及させたいですね。フロマジェの認知度ももっと高めて、将来ぜひ就いてみたいという人が増えてくれるとうれしいですね」

(菅原悦子)


■TOP WOMAN 第11回

  • こだわり仕事道具

    チーズのタイプに合わせてカットする道具を使い分ける。手前からハンドリナー、オメガナイフなど、こちらの4種類があればほとんどのタイプのチーズに対応できるそうだ
  • 世界が認めた瞬間

    6カ国・10人が決勝に進出した「世界最優秀フロマジェコンクール2013」。フランスやベルギー、イタリアなどの欧州勢を破る快挙を、地元メディアも驚きをもって伝えた

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト