カルビー7年連続増収増益のきっかけにも?

“フリーアドレス制”の魅力「自己解決力が培われる」

2017.01.17 TUE

給料?やりがい? 30男キャリア相談所 > 働き方最前線

オフィスの上下を移動する人は少ないと考え、ワンフロアが広いオフィスに引っ越したという。普段から社員と同じフロアの仕切りのない部屋で役員が仕事をしている
(撮影/森 カズシゲ)
近年、リモートワークや副業の認可といった柔軟性の高い勤務制度を取り入れる企業が増えつつある。そのなかでも、職場で個々の座席を決めない「フリーアドレス制」をいち早く導入したのがカルビーだ。

2009年に経営体制が変わったことをきっかけに、社員の働き方の大改革が行われた。個人の能力を高めるにはオフィスの環境を変える必要があるという判断により、2010年、4カ所に散らばっていた本社機能を東京・丸の内に集約し、本社勤務の約300人を対象にしたフリーアドレス制をスタート。人事に総務、広報、マーケティング、品質保証、営業など、さまざまな部署が交わることとなった。

●役員が参加することも…毎日ダーツでランダムに席を振り分け


「2007年に、当時八重洲にあった事務所でフリーアドレス制を始めたのですが、自由に席を選ぶ形だと、結局固定化してしまうという問題がありました。そこで丸の内に移ってからは『ダーツシステム』という抽選方式を導入し、毎日無作為に席が決まる形式に変更。日々周りの環境が変わることで、業務の刺激になると考えたのです」(人事総務部総務課課長・品川千津子さん)

フリーアドレス制が直接的に貢献したという確証はないが、2010年からこれまでずっと増収増益が続いているカルビー。社内の活性化に一役買っているといえるだろう。
関連する部署ごとに、3つのゾーンに区分けされた席からランダムに抽出。どの席にどの社員が座っているかもオンライン上から確認できる
関連する部署ごとに、3つのゾーンに区分けされた席からランダムに抽出。どの席にどの社員が座っているかもオンライン上から確認できる
しかし、社員は新たな制度に戸惑わなかったのだろうか。工場での固定席勤務を経て、フリーアドレス制の本社へ配属された人事総務部・佐藤拓也さん、入社時には既にフリーアドレス制だったという素材スナック部じゃがりこ課・朱靖(しゅせい)さんに話を聞いた。

「異動する時にフリーアドレス制と聞いて、正直面倒臭そうだと思いました(苦笑)。でも、もともと工場では整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の“5S”が徹底されていて、デスクの上を整理する習慣ができていたので、片付けに関する不安はありませんでした。ただ、工場のオフィスではわからないことがあっても周りに聞いてすぐ解決できましたが、フリーアドレスでは同じ部署の人が近くにいないため、多少の戸惑いはありましたね」(佐藤さん)

「私は採用面接の時にオフィスを見学させてもらって、フリーアドレスという働き方を知ったのですが、まだ学生だったので『上司が隣にいないっていいな』と軽く考えていました」(朱さん)
佐藤さん(右)が社会人1年目で配属された工場のオフィスでは、昔ながらの固定席だったそう。電話対応で困っていると隣の先輩が助け舟を出してくれることもあったとか
佐藤さん(右)が社会人1年目で配属された工場のオフィスでは、昔ながらの固定席だったそう。電話対応で困っていると隣の先輩が助け舟を出してくれることもあったとか
すぐに上司に確認できない分、他部署の人に相談に乗ってもらうほか、ミーティングの前後で決裁がとれるよう準備するようにもなったという朱さん(左)
すぐに上司に確認できない分、他部署の人に相談に乗ってもらうほか、ミーティングの前後で決裁がとれるよう準備するようにもなったという朱さん(左)
同じ部署の人が近くにいないことが、よくも悪くも気になったようだ。しかし、佐藤さんは「2~3カ月もすると『近くにいないのが普通』と思えるようになった」とのこと。朱さんも部署で固まっていないが故のメリットを感じている。

「必ず上司が近くにいるわけではないですし、毎日席が替わるので見つからないこともあります。そのため、問題が生じた時は、まず自分で解決策を考えるようになりました。上司が隣にいたら逐一報告して判断を仰いでいたと思うのですが、それだと効率が悪いと思います」(朱さん)

「他部署の人が近くにいることで、現場感覚を忘れないというメリットもあります。例えばレポートされた在庫金額が急激に増えていた時に、目の前に物流系の部署の人がいれば『何かあったんですか?』と直接聞けます。他部署の情報も気軽に聞けるところがいいですね」(佐藤さん)

「たまに役員がダーツシステムで抽選した席に座ることもあるんです。社員は緊張感を持ちつつ、役員に対して親近感も湧きます。もともと会長や社長とも距離が近いので、新しい案件やアイデアが通るスピード感はどこにも負けないと思います」(品川さん)

他部署や役員とのコミュニケーションは、固定席では生まれにくい。フリーアドレス制の恩恵は大きそうだ。

さらに、タイムマネジメントの意識強化につなげるため、座席には最短1時間、最長5時間の時間制限がある。つまり、1日に1度は席替えが発生するというわけだ。当初は最長3時間だったそうだが、
「1日2回の席替えは多い」という不満の声が多かったため、5時間に延ばしたそう。


かなり完成された制度のように感じるが、困っていることはあるのだろうか。


整理整頓された佐藤さんのロッカー。退社時はここにPCや、タンブラーなどのリフレッシュアイテムが入る。“ペーパーレス”“ハンコレス”も進んでいて、全社員とも荷物はここに収まる範囲に削っているそう
「誰がどこにいるか、一目では判断しづらいので、簡単に行方不明になれる制度ではあるんですよ。サボろうと思えばサボれる。だからこそ、自立の難しさを感じます。信頼してもらうための働き方を模索しています」(佐藤さん)

「自分のデスクがないため、当然引き出しなどもありません。個人の荷物を置けるスペースはロッカー1個分しかないので、資料の整理は常々行っていますね」(朱さん)

「『物の置き場所がない』という声は大きいですが、与えてしまうと要求が増えてしまうので、現状のままで収めてもらっています」(品川さん)

デスクを片付ける面倒臭さや毎日環境が変わる不安が先に立ってしまうが、それに勝る効果を期待できそうなフリーアドレス制。今後、導入する企業が増える可能性は高そうだ。

(有竹亮介/verb)

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