29歳のヒットメーカーはなぜ誕生した? 宮本社長にきく

“人の意見を聞かないほうがいい”キングジム流企画術

2017.02.20 MON

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(撮影=仁木 努)
オフィスの必需品「キングファイル」で知られる文具メーカー・キングジム。その他にも、ラベルライターの「テプラ」や、テキスト入力に特化したデジタルメモ「ポメラ」、環境騒音だけを約90%カットする「デジタル耳せん」などのヒット商品を生み出し続けている。

ニッチながらも一部の人たちから熱烈に支持されるアイテムが多いことから、“変態端末専業企業” とも呼ばれる同社。独創的なアイデアを実現できる企業風土を大切にしているのが、創業家4代目社長の宮本 彰氏だ。では、斬新かつ人を惹きつけるようなアイデアを生み出すには何が必要なのか? 宮本氏に聞いた。

●成功を分析するより、失敗を分析したほうがいい

世の中の多くの仕事はルーティンワーク。世間にインパクトを与える、クリエイティブな仕事がしたい、と思ってしまう人も多いだろう。とはいえ、そもそも発想力やセンスがなければ難しいように思える。何かを生み出す仕事は、やはり才能に恵まれた人の特権なのだろうか?

「もちろん、センスは大事な要素の一つです。でも、それが全てではないと思っています。センスだけの問題だったら、ヒット商品を生み出すのはいつも同じ人ばかりになるはずですよね。ところが、キングジムの場合は次々と違う人がヒットを飛ばしているわけです」

では、センス以外の何を磨けば、「ヒットメーカー」になれるのだろうか?

「たとえば、我々がやっているような商品開発でいえば、ヒットの背景を徹底的に研究することです。売れている商品を研究するのはもちろんですが、売れていない商品について『なぜ売れていないのか?』を分析することが重要だと考えています。一番いい経験になるのは自分が開発して失敗した商品について分析することですが、経験がなければ過去の事例を参考にするだけでも力になる。たとえば、売れない商品は3カ月程度で店頭から消えてしまうこともあります。そこで、社内の営業担当に、『どうして売れなかったのか』を聞いて情報を集め、分析できるような人は、センスにかかわらずヒットを生み出す確率が上がっていくと思いますね」

●社長も「そんなの売れるわけない」…でも“たった一人の思い入れ”だけで開発する

ただし、と宮本氏は続ける。そうしたロジカルな手法やセンスよりも、もっと大事なことがあるという。それはアイデアに対する「思い入れ」だ。

「そもそも発案者本人が、それを欲しいと強烈に思っているかどうか。その視点を第一に、仕様や機能をまとめていくことが大事です。最初は自分の中できっちりとコンセプトがあっても、商品化にあたりいろんな意見を取り入れると、ぜんぜん違う方向に行ってしまうことってありますよね。それはよくない。人から得た“情報”は取り入れてもいいけど、“意見”は聞かないほうがいいんです。本人が欲しかったもの、作りたかったものから一切ブレることなく、完璧に仕上げることができた商品って、不思議と売れるんですよ」

実際、キングジムでは、チームではなくアイデアを出した本人が商品を一人でプロデュースするスタイルを取っているんだとか。

「そうすると、社内全員にヒーローやヒロインになれるチャンスが広がるわけです。つい最近も“ヒロイン”が誕生しましたよ。望月という28歳の女性です。彼女、入社当時はあまり目立つ存在ではなかったんです。でも、ヒット商品の『暮らしのキロク』をはじめとする女性向けの商品をゼロから手がけてヒロインになったことで、今は自信がみなぎっていますね」

望月さんを成功に導いたのも、商品への強いこだわりだった。なんせ、社内の偉い人たちの意見をも「無視」したというから驚きだ。

「『暮らしのキロク』は手帳や日記に貼るふせん。テーマは全部で28種類あって、『今日の恋人とのデートはどうだった』とか、『ワインはどんなものを飲んだ』といったことを記入するというものです。正直、僕はそんなの売れるわけないと思ってたんです。だって、わざわざこの商品を使わなくたって手帳や日記に直接記入すれば、済むわけじゃないですか。でも、実際にはめちゃくちゃ売れている。開発会議の時も、望月は周囲からああしろ、こうしろって言われていましたが、色やデザインには並々ならぬこだわりがあったようで、結局変更はしませんでした(笑)。でも、その強い思い入れがあったからこそ、世間に受け入れられたわけです。『好き』だけでクリエイターになれるかっていうと難しいですけど、とにかくチャンスが回ってきたら、こだわり尽くすことが大事なんじゃないでしょうか」

(末吉陽子/やじろべえ)
宮本 彰(みやもと・あきら)1954年生まれ。1977年3月、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、キングジムに入社。1984年、常務取締役総合企画室長、1986年9月、専務取締役に就任。1992年4月、代表取締役社長に就任。現在に至る
宮本 彰(みやもと・あきら)1954年生まれ。1977年3月、慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、キングジムに入社。1984年、常務取締役総合企画室長、1986年9月、専務取締役に就任。1992年4月、代表取締役社長に就任。現在に至る

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