できることをやるしかない ― くりぃむしちゅー、新番組に思うこと。

くりぃむしちゅー

2014.10.02 THU

ロングインタビュー


武田篤典(steam)=文 稲田 平=写真 設樂宗秀=スタイリング
決してためにならない。
ただただ、面白い番組を

ふたりとも少し困ったような顔をしていた。というのも、『びっくりぃむ』の収録がまだ行われていなかったから。今月からスタートする日曜夜の新番組だ。
なぜ収録前だと「困る」のか。この番組が、スタジオでゲストとVTRを観てワイワイ言って盛り上がる、という構造だから。必然的に、事前にふたりにはVTRの中身は知らされないことになる。番組自体は「ドッキリ、チャレンジ、実験など…見て、驚いて、楽しめる」「世の中の“びっくり”を集めた」バラエティだ…ということはわかっている。けれど、何を見せられるか知らないから、語れることも少ないのだ。

―それはやはり、生のリアクションを大切にするためですか?

上田 びっくりさせるような映像とか、ドッキリをお見せする番組ですから、中身を知っていたら、そもそもこっちもびっくりできませんからね。僕らはたぶん視聴者のみなさんと同じ目線でびっくりするのが役割だろうなと思ってるんで。

有田 いろんな番組がありますけど、いらっしゃるんですよ…たまに。打ち合わせのときにオチまで言ってしまうスタッフが(笑)。「こんなVTRが流れます。最終的にこんな感じになります」と。どころか「こんなコメントをお願いします」って。そうなるとお芝居じゃないですか(笑)。視聴者のみなさんって、せいぜい新聞のラテ欄とかCMぐらいの情報で番組を観るでしょ? 僕らもできるかぎりそれに近い感覚でやりたいですね。

―『びっくりぃむ』は5月と8月に特番として2本放送されました。あれは全編ドッキリでしたけど…。

有田 今度はドッキリだけではないんですよ。

―「視聴者目線」という点では、みなさんホントに家庭のリビングで観てるみたいな印象で、本気でツッコミつつ観てらっしゃって。

有田 一つ前の番組(『シルシルミシル』)ではスタッフの方々が命がけでVTRを作ってましたからね。取材してきた情報をどう見せるかというだけじゃなくて「こうすればスタジオは絶対笑う」とか「絶対スタジオにツッコませてやる」ということをすごく計算していて。観る方も気を抜いた表情してたりすると、次の回の放送ですぐその顔を使われたりしてましたから。

―今度は「びっくりさせる」わけですから、そこはさらに強化されるかもしれませんね。

有田 そうでしょうね。

―まだ内容についてはそんなに語れることはないですか?

有田 こんなことやるよ、とは雑談レベルで。まだ完成したVTRを観てないですからねえ。

―記者発表では、MC陣がロケに行くかも、という話もありました。

上田 僕はないんじゃないかな。のちのち行くことになるかもしれませんが、自分が行ったロケのVTRを見てびっくりすることはないですからね。

―有田さんは、ドッキリの仕掛け人になる可能性もあるとか。

有田 うまく企画と合えば、そういう展開もあると思いますよ。

―どんな番組にしたいですか?

有田 「新しい番組はじめましょう」と言われたときに「どういうことやるの?」って尋ねたら「ただ見て笑って楽しんでもらえるようなもの」だと。「子どもや若い人たちにキャッキャ言ってもらう」ということを追求したいと言っていたんで、ただただ「笑ったね!」っていうだけの番組にできたらいいですね。

上田 僕も同じですね。日曜の夜7時に深いことを考えるでなく、家族みんなで驚いたり笑えたりできるような。そういう意味で、新番組は、ためにはならないと思いますよ(笑)。

緊張とリラックスと。
慣れずに仕事に臨む

―番組が新しくなるときって、モチベーションは高まったりします?「よっしゃ行くぞ!」的な…。

有田 失礼な言い方になるかもしれないですけど、「よっしゃ行くぞ」はないですね。というよりは、楽しみにしている感じ。この番組は「みなさん、楽しいVTRを作ったので、スタジオで盛り上がってください」っていうスタイルなので。いっぱい笑えればいいなって思ってます。

上田 僕らは長く続いてる番組でも「新しい企画をやる」となると、新番組みたいな気分なんですね。で、それは連日ある。だからことさらに「新番組か…よっしゃ!」っていうことはないんですよ。もちろんやる気がないわけじゃなくて、その日出せる最大限を出そうというモチベーションは変わりません。

―一般の勤め人でも、新規案件だったら緊張したりしますしね。…おふたりは、お仕事で緊張します?

上田 毎日、ある種の緊張感とリラックス状態が混濁しているような感じですね。どんな番組でも「家でリビングにいるような状態」で出演しているわけではなくて、絶対的に普段とはトーンが違います。それが緊張感なのかはわからないですけど。とはいえ、アスリートみたいなスイッチの入れ方でもないんです。

有田 大物の方や大御所の方と初めてご一緒するときに「大変そうだな」っていうときはあります。3日前ぐらいから現場を想像して「うわあ」って思うこともあるんですけど、性格上、緊張してよかった試しがない。できるだけ緊張は掻き消すよう努力してます。「なんだかんだいっても、いろんな仕事の1個じゃん!」って自分を騙すようにしてます(笑)。

―お仕事で「やってもうた!」っていうときは、気にしますか?

上田 そうですね。毎日何かしらの失敗は必ずしていますし、気にしなかったら成長しないですから。反省したところで改善できるかというと、同じ失敗をしたりしますけどね(笑)。

―採点基準は辛い方ですか?

上田 そんなことはないですよ。自分がそれだけの結果を出してないだけですから。もし合格点が出せたら「やった~っ!」ってなるのかもしれませんけど、結果を出してないからしょうがない。だから「今日もダメだったな」っていう繰り返しです。

―「オレ、今日もダメだったわ」とか誰かに言ったりするんですか?

上田 言わないです。言ってもしょうがないですから。それを解決できるの自分だけなんで。

―は~っ、なるほど…。で、リセットはいつされるというか…。

上田 いやいやいや…(笑)。あのですね、たぶん思ってらっしゃるほどストイックではないです(笑)。収録が終わって「あそこもっと盛り上げられたんじゃねえかなあ、まあ全力は出したもんな。でも冷静に考えりゃもっとできたか。じゃあ明日がんばるか!」ぐらいのもんですよ(笑)。

―なるほど。有田さんは?

有田 僕は上田と違って、自分が「できた」という合格ラインがものすごく低いんです。毎日、家を出る前に毎回「おれ今日、面白いことが言えるのかな」「司会とかできたっけ?」って思うんです。たぶん性格ですね。だって飲み会行くにしてもゴルフ行くにしても「盛り上がるのかな」「いいショットできんのかな?」って、毎回思ってますから。前の経験を踏まえて「よし、今日もできるだろう」って思えないんですよね。だから、終わったあとには「オレ、今日できたぁ!」って満足して帰る(笑)。

―上田さんとは真逆ですね。

有田「お前は自分に甘い」と、よく上田に冗談で言われます(笑)。ハードルが低いから、反省どころか「よくあそこで面白いのが出たな!」と。

―それが次の仕事まで持続していれば自信満々でいけるのに…。

有田 それが仕事が終わってクルマに乗ると「よくあそこであんなこと言えたな!」って、ちょっと怖くなる(笑)。まったく自分のキャリアや実力を信用してないんですね。

―こういう手順で笑いを得たみたいな感覚はないんですか?

有田 プロとしては、まことにお恥ずかしいところです。

―天才かもしれないですね。

有田 いや、忘れっぽいだけです。

―番組について、「これ成功してるな」ってわかります?

有田 誰か他人に「あれ面白いね」って言われて初めて。その回の視聴率がよかったり後々企画が盛り上がったりすることはありますけど、自分では全然! これまでさんざん予想してきましたけど、ダメですね。失敗が最初からわかっていれば適当にすることもできるのに、毎回一所懸命やるしかない(笑)。

上田 成功する番組って、つねに二の矢、三の矢を持ってるんだと思うんですよ。好調なときに、軸になる企画をやりながら別の企画をすでに用意しているんじゃないんですかね。「好調だからこそ、違うものを作っておこう」というのはスタッフからも言われるので、僕がとくに言うことでもないんですけどね。

―『シルシル』については、そういう感覚はありました?

上田 あの番組は新しいことをやったでしょ? 企業の工場見学をしつつ、失礼なツッコミを入れたりスタジオに投げかけたり。手前味噌ですけど、結構その手法は他の番組でもマネされたんじゃないですか。ものすごく大げさですけど、一つの“時代”を作って使命を終えたっていうことなんじゃないかと思います。

有田 『シルシル』は「ムダな番組」でしたねえ(笑)。毎回予算使ってスタジオを開いてトークをたっぷり撮って、全然使わなかった(笑)。だからといってスタジオでは近況報告からVの感想からおふざけまでみっちり撮って。あまりにも健全じゃなかったので、終わるべくして終わった番組かと(笑)。だから今度はちゃんとスタジオが活かせる番組にできたらいいなあと、切に願っています。

有田哲平:1971年2月生まれ、上田晋也:1970年5月生まれ、ともに熊本県出身のふたりからなるコンビ。同じ高校のラグビー部で出会い、大学進学のために上京後、91年に「海砂利水魚」を結成。2000年、『新・ウンナンの気分は上々。』でくりぃむしちゅーに改名。司会王として名を馳せる上田の容赦ないツッコミを活かしたMCと、有田の自由闊達なボケで多くのテレビ番組で活躍中。現在、『世界一受けたい授業』『しゃべくり007』(ともに日本テレビ)、『ペケ×ポン』(フジテレビ)、『くりぃむクイズ ミラクル9』『くりぃむナンチャラ』(ともにテレビ朝日)に出演中。

武田篤典(steam)=文
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