居住可能な星は見つかるか、父娘の再会は果たされるのか…

地球が終わる時、人類の選択肢は!?

2014.11.10 MON


映画『インターステラー』(11月22日〈土〉公開) 劇的な環境変化によって、地球の寿命が尽きようとしている。人類の存亡をかけ、居住可能な惑星を探すためのミッションに選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元パイロットだった…『インセプション』『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督が、父娘の絆と人類の未来を、時空を超えるスケールで描いた話題の超大作
地球の寿命が尽きるとき、人類にはどんな未来が残されているか? クリストファー・ノーラン監督の最新作『インターステラー』で描かれるのは、人類の存亡をかけて宇宙へと旅立つ父親と、滅びゆく地球に残された娘との物語だ。

主人公・クーパーはNASAから、ある指令を受ける。それは、宇宙のはるか彼方に人類が住める星を探すという、おそろしく困難なもの。幼い娘を残して宇宙へ出れば、二度と地球に戻れないかもしれない。自分を犠牲にしてでもわずかな可能性に希望を見出すか、それとも愛する家族と最後の時を過ごすか。まさに究極の選択だが、彼は果敢にも宇宙へ旅立ってゆく。その男らしさは、本作の大きな見どころのひとつだ。

しかし、地球の寿命が尽きるなんて、いま生きている我々には関係のない遠い未来の話なのでは?…と思いきや、南極や深海など極地環境の生態系を研究する生物学者・長沼 毅さんは、この仮定を「近い未来にも起こりうる事態」だという。

「異常気象や環境汚染、疫病など、何らかの事情で世界全体の食糧生産力が失われれば、人類は地球に住めなくなる。これは地球が消滅するよりもずっと早く、明日にも起こりうる危機です。実際、1815年にはインドネシアで起こった大規模な火山の噴火によって欧米から中国まで広い範囲が異常気象に見舞われ、当時は“人類の生存危機”といわれたほどまで農業が壊滅的な打撃を受けました。アメリカでは1930年代にも砂嵐による大飢饉を経験しています。そうした歴史と恐怖の記憶が、この映画の下敷きになっているのでしょう」

すでに公開されている『インターステラー』の予告編には、広大なトウモロコシ畑を襲う砂嵐が映っている。作中では過去に起こった危機が比にならないほどの、地球規模の食糧難に見舞われているのだ。そうなったとき、果たして宇宙に人類の逃げ場はあるのか? 映画公開に先駆けて、現実的な可能性を長沼さんに聞いた。

「手っ取り早いのは、身近な惑星をテラフォーミング(人類が住めるように改造)すること。たとえば、火星には水の氷と二酸化炭素の氷(ドライアイス)があります。人間が部分的にドライアイスを溶かしてやれば、それが温室効果ガスになって気温が上がり、氷がどんどん溶けていく。そこに藻のような植物をまけば、繁茂して酸素もできます。ただし、ひとつ問題があって、火星には磁場がないから放射線が直撃するんです。大気はなんとかなっても磁場は簡単には作れないから、火星に移住する人類は放射線を避けて地底に住むことになると思います」

火星のテラフォーミングは技術的には可能なので、あとは人類がどれだけ投資するかで環境が整うまでの期間が決まる。極端な話、金に糸目をつけずに物資を投入すれば、100年単位で実現が可能だとか。人類がほかの星に移住するなんて非現実的な話だと思っていたけれど、かかるコストを度外視すれば、意外とハードルは低いのかもしれない。

「人間が住むことを考えたとき、最低限必要なのは水と何らかのエネルギー源です。電気を起こせれば水から酸素が作れるし、酸素と燃料があれば物を燃やせますから。火星よりも範囲を広げれば、土星の衛星・タイタンには大気と水、それに燃料になるメタンが使い切れないほどありますし、太陽系外に目を向ければ、地球のように地表に液体の水がある惑星が100個程度あると想定されています。宇宙のどこかに人類が住める星があることは間違いないけれど、ネックになるのはそこまでの距離ですよね…」

今の航空技術では、火星まで片道250日、木星まで5~6年、土星までは十数年もかかってしまうそうだ。太陽系外の惑星に向かおうものなら、何百年かかるのか想像もつかない。地球の寿命が迫るなかで、クーパーたちはどのように時間と距離の問題をクリアするのか? そして、「必ず、帰ってくる」という父娘の約束は守られるのか?

常人なら諦めてしまいそうな過酷な状況のなか、人類としての使命と家族との約束を両立させようと奮闘するクーパーの男らしい姿は、観る人の胸を熱くする。いつか起こりうる事態に備えて、その結末を見届けよう。

<取材協力先プロフィール>
長沼 毅(ながぬま・たけし)
1961年生まれ。広島大学大学院生物圏科学研究科准教授。生物海洋学、微生物生態学を専門とし、南極や砂漠、深海などで極地環境生物の探索調査を行う吟遊科学者。著書に『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』(朝日出版社)、『生命の星・エウロパ』(NHKブックス)、『生命の起源を宇宙に求めて』(化学同人)など

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