駒崎弘樹「子育ては大変さばかりが強調されすぎ」

「年収300万で子育て」は無理?

2015.05.30 SAT


こまざき・ひろき 認定NPO法人フローレンス代表理事。1979年生まれ。2004年にフローレンスを設立し、日本初の共済型・訪問型病児保育サービスを開始。2010年以降、内閣府や東京都などの政策委員を歴任し、現在も厚生労働省「イクメンプロジェクト」座長などを務める。4歳女児と2歳男児の父。
NPO法人フローレンス代表として、官と民をつなぎながら子育て支援に取り組む駒崎弘樹さん。彼は昨今の育児の語られ方を、「大変さばかりが強調されすぎ」だという。

「よく『子育ては大変』って言う人がいるけど、ああいうのは多少ディスカウントして聞いた方がいいですよ。照れもあるだろうし、『楽しい』『かわいい』って言いすぎると、子供が熱を出して休むようなときに肩身が狭くなる。だから同僚には家庭の大変さをアピールするっていう、ある種の処世術だと思うんです」

そんな“処世術”のせいで、独身者が結婚や子育てに幻滅してはもったいない。育児は「基本的には楽しく、うれしいもの」だからだ。

「子育てってスポーツなどの部活動と同じで、大変さと楽しさがセットになっていて切り離せないんです。毎日の苦労があるからこそ、この間までしゃべれなかった息子が『パパ』って言うだけでめちゃくちゃうれしい。仕事で味わう達成感とは種類が違うけれど、同じレベルの喜びを3日に1回は味わえます」

そしてもうひとつ駒崎さんが引っかかっているのが、経済的な話。

「僕の後輩が『年収300万円代の自分に子供なんて育てられない』と言うんです。じゃあいくら稼げば育てられるのかと聞くと、『700万円は欲しい』と。でも、今の30代男性の平均年収って、300万円代がボリュームゾーンでしょう? 昔だったら会社に勤め続ければ年収が上がったけれど、今はそれも望めない。700万円をハードルにすれば、多くの人は一生結婚できなくなってしまいます。ただし、夫婦共働きでそれぞれ300万円を稼げば、一気に中流以上の世帯年収が得られる。1本の大黒柱で家計を支えられないなら、夫婦で協力し合えばいい」

駒崎さん自身、奥さんと共働きで2児を育てている。経営者として働きながら、家事もやるし、育児もやる。

「以前は1日16時間働いていましたが、娘と息子が生まれたときは、それぞれ2カ月の育児休暇を取って1日1.5時間だけを仕事に充てました。それ以降は日中に仕事を済ませ、19時には帰って子供を風呂に入れて…みたいな生活です。大変といえば大変ですが、別に人格が優れているから家事や育児をやるわけじゃない。ダブルインカムで子育てするということは、イクメン化することとイコールです。やらないと生活が回らないから、やる。生活スタイルから必然的に生じるタスクですから」

だが、家事・育児は決して軽くはないし、毎日繰り返される一大タスクだ。駒崎さんは、いったいどこから時間や労力を捻出したのか。

「長時間働いていた頃は夕方から身が入ることも多く、仕事の密度が薄かった。時間に対する意識が変わり、自分がやるべきことだけに集中するようになりました。息抜きにSNSをしたり飲み会に出たりすることは減ったけど、子供と引き換えに何かを失ったとは思いません。ただ、優先順位が変わったんです」

駒崎さんは、この変化を「頭のOSを、独身OSからパパOSに入れ替えたようなもの」と表現する。

「パパOSをインストールしたら、自分の子供はもちろん、ほかの子供までかわいく見えるし、些細なことに感動しやすくなりました。独身時代と比べて、情緒が1.6倍増(当人比)みたいな感じ。これが、親になるってことなんでしょうね」

世のパパたちが「大変だ」と言いながらも、わりと楽しそうに育児に勤しんでいるのは、“パパOS”のおかげ。そう考えると、いろんなパパたちの言動が、腑に落ちる気がする。
(宇野浩志)

  • 『働き方革命 あなたが今日から日本を変える方法』
    駒崎弘樹
    ちくま新書
    799円
  • 「日常のなかで、3日に1回は『この子がいてくれてよかった』って泣きそうになる」という駒崎さん。「異性の子の方がかわいいといわれるけど、そんなことはなかった。息子と娘、どちらも最高にかわいいです」

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