裏設定がわかればもっと楽しくなる

芸術かエロか…笑える「春画」5選

2015.11.11 WED


春画展は永青文庫(東京都文京区)で開催中。後期約70点の展示が11月3日より始まっており、会期は12月23日(水・祝)まで。18歳未満は入場禁止 ※画像はスクリーンショットです。
9月から永青文庫で開催されている「春画展」。“春画”をメインに据えた日本初の展覧会ということもあり、今年の芸術の秋は春画なくしては語れないほど注目を集めている。なかには「春画って江戸時代のイヤらしい絵でしょ?」なんてイメージを持っている方も多いはずだが、実はそう単純なものではないらしい。

「室町時代に、中国から日本に伝わった春画(春宮画)は、江戸時代に『笑い絵』と呼ばれて広く親しまれていました。春画は新年のお祝いや婚礼、武家の男子が鎧を作る際など、人生の節目のお祝いとして作られる、とてもおめでたい品物なんです」

そう語るのは、永青文庫の三宅秀和学芸課長。なんでも、春画には“子孫繁栄”への願いが込められており、新年ごとに春画を作って配っていた人もいたとか! 

「祝いの品なので、春画のなかには美術品として価値が高いものもたくさんあります。とくに大名家がまとめた春画の本は色数も多く、エンボス加工された上質の紙を使用するなど、まさに豪華絢爛! 一流の技術が集約されています」

加えて、葛飾北斎や歌川国貞など、名だたる浮世絵師が春画を描いていたこともあり、芸術的観点からも評価が高い。美術品としての魅力がある一方で、“笑い絵”と呼ばれていた春画。その理由とは?

「笑い絵の“笑い”は、大爆笑というより、自然にこぼれる微笑みを指します。合戦に向かう前の武将が春画を見て心を穏やかにしたという記録もあるように、心休まるものでした。穏やかに微笑んでいる武将は戦に勝てるはずだ、という想いが当時の人にはあったようです」

作品によって笑いの形も様々です、と三宅さん。そこで、春画展の展示作品のなかから「笑える春画」を5つ選んでいただいた。

1)
●「會本拝開よぶこどり」(天明8年/勝川春章)
計12枚の春画で構成された會本のなかの一作。花魁に入れあげて一文無しになった若旦那が件の花魁に会いに来て、物陰で情事にふける場面が描かれている。しかし、注目すべきは背景に書かれたセリフ。

「セリフの最後に若旦那は『二三日中に又五六両工面してくれりゃ(二三日のうちに金を送ってくれ)』と言い放ちます。なんと、若旦那はただのヒモ男だったことが判明するんです」

小話ながらも、しっかりオチがついているのだ。

2)
●「陽物涅槃図」(江戸時代/作者不詳)
お釈迦様が入滅した際、周囲の人々が悲しんでいる姿が印象的な仏画の「涅槃図」だが、春画にかかればお釈迦様も男性の“イチモツ(陽物)”に早変わり…!

「春画には有名作品のパロディも多いので、様々な楽しみ方ができます」

罰当たりな気もするが、一見の価値あり、だ。

3)
●「床の置物」(天和年間/菱川師宣)
古来より存在した、大人のオモチャ「張型(はりがた)」を題材にした本作。とても大きな張型を売りにきた道具屋に対して、奥女中たちが不満そうな顔で「もっと大きいものがほしいです」と伝える、なんともユニークな作品だ。

「明らかに大きい物を小さいと言う、いわゆる誇張表現で笑わせる手法です。現代のギャグにも通じるところがあるかもしれませんね」

4)
●「喜能会之故真通」(文化11年/葛飾北斎)
葛飾北斎が描いたことで有名な作品。単なる“タコプレイ”ではなく、タコのようにアソコの吸い付きがいい、そんなふうにいわれていた女性がホンモノのタコの吸盤を体験して感激している様子が描かれている。

「発想がスゴいですよね。葛飾北斎の春画には、背景を文字で埋め尽くすという特徴があります。大ダコ、小ダコのセリフに、女性の喘ぎ声や、タコの吸い付きがいいというセリフが書かれています」

5)
●「風流艶色真似ゑもん」/「うっかり新田」(明和7年/鈴木春信)
「風流艶色真似ゑもん」は、主人公の“真似ゑもん”こと浮世之介が、色道を極めるために豆粒ほどの大きさに変身し、様々な男女の色情をのぞき見る冒険譚。全24編のひとつ「うっかり新田」では珍妙な面を被った男が「私は稲荷の神様だ」と言いながら田植え中の女性に迫る、奇妙な光景が描かれている。

「どう見てもお面を被った人間なのに、迫られている女性や彼女の父親までもが、神様と信じている姿がとても滑稽。ツッコミどころが満載です」


これらの作品はすべて、開催中の「春画展」で観ることができる。どの作品も、ただ情事を描いただけでなく元ネタのパロディや設定を表に出すことで“笑い”に昇華しているものばかりだ。

「もともとは男女の交わりを見て微笑む程度でしたが、江戸時代には作者側がどんどん設定やセリフを盛り込んで、絵と文章の落差で笑わせるようになりました。春画を知ることで、当時の性がいかにポジティブなものだったかが伝わってきます」

設定を知り、笑いどころを見つけ出す。それもまた春画を楽しむ方法のひとつなのだ。
(大貫未来/清談社)

  • 「喜能会之故真通」(文化11年/葛飾北斎)
    タコのように吸い付きがよく「名器」といわれていた女性の「タコ体験談」。背景は、喘ぎ声を書いた文字で真っ黒!

    葛飾北斎「喜能会之故真通」浦上満氏蔵

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