男を磨くカルチャー入門

第7回 「書」の美しさはどこで決まる?

2009.04.02 THU

男を磨くカルチャー入門


昨年、上野で行われた書展の様子。様々な書体の文字が並んでいます。「一般の書展なら、審査員が文字としての美を評価した作品が並んでいるため、書としての正確な美を学ぶことができます」(小野寺さん)

書道は読むものじゃなく観るもの!?書の“うまさ”はどこで決まる?



字がうまい人って、それだけで知的で洗練されたイメージ。でも書道の大家が書きました!的な字って、かなり書き崩してあって、正直読めないものも多い。「これのどこがうまいの?」と思うこと、ありますよね。

あの手の書き崩された作品の評価って、どうなってるんでしょう? 『新しい書の見方』などの著書を持つ、書道ジャーナル研究所の小野寺二見さん、教えてください!

「書道とは、文字をより美しく芸術的に書き、個性美を表現する専門技法のこと。筆で活字のような整った文字を書いても、正しいだけで個性美が表現されていません。そこで、個性美や早く書く利便性を加えた結果、あのような読めない文字になったわけです。どんな書道の大家でも、基礎にあるのは小学校で習う習字(書写)。この習字技術を基礎として、文字の正整美を習得。次に、表現美を追及するために古典と呼ばれる過去の文字を学び、繰り返し臨書(お手本をまねて書く)します。その後、時代ごとの表現美を研究したうえで、やっと自分が求める芸術的な個性美を表現するようになるのです」
07年にロシアで開かれた海外書道展の様子。外国の方も興味深く観ています。日本の著名な書道家の作品が一堂に会し、連日大盛況だったそう
なるほど、誰が見ても正しくて美しい文字が書けたうえで、芸術的な書き崩しに取りかかるわけですね。でも、書道の芸術性ってわかりにくい気が。書き崩した作品はどんなポイントを見ればいいんですか?

「初心者でもパッと見てわかるのは色でしょう。そこで、1つめのポイントは墨の濃淡。墨=黒と考えがちですが、灰色から漆黒まで濃さは様々。濃淡に作家の心情をこめる場合もあります。2つめは、線や構成。書道は線の芸術ともいわれるほどで、線の太さや流れなどに作家の個性がよく表れます。また、あえて縦長や横長に変形させた文字同士の調和や、線の黒と紙の白とのバランスなどもポイントです。3つめは、表現力。涙のようににじんだ線なら悲しさが表れ、ふっくらと温かみのある線なら明るさを表現など、作家の意図が見た目で表現できているかを見るのです。でも、まずは無理に文字を読もうとせず、絵のように感性で観てください」(同)

文字ではなく、モノトーンの作品として捉えるってことね。最近は海外でも書展が開かれているけど、それなら漢字が読めない外国の方も楽しめそう!

小野寺さんいわく「書をすることで知性や礼節が養え、表現力が高まり美的センスも磨かれる」のだそう。私がかねがね思っていた、字がうまい=知的で洗練されたイメージには、ちゃんと実体がともなっていたワケね。恐れ入りました!
イケメン書道家・武田双龍さんに個人指導してもらうワタシ☆ というより、いつまでたっても上達しないワタシを見かねて先生出動! というのが正しい説明ですかね。トホホ…

字は心? イケメン書道家・武田双龍さんにアーティスティック書道を習ってきた!



字は心の鏡なんて言葉を聞いたことはありませんか? つまり、人が書く字には性格や心情が表れるということです。そういえば、整った字を見ると書き手の丁寧な人柄をイメージするし、年賀状や挨拶状も、たった一言でも手書きのメッセージがある方がうれしいもの。やはり人の書く字には思いを伝える力がありそうです。

なかでも字の力を感じさせられるのが、書道。派手に書き崩されたアーティスティックな字からは、気迫さえ感じられますよね。ということで、本レポートのアクセス数アップ(!?)という強い思いを、アーティスティックな書道で表現したいと思います。新進気鋭の書道家・武田双龍さん、ご指導ください!

「本来なら基礎から始めて正しい字が書けるようになってから書き崩すんですがまぁ今回は特別ということで(苦笑)。アクセス数が上に昇っていくというイメージで昇という字を書きましょう。キレイな字・バランスのいい字を書こうと気にするとうまく思いが乗りませんから、目をつぶってみたり左手で書いてみたりして、一度意図的に書き崩してみるといいですよ。筆をいじめるイメージです」
説明するまでもありませんが、左側がオオタカ作。それだけでは心もとないので、本コラムのアクセス数が“龍”のようにのぼっていくイメージで双龍さんにも書いていただきました(右側)
た、たしかに。知っている字なだけに、絵のような感覚で遊び心を加えるのはかなり困難。実は、書き崩された字を見て、「私にも書けそう」なんて甘いこと考えてたんです。書き崩すのが難しいのは私だけじゃないと思うんですが、どうすればいいんでしょう?

「僕の生徒さんでも、初めから楽しく気持ちを乗せて書き崩せる人もいれば、なかなかキレイな字という概念から離れられない人もいます。書道もアートですが、絵とは違って数秒~数十秒で完成される瞬間芸術。息をするのも忘れるほどの集中力が必要ですし、大きな作品になると書きあがるまで全体像を把握することすらできません。だからこそ、大地における気の流れ龍脈を途切れさせないよう、リズムをつかむことが大切。僕が作品を書くときは、たいてい好きなロックを聴いています。好きな音楽を聴きながら書けば、自然と心もリラックスして、リズムもつかめますよ」(同)

試行錯誤を重ねること1時間! やっと完成したのが写真左の昇です。アートの域には至りませんが、思いは込められたのではないかと。アクセス数も昇となる!?

双龍さんによれば「字は整っているかどうかではなく、思いがこもっているかどうかが一番大切。字を見ただけで、体調や心理状態もわかる」のだそう。やっぱり、字は人の内面を映し出す鏡なんですね。これからは、読めればいいと適当に書いていた日々の字から立て直していこうと思います! 前編では、整った字の美しさは一目瞭然だけど、
大胆に書き崩された書の美しさはどこで決まるんだろう?
という素朴な疑問を解決。
さらに後編では、実際にアーティスティックな書道を
ご指導いただきました。

その結果、書道も絵のように感性で観る、という教えをいただき、
書展には俄然興味がわいてきましたが、実践への道は困難。
ただお手本をまねるのではなく、オリジナリティが求められる分、
正しく美しい字が書けるという大前提がないと難しいなぁ、
と実感させられた次第です(苦笑)
どんなアートも、基礎があってこそ! なんですね。

ということでみなさんにも、まずは書展へ行って見る目を養い、
興味がわいたら書道にも挑戦してみることをオススメします。
「こんな書展に行ってみた」という報告や、
「もっとこんなカルチャーが知りたい」というご意見・ご要望、
楽しみに待っています!

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