テレビゲーム文化考

第8回 ゲームって社会的にいいことないの?

2009.10.15 THU

テレビゲーム文化考


リハビリ施設で活用されるアーケードゲーム、『ワニワニパニックRT』。ゲームセンターに設置されているものと同じ形状だが、ワニが出てくる速度を遅めに調整できるなど、リハビリ用に特化している

テレビゲームが人に与えるいい影響って?



少年事件などが起きたとき、報道で語られるテレビゲーム=悪者という風潮。

実際にテレビゲームが悪影響を与えるかどうかについては、いろいろな意見があるようです。でもきっと、逆にテレビゲームがいい影響を与えていることだってあるのではないでしょうか? いや、きっとあるはずだ! というわけで、テレビゲーム業界の社会貢献などを紹介している冊子『テレビゲームのちょっといいおはなし』を作っている、テレビゲームの業界団体・CESAの町谷太郎さんに聞きました。

「最近ではまず、DSの『脳トレ』や『Wii Fit』のように、人の脳や体にいい影響を与えようというコンセプトのゲームがありますよね。それと同じような感覚で、ゲームの面白さを活用し、『太鼓の達人』や『ワニワニパニック』などのアーケードゲームを、ご年配の方のリハビリに活用されている事例もあります」

ゲームをおじいちゃんやおばあちゃんのリハビリにですか? なんだか接点がなさそうな。

「これは『テレビゲームのちょっといいおはなし・2』に掲載した事例なのですが、リハビリの動きとゲームで遊ぶプレイヤーの動きが似ているんですね。医療現場の方から、リハビリという単調でつらい作業にアーケードゲームを活用してはどうかという提案があり、実際にリハビリテーションの場にゲームの筺体を持ち込んでみたそうです。開始当初はリハビリ用・お年寄り用に用意したゲームを使用したのですが、それはあまり好評を得られず、改めて、実際に使われているアーケードゲームをリハビリ室に設置したところ、大変好評を得たということです」

確かに『ワニワニパニック』はワニがたくさん出てくると焦って体を激しく動かしちゃいますもんね。リハビリの他にも、京都の中学校では、ニンテンドーDSを英語の教材として使用する試みが行われた結果、生徒が覚えた平均語彙数が300~400語増えるなど、確かな成果が出たそう。

「例えばゲームを教材に取り入れるところで、お子さんたちの学習意欲の向上が期待されており、さまざまな導入が検討されています。他にも、アメリカ・ウェストバージニア州では、KONAMIさんの『ダンス・ダンス・レボリューション』を活用してお子さんたちの健康維持に役立てるプロジェクト事例があります。反復性や、プレイヤーに対するフィードバックがあることがゲームの利点ですから、それをうまく生かすことで、ゲームは人にいい影響を与えられるのではないでしょうか」

ゲームの持つ面白さ、とっつきやすさをいい方向に生かしているってことですね。「それらを生かした、いわゆる実用系のゲームソフトはこれからも数多く出てくるでしょう」と町谷さん。ゲームをやっているうちに頭がよくなる時代がそのうち来る!?
PS3版『Folding@home』の画面。たんぱく質の折りたたみ構造をシミュレーションしているのだとか。世界中のPS3で計算しているんですって。ちなみにPC版もあります

テレビゲームが社会に与えるいい影響って?



事件が起こるたびに「容疑者はゲームマニアで~」とか、「部屋から多数のゲームソフトが~」なんてテレビで報道されるように、ゲームが人に及ぼす悪影響の有無についてはよくニュースになっていますよね。

逆にテレビゲームが社会の役に立ったり、何か世間にいい影響を与えていることってないのでしょうか? 『テレビゲームのちょっといいおはなし』という、ゲームによる社会貢献を紹介する冊子を作っているテレビゲームの業界団体・CESAの町谷太郎さんに聞きました。

「悪影響論が浸透している背景のひとつとして、ゲーム影響論に関する研究が世界的にも少ないことが挙げられます。しかし最近になり、ようやく具体的な研究結果に基づいた反論ができるようになってきています。今後はこうした研究の蓄積をもとに、少しずつ事実関係を整理しながら偏見を払拭していければと考えています」

他にも、一般にはあまり知られていませんが、例えばゲーム会社による次のような活動事例もあるそう。

「『FOOD FORCE』という、WFP(国連世界食糧計画)の食糧援助活動を体験できるゲームがあります。これはPC用ソフトとして無料でダウンロードできるもので、各国の言語に対応したバージョンがあります。ゲーム会社のKONAMIさんが、WFPと共同で日本語版の翻訳・開発を担当し、好評を得ています。単なる翻訳にとどまらず、日本語版オリジナルバージョンとして、漢字をひらがなにし、平易な言葉を使った子ども向けモードも用意され、子供たちに、遊びを通して社会に興味を持たせることの方向性を示しました。ゲームを使うことでより多くの人々にWFPの活動を知ってもらうことができたと言えるでしょう」

遊びの力を活用して、世界の飢餓問題を考えたり、国連の活動について理解を深められるわけですね。それは確かにゲーム会社にしかできない社会貢献の仕方かも。

「ゲーム会社だけでなく、プレイヤーが貢献している事例もあります。米国スタンフォード大学が主導する、たんぱく質の折りたたみ構造を解析し、がんなどの疾病の原因究明を行う分散コンピューティングネットワークプロジェクト『Folding@home』には、高い処理能力を持ったPS3をネット接続することでも参加が可能で、PS3からの参加者が100万人を超えているなど、ゲームが社会貢献に役立っている事例は多岐に渡っています」

『Folding@home』プロジェクトでは、1台のコンピュータではまかないきれない膨大な計算を、多くのコンピュータで分散して計算しており、その計算を家庭のPS3でも行えるのだとか。今のゲーム機は昔と比べて随分高性能になっていますから、家庭用ゲーム機として遊ぶということ以外にも活用することができるのだそう。

ゲームの持つ「遊び」の力を活用して、国連組織の活動の広報につなげたり、ゲーム機で大勢のプレイヤーが研究に貢献していたりと、ゲームが社会に貢献していることっていろいろとあるんですね。 ゲームは楽しいものです。

その楽しさが生み出す中毒性ゆえに、
ともすれば悪者にされてしまうこともあるのですが、
その中毒性や面白さをいい方向に使うことで、
ゲームは人や社会にいい影響を与えることができる。

言われてみれば自分も、
『脳トレ』や『Wii Fit』などの実用系ソフトを多く持っています。

しばらくサボリがちだった『Wii Fit』、
久しぶりに遊んでみようかな。

さて、このコーナーでは、
皆様のゲームにまつわる疑問・不思議なことなど、
様々な意見を広く募集しています。

「野球ゲームで日本シリーズの結果をシミュレートできる?」
「世界で一番売れたゲームソフトって何?」
「女性キャラのにょとかなのらって語尾はどこから生まれたのら?」
などなど、疑問や意見がございましたら、
からぜひお便りください!
ひょっとしたらあなたの意見から生まれた企画がR25.jpに掲載されるかもしれませんよ!

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