途方もなく天文学的な宇宙の不思議 第2回

宇宙が風船みたいに膨らんでいる…ってどういうこと?

2011.08.31 WED


ためしに風船を膨らませてみると、たしかに遠くにある点の方が、より遠くに離れた(=速く遠ざかった)。ちなみに、地球上の物質や銀河系内の星と星などは重力や電磁力によって結びついているので離れない。加えて、個々の銀河もランダムな運動をしているので、膨張で距離が遠ざかるのがはっきりわかるのは、数千万光年以上離れた銀河団のスケールに限られるとか 【画像クリックで膨らみます】
この宇宙にはじまりがあったことは、日本の古事記やキリスト教の旧約聖書をはじめ、世界各地の創世神話や伝承のなかで語られている。だが、意外にも科学が“宇宙のはじまり”を認めたのは、20世紀に入ってからのこと。1905年に特殊相対性理論を発表したアインシュタインでさえ、宇宙はずーーーー(∞回繰り返す)っと変わらずに存在し続けてきたものと信じて疑わなかったという。

「宇宙が永遠不変の存在であるという常識が覆されたのは、1929年に天文学者のハッブルによって、宇宙が膨張していることが“観測”されたからです。ハッブルは、当時の最新型の天体望遠鏡を使って、“遠くの銀河ほど速い速度で遠ざかること”を発見しました。これが動かぬ証拠となって、人類の宇宙観が静的なものから動的なものへと大きく転換したんです」

こう語るのは、宇宙物理学者の佐藤勝彦さん。…だが、前近代的な科学知識すらおぼつかない僕には、「遠いものほど速く遠ざかる」ことで何が証明できるのか、まったくもってわからなかった。これを理解するには、まずは“膨張する宇宙”をイメージすることが必要らしい。それでは、目を瞑って想像してみましょう…佐藤さん、説明をどうぞ。

「まず、宇宙というのは中心も回転軸もなく、特別な方向を持たない“等方的”な空間です。これを理解するのがなかなか難しいのですが、よくたとえられるのは“風船の表面”のようなイメージですね。この宇宙が膨張するということは、膨らむ風船の表面みたいに時空全体が広がるということ。空間が広がれば広がるほど、宇宙のなかにある物体同士の距離は遠ざかります」

…うーん、イメージできただろうか? この宇宙が風船の表面のようなものという前提は、そういうものとして受け入れることにしよう(だって、なぜかと聞かれても僕には答えられないから!)。ざっくりと説明すると、ハッブルがやったことは、基準となる星の明るさをもとに銀河団までの距離を割り出し、「赤方偏移」と呼ばれる光のドップラー効果(近づいてくる光は青みが増し、遠ざかる光は赤みが増すらしい)で銀河団が遠ざかるスピードを導き出した…ということだとか。この観測結果が、風船のような宇宙の膨張なしには説明できなかったため、永遠不変の大前提がひっくり返ったのだ。

「こんなふうに、理論で導き出されたモデルを証明するために天体が観測され、観測された事象をもとに理論が見直されて、宇宙のモデルは検証されてきました。現代の宇宙論を理解するためには、この“膨張する宇宙”のモデルを知ることが大前提になっているんです」

あまりにもハードルが高い大前提だが、これが壮大な宇宙を知るためのとっかかり。いくら考えてもらちが明かなそうなので、とりあえずゴム風船を買ってこようかな…。
(宇野浩志)

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