ここに注目! 宇宙開発&観測最前線 第6回

世界を牽引する日本の超小型衛星

2012.09.05 WED


ISS日本実験棟「きぼう」からの衛星放出イメージ。「小型衛星放出技術実証ミッション」に基づき、5機の衛星が星出彰彦宇宙飛行士の操作によって宇宙空間へ直接放出される 提供:JAXA
天気予報に衛星放送、スマートフォンのナビゲーション機能など、様々な“便利”を提供してくれる人工衛星は、もはや暮らしに不可欠な“インフラ”ともいうべき存在。その分野で、日本が世界を牽引している領域があるという。宇宙ライターの林公代さんに話をうかがった。

「日本の人工衛星は国際的にも高い評価を得ています。そのひとつが、世界唯一の“温室効果ガス観測衛星”として二酸化炭素を観測している『いぶき」。そして、降水量や水蒸気量、海水の温度や氷河の溶け具合などを観測する『しずく』。これらの衛星が提供するデータは、世界中で活用されています。特に『しずく』は、各国の衛星が連なって地球を観測する『A-Train(エートレイン)』というプロジェクトにも参加しており、言うなれば“世界選抜”の一員でもあるんです』

これらは国家予算をもとにJAXAが開発・運用している“大型”の人工衛星だが、大学や民間企業が主導で開発している“超小型”の人工衛星も注目されている。

「大型衛星は数百人の技術者、5年以上の研究開発、そして数百億円規模の予算を要する国家レベルのプロジェクトですが、超小型衛星は、少人数(10人以内)、短期間(1?2年)、低予算(約2億円以下)を目標に作られます。明確な定義はありませんが、概ね大きさは10?50センチ四方で、重さも50kg以下。日本の技術力がこういった“小さなモノ作り”に生かされています」

でも、そんな小さな衛星で何ができるのだろうか?

「確かに多くの機能は搭載できませんが、単機能に特化した開発が行えるのが超小型衛星の強み。例えば『東京の渋滞だけを常時モニタリングしたい』というような、限定された目的に応じた衛星を作ることが可能です。実際にこの秋、北極海の海氷に焦点を当てて観測するという目的で、日本のベンチャー企業が世界初となる商用超小型衛星を打ち上げます。ただし、課題は打ち上げ手段です。通常の衛星用ロケットで打ち上げると、コストがかかりすぎてしまうんです。機体が小さいため、ロケット内部の空きスペースに“相乗り”させてもらったり、9月にミッションが実行されるISSからの直接放出という手段もありますが、これらは商用でなく、教育・研究目的の衛星に限られているのが現状です」(林さん)

そこで現在、大学や民間企業が中心となって専用の打ち上げロケットを開発するべく検討が進められているという。今後の宇宙開発を担う存在として、大いに期待したい。
(清田隆之/BLOCKBUSTER)

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