15年後に“完全”自動運転カーも! 10問10答で未来を読む

「自動運転カー」普及で事故9割減

2015.07.28 TUE


自動運転車の開発を進めるグーグル。2015年6月には、公道での走行試験をスタートさせた 写真提供/GettyImages
GoogleやBMWなど世界中の企業が開発を進める「自動運転カー」。文字通り、人間の操作なしで自動走行できる車のことだ。日本でも、日産が「2016年末に自動運転装置付きの車を販売する」と発表するなど、普及に向けた動きが見られる。しかし、いざ実用化となると、その安全性や事故の際の責任問題など、様々な疑問や不安も浮かんでくる。

そこで、『自動運転』(日経BP社)著者で、技術ジャーナリストの鶴原吉郎氏に、自動運転にまつわる10の質問をぶつけてみた。

Q1 日本の自動運転技術、世界と比べてレベルは高い?
A1 一部メーカーは世界のトップを走っている
「日本ではトヨタ、日産が開発をリードしていて、世界的に見ても先頭集団を走っていると思います。トヨタは自動運転にまつわる特許の出願数が最も多いといわれ、日産は2020年までに『高速道路、一般道路を含めた公道上で、人間の操作がほとんど不要な自動運転技術を実用化する』というロードマップを発表しています。それに向け、すでに国内外での公道実験も活発に行われている状況です」

Q2 日本の「自動運転カー」開発、現状どこまで進んでいる?
A2 部分的な自動化はすでに実現
「現状は自動ブレーキなど『部分的な自動化』が実現している段階。日産が2016年の実用化を目指しているのは、ハンドル操作の自動化など複数の機能を組み合わせた『複合機能を搭載した自動化』で、たとえば高速道路で同じ車線を走り続けるといった、限定した条件の自動運転を実現する段階です」

Q3 人間の操作を全く必要としない「完全な自動化」が実現されるのはいつ?
A3 最短で2030年くらい
「現在の開発状況を見る限り、おそらく2020年には、人間の操作がほぼ不要な『完全な自動運転』を実現するための技術的な要素は揃ってくると思われます。そこから、自動運転カーに対する安全性の認知拡大、法整備といった社会的な土壌が整い、安全の最終的な確認も機械に任せる段階に至るには最低でも10年はかかるでしょう。よって、順調にいけば2030年頃には完全な自動化が実現すると予測されます」

Q4 自動運転中はハンドルから手を放しても大丈夫?
A4 基本的には手放しでOK
「基本的には、人間が常時ハンドルを握らなくても済むようになります。たとえば、トヨタの実験車両では、アクセル、ブレーキ操作に加えて、ハンドル操作の自動化にも成功していて、2013年に行われたデモ走行では首都高速道路で手放し走行して同乗した報道関係者を驚かせました。ただ、どんなに技術が進んでも最終的に判断するのは人間。人間がハンドルを動かせば、その操作が優先される仕組みは今後も変わらないでしょう」

Q5 死角に歩行者がいた場合はどうなるの?
A5 車体のセンサーや道路上のカメラでキャッチ
「基本的には車体に搭載したカメラやセンサーで周囲の歩行者や自動車を認識しますが、完全な死角に入ってしまうとキャッチできない可能性はあります。そのため、道路側にカメラを取り付けるなどのインフラ整備も検討されています」

Q6 自動運転カーの普及で事故は減る?
A6 9割の事故を減らせる可能性がある
「かなり減ると予測されます。たとえば物陰から急に歩行者が飛び出してきた場合、人間のドライバーがそれを認識し、反応するには最短でも0.6秒かかるといわれています。しかし、機械ならその3分の1~半分のスピードで対応することができる。実際、各社が自動で方向転換して衝突を避けるシステムを開発中です。また、交通事故の9割は人間の認知・判断・操作のミスが原因といわれていますので、そうした人為的なミスがなくなれば9割の事故を減らせる可能性があります」

Q7 信号や標識は認識できるの?
A7 標識だけでなく周辺環境も認識し、状況に応じた自動運転が可能に
「標識を認識する技術自体はすでに確立されていて、法定速度を超えると警告が出るシステムなどが実用化されています。将来的には近くに小学校がある場合に車が自動的にスピードを落としたり、幼稚園のスクールバスを認識して徐行運転したりといったレベルにまで達すると思われます。今後十数年かけて、様々な道路環境を人工知能が認識していくことで、車自体が人間と同等、あるいはそれ以上の状況判断を下せるようになるのではないでしょうか」

Q8 前の車の追い越しや、車線変更することはできる?
A8 可能。まずは高速道路から実用化
「まずは高速道路から、自動運転による追い越しや車線変更の技術が導入される予定です。2013年に日産が発表した実験車両では、『走行車線を走行中、前に遅い車がいた場合は周囲の安全を確認しながら追い越し車線に車線変更し、追い越しが完了したら再び走行車線に戻る機能』が搭載されています」

Q9 故障やハッキングによる事故への対策は?
A9 複数のコンピューターによる制御で、不具合をカバー
「たとえ一つのシステムが不具合に陥っても、それをカバーできる別のシステムを用意して安全性を確保する技術が検討されています。たとえば、タイヤの動きを3台のコンピューターで制御し、たとえ1台が故障しても残りの2台で機能を維持する仕組みです。また、ハッキングに対しては、外部からの異常な信号を遮断する装置や、コンピューターの重要情報の暗号化といった技術の開発が進んでいます」

Q10 自動運転中に起きた事故。責任を負うのは人間? それともクルマ?
A10 現段階では人間の責任は免れない
「たとえ自動運転の技術が完全に確立されたとしても、事故の際の責任問題はケースバイケースとしかいえません。そもそも現在の法律では原則としてドライバーが運転することを求めていて、完全な自動運転を認めていません。これから公道上での実走実験を積み重ね、『本当に事故が減るのか』を検証していく中で、少しずつ完全な自動運転を受け入れる雰囲気が社会的に醸成されていくものと考えられます」

もし完全な自動運転が実現すれば、交通事故や渋滞が激減するだけでなく、無人タクシーや物流を担う無人トラックが登場する可能性も高いという。鶴原さんいわく、それは「社会を激変させる破壊的イノベーション」。未来への扉が、間もなく開こうとしている。
(榎並紀行/やじろべえ)

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