50万円で宇宙に行きた~い!

第2回 若田さんと同じ宇宙訓練に挑戦!

2009.04.14 TUE

50万円で宇宙に行きた~い!


NASAジョンソン宇宙センターでISS運動機器を操作中の若田光一宇宙飛行士。宇宙では筋肉が衰えるので、毎日2時間は運動や筋肉トレーニングを行う。NASA

宇宙飛行士訓練は大人のクラブ活動!?



軍資金50万円で宇宙を目指す僕。NASAの宇宙飛行士になっちゃえば、わざわざ50万円払わなくても、お給料をもらって宇宙に行けちゃうことに気づきました。
あの~、なんかやる気はあるみたいなんで、僕を宇宙飛行士にしてみませんか?
「宇宙飛行士になるにはISSのシステムなどを理解するための理工学系の知識、加えてISSの公用語が英語なのでネイティブ並みの語学力は最低限必要になってきます」と、宇宙航空研究開発機構(JAXA)つくば宇宙センターのトレーナー山口孝夫さん。むぅ。モビルスーツの知識とネイティブな方言ならなんとか。

でも、やっぱり宇宙飛行士って、それはもう過酷で残酷で非人道的な人体実験的な訓練を強要されるんですよね?

「そんなことはありません(笑)。確かに過酷なものもありますが、なにより訓練の意図は、宇宙で行う様々な作業を事前にシミュレートして覚え込むことにあるんですよ」

なるほど。
そういうことなら希望が湧いてきた。
水泳やランニングなどの基礎体力訓練に加えて、宇宙で任務を遂行するためのロボットアームの使い方、災害や有毒ガスが発生した場合の対処法まで、宇宙で行う動作を徹底的に模擬訓練するのだとか。加えて。

「ISS内では、例えば水は水玉になって飛び散ってしまうので、体を洗うときはシャワーを使わず、ウェットティッシュなどで体をふきます。トイレは小さい方なら専用のホースを使って吸い取りますし、大きい方なら隙間を作らないように便座のきっちり中央に、お尻で蓋をするように座らなくてはいけません。無重力の宇宙ステーション内では生活様式も地上とは様々な面で異なるんです。こういったミッション以外のこともすべて事前に訓練します」

なんと、トイレ訓練まで行う徹底ぶり。
ところで、訓練期間ってどれくらいあるんでしょう?

「ISSに滞在する宇宙飛行士の場合、候補者に選ばれたら、工学や宇宙機の知識、宇宙実験に必要な科学知識、ISSのシステムや運用の概要、さらに英語やロシア語などの語学訓練、水泳やスキューバなどと、全部で約230科目、1600時間におよぶ基礎訓練を各自の国で行います。宇宙飛行士に認定されたら、本格的なシステム運用訓練やISSでのシステム操作訓練などを行い、具体的な宇宙飛行が決まるとその内容に応じた訓練が行われます」

少なく見積もっても5年ぐらいは訓練か長いなぁ~。

「若田宇宙飛行士の場合、世界15カ国が参加するISSに長期滞在するので、チームで約2年のトレーニング期間がありました。その間に日本やアメリカをはじめ、ロシア、ヨーロッパ、オーストラリアなど世界各国をまわって現地でトレーニングを行います。日本ではISSの有人宇宙実験施設『きぼう』の1/1スケールのモックアップ(模型)で訓練を行いました」

ISSではカナダ製のロボットアームを操作したり、ロシア製ロケットに乗ることもあり、それぞれの仕様に合った訓練のため、それこそ世界各国をまわる必要があるのだ。ところで、若田宇宙飛行士の訓練時のご様子は?

「彼は宇宙に行くのも3回目なので、きぼうのシステムのことはすべて理解しています。作業の段取りもミスをすることがない。ほかの宇宙飛行士に教えてあげるぐらいで、頼りになる兄貴といった感じです」

ベテランの超兄貴か。

「ただ、宇宙飛行士は1人では任務を遂行できません。いちばん重要なのはチームで能力を発揮できるかどうか。だから、個別のスキル以上に仲間とのコミュニケーション能力が必要になります。NASAではチームワークを養うために 屋外NOL(National Outdoor Leadership School)訓練というものを行います。これは、6~7人程度の宇宙飛行士と2人の教官のチームで、約10日間のサバイバル訓練を雪山などで行うもの。メンバーが体調を崩したときは、リーダーはこのまま任務を遂行すべきかどうかの判断を問われます。極限状態の環境にチームで挑むことで、各自の自己管理能力やリーダーシップ、協調性などを見極め、チームワークを高めていくのです」

さらにNASAでは同様の目的で、海底研究施設「アクエリアス」での訓練や海上カヌー訓練などが行われるのだとか。

「宇宙で何か起こったら一蓮托生、だからこそチームの信頼感が大切です。彼らは2年間ずっと一緒に訓練するなかで、お互いを信頼していくわけです。若田宇宙飛行士は、昔から自分ひとりでは飛んでいないという自覚が強く、自分の役割を確実に遂行するだけでなく、周りが気持ちよく働けるように気を遣う。宇宙飛行士にはそういったコミュニケーション能力の高さが必要なんです」

なるほど。宇宙飛行士訓練って1人ひとりがストイックに訓練するというより、
みんなで強化合宿をしている感覚に近いのね。
もしかしたら、世界一夢のあるクラブ活動みたいなもの?
そういうことなら、こんな僕でも可能性アリ?
そんなわけで、後半ではさっそく宇宙飛行士訓練に
チャレンジしてみることにしました。
知力・体力・精神力、おおむね平均以下ですけど、まぁなんとかなるっしょ!
こちらは「きぼう」の船外プラットフォームの模型を使った模擬訓練。別室の管制官からの指示でカバーを外して透明のパネルを取り付ける。地上でやるから楽勝だが無重力の宇宙では簡単にいかない。

主役は宇宙飛行士だけじゃない裏方が宇宙開発を支えている!



ロボットアームの使い方からトイレの方法まで、ありとあらゆる宇宙での作業を模擬訓練する宇宙飛行士訓練。なによりも重要な訓練は宇宙飛行士同士のチームワークを養うことらしい。ということで、今年の2月から「筑波宇宙センター」で一般向けに始まった宇宙飛行士の模擬訓練にチャレンジしてみました。

まずは「きぼう」と同じ大きさの訓練棟で「閉鎖環境適応模擬訓練」に挑戦。こちらは、国際宇宙ステーション(ISS)の閉鎖状態をイメージした施設で、2月に決定した2人の日本人宇宙飛行士候補者の選抜試験にも使われたらしい。選抜試験では10人がこの部屋に1週間(!)閉じ込められ、モニターされながら様々な作業を課せられたのだとか。プライバシーなし!? とか言ってる場合ではない。今は文句よりも宇宙飛行士になることが先決だ。模擬訓練で閉じこめられるのは20分ほど。体験者は宇宙飛行士と管制官にチーム分けされ、宇宙チームの飛行士僕は別室にいる管制管チームの指示通りに簡単な絵を描くことになった。こちらの動きはモニターで監視されている。ココでの活躍次第では宇宙飛行士になる夢がぐっと近づく可能性があるやもしれぬ。ぐふふふ。

「宇宙飛行士フジイ、中央に赤い丸を描いてください」
「了解(丸を描く)。完了!」
「宇宙飛行士フジイ。赤い丸の横に三角を描いてください」
「えーと、左右どっち? 大きさは? あ~もう、もっと具体的に表現してほしいんスけど!(怒)」

あれ? 感じ悪かったかな?

「管制管の役割は自分で内容を理解して的確に伝えることです。宇宙飛行士はそれをしっかりと聞いて内容を理解して任務を遂行する。ここでは相互のコミュニケーション能力が試されています。お互いのやりとりの反応も試されているので、イライラするなんてもってのほかですよ」。と、宇宙飛行士模擬訓練を運営する会社「エイ・イー・エス」の布田武士さん。
なるほど反省します。

ここではほかにも、柄も絵もないホワイトパズルを作成。これも実際の選抜試験にも使われたパズルの簡易バージョンだが、短い時間で完成を要求されるなど、ストレス状況に対してどんな反応を示すのかなどもチェックされるのだ。

続いて、「きぼう」の船外プラットフォームの1/1モックアップ(模型)を使った「船外活動模擬訓練」にチャレンジ。本当の訓練では模型をプールに沈めて宇宙服を着て行われるんだとか。
この模擬訓練では、宇宙飛行士とサポートカメラマンの作業チーム、さらに指揮者や確認係、時計係、記録係などの管制官チームに分けられた。1階の宇宙飛行士の映像はサポートカメラマンによって2階の管制官に送られる。

着ぐるみチックな宇宙服を着て、イヤホンマイクを付けて準備OK!
管制官の指示をもとに断熱カバーを外して透明のパネルを取り付けるんだけど、あ~もう! ヘルメットのせいで上下の視野は狭いし、厚手のグローブは相当作業しづらい。言うなればスキーウェアを3枚ぐらい着ている感じなのだ。

「この模擬訓練は実際の作業内容よりも、宇宙服がいかに作業しづらいか、宇宙飛行士と管制官(地球)の役割を理解してもらうためのものです。さっきも言いましたけど、イライラするなんてもってのほかです」

あ、いや、全然イライラしてないですから!
楽~しーな~! あははは!

その後、宇宙ローバー(無人探査車)に見立てたラジコンを2人1組で遠隔操作。月や火星など地球から遠く離れた惑星では、カメラを頼りに宇宙ローバーを地球から遠隔操作して地形探査を行う。今回の模擬体験では僕がモニター上の矢印で別室にあるラジコンを操作し、隣で相棒がラジコンに搭載したCCDカメラの方向を操作する。
操作は矢印を押すだけで超簡単! のはずなのに、映像を頼りに運転するから、車幅が分からず思ったより難しい。しかも操作に集中しすぎるとカメラの方角を忘れて位置を見失う。カメラ係とのチームワークも大切だ。

最後は宇宙ステーション内で空気漏れが発生したことを想定し、制限時間内にバルブやボルトの交換や修理を行う「緊急対処模擬訓練」を行い体験は終了! さあ外の空気を思う存分吸うのだ。

シミュレーションとはいえ、正直、閉鎖的な空間にずっといるのはやっぱりツラい。宇宙飛行士って相当ストレス溜まるかも。JAXAの山口孝夫さんの話によると、宇宙飛行士はストレスが溜まると地球の管制官にやつ当たりする傾向があるそうだ。1970年代、NASAのスカイラブ計画時代には、長期間の宇宙滞在にフラストレーションが溜まった宇宙飛行士が、地球との交信を絶った事件もあったとか。

これから先、月よりも遠い火星を目指すなら、到着まで約18カ月はかかるといわれている。その間はずっと閉鎖的な宇宙船から出られない。とすれば、今後は宇宙飛行士の選抜や訓練には閉鎖環境への耐性がさらに重要視されるかも。

ロケットやISS内での閉鎖環境、無重力の違和感、
文化や国籍の違う仲間との様々なコミュニケーション。
いやはや、宇宙って大変だ。
そして、僕らは普段、宇宙飛行士ばかりに注目しがちだけど、
サポート係や任務の指示を出す地球の管制官など、
たくさんの裏方さんに支えられているんだなぁと実感。
ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン!
地上でも宇宙でも人はひとりでは生きられないんですなぁ。 宇宙飛行士訓練といっても、結局は「生身の人間同士」が行う作業。
スキル以前に、人間力がいちばん大切だと感じました。

ちなみにJAXAの山口孝夫さんに、
「宇宙飛行士にもっとも必要なものは」と聞いたところ。
意外にも、「最後は気力と体力」という回答が。
宇宙飛行士にはいくつもの関門が待ち構えているし、
挫折することや未知の分野に挑むこともある。
そこで心を折らずにあきらめない姿勢がもっとも必要だと。

段差もないのに転んでばかりの毎日ですが、
僕も宇宙飛行士に学んで、前向きに。
まずは早起きから頑張ります。

これからも宇宙の不思議にドンドン切り込んでいくので、
気になることや調べてほしいことがあったら、
お便りプリーズ! 
足を使って取材します。

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