半径3メートルの身近なデジタル

第3回 電池ってもっと便利にならないの?

2009.07.08 WED

半径3メートルの身近なデジタル


非接点式の充電器は「電磁誘導」の仕組みを利用している。「電磁誘導」とは、磁場を発生させ、空間を通して電力を送る技術。薄いコイルシートを机などに組み込めば、机の上に携帯電話を置くだけで充電することができる

携帯電話は進化しているのに 携帯の電池が進化してないって本当?



携帯電話を多用する生活に慣れてしまうと、電池が切れてしまったときのショックは大きい。電池残量を確認すると残り2本なので「大丈夫かな」と思って充電せずに外出すると、意外と減りが早くて電池が切れてしまった。そんな経験がある人も多いはず。

実は、電池残量表示が2本のときには、すでにバッテリ残量は30~40%と半分以下の場合が多い。イメージ的には2/3というと、7割くらいは残っている感じがするので、そのギャップが「電池残量表示が2本になると、そこからの減りが意外と早い」につながっているのだろう。

携帯電話で使われている電池は「リチウムイオン電池」。これはノートパソコンを初めとする多くのデジタル・グッズでも使用されているのだが、ノートパソコンでは残り○%と細かく表示される。この違いはなんなんだと思っていると、ドコモが発表した2009年夏モデルの携帯電話は、電池残量表示が3段階から5段階へと細分化されたとのこと。なんだ、しっかり進化してるじゃないの。

しかし、これは電池自体の進化なのだろうか? むしろ、携帯電話の技術自体の進化なのでは? NTTドコモ 移動機開発部 技術推進担当部長・竹野和彦さんに詳しい話を聞いてみた。

「確かに、電池自体が劇的に進化したというより、技術的に細かく残量を表示できる性能を持ったICチップのコストが下がってきて、携帯電話に搭載できるようになったことが大きいですね。

アイコンは5段階表示で、5本は100~80% 4本は80~60% 3本は60~40% 2本は40~20% 1本は20%以下ということになります。若干の誤差はありますが、3本表示に比べるとかなり精度は上がりました。また、専用アプリを使用すればノートパソコンのように、パーセンテージ表示で細かく残量を確認することができます」

竹野さんがいうように電池自体は、連続通話時間だけを見ても10年前の120分前後からほとんど進化していないことがわかる。機能の劇的な進化や通信速度の進化に比べると、なんだか物足りないような。

「基地局と携帯電話間で電波通信するときに使うエネルギーは決まっているので、極端な省電力化はできないんですよ。もちろん、省電力化にも取り組んでいますが、進化の方向としては、通信速度を上げる方向なんです」

そういわれれば、3G携帯の通信速度は7.2Mbps。10年前の9.6kbpsとは比べものにならない進化だ。それでは、電池の進化は置いてけぼり状態なのか?

「現状ではリチウム電池を進化させていく方向です。現在のリチウムイオン電池は、正極がリチウム化合物で、負極に炭素を使っています。研究が進んで実用化も始まっている新しいタイプは、負極を炭素からシリコンと炭素の化合物に変えた、一歩進化したリチウムイオン電池です。現状の1.5倍程度まで使用時間を延ばせるといわれていますが、携帯電話への採用 採用は2~3年先の話だと思いますね。

もうひとつは充電方法の進化。現在、最も実現が近いのは非接点式の充電です。これはACアダプターを使わずに、充電器に載せるだけで充電ができるというもの。電気シェーバーや電動歯ブラシなどでは実用化されています。

非接触はプレートだけでコネクターなどがないので、インフラとしても普及しやすいと思います。そうすると、充電をこまめにできるようになるので、電池容量の問題も今ほど気にならなくなるのではないでしょうか」

ちなみに、電池が持たないのは電池が劣化している可能性もあるとか。一般的にリチウムイオン電池は500回充放電すると寿命だといわれており、携帯電話だと2年前後が目安だとか。電池の持ちをよくして、携帯電話の使い勝手をよくするには、寿命が来たリチウムイオン電池を交換するのが一番。

「ドコモでは電池パック安心サポートとして、プレミアムクラブ会員で、同一のFOMAを2年以上お使いの方には、電池パックまたはFOMA補助充電アダプタ01を無料で、1年以上お使いの方にはプレミアムクラブのステージに応じたポイントとの交換で提供しています」(NTTドコモ 広報部)

auやソフトバンクも月額有料の保証サービス内で、同じような電池保証を行っているので、あまりに電池が持たない人は、一度利用してみるといいかも。

携帯電話の次世代を担う電池として燃料電池などのワードをよく耳にする。ただし、研究は進んでいるが、実用化はまだまだ先の話。当分はリチウムイオン電池に頑張ってもらわなくてはいけないようだ。
販売数は電池全体の3割程度の二次電池だが、売り上げ金額では8割以上を占めている。とはいえ、リチウムイオン電池は販売数も右肩上がり。今後、電気自動車の普及などにともなって、さらに販売数、売り上げ数ともに増加していくと考えられる

ちまたでよく聞くリチウムイオン電池 いったい何がスゴイんですか?



電池といえば、赤くて円柱形のマンガン電池を思い浮かべる35歳・独身の筆者。小学生時代、電池といえばマンガン電池のことだった。しかし、いまやマンガン電池はむしろマイナーな存在。

『2008年 電池の総生産(経産省機械統計)』によると、全電池に占めるマンガン電池の売り上げ数量は4%以下、売り上げ金額にいたっては1%以下なのだとか。

そもそもマンガン電池に限らず、一次電池(使い切りの電池)自体の売り上げが年々下がってきている。

1999年の売り上げ2020億円に対して、2008年では1332億円。一方で売り上げを伸ばしているのが、二次電池(充電をして繰り返し使える電池)。1995年時点では6080億円だった売り上げは、2008年には7410億円に達している。

確かに、最近では携帯電話やデジタルオーディオプレーヤー、デジタルカメラなど充電する電池を使う機器類が多い。それどころか、単3や単4の電池も充電可能なものがある。充電できる電池といっても、いくつか種類がありそうだ。そこで、詳しい話を電池工業会の西濱秀樹さんに聞いた。

「家庭で使う小形二次電池にはニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池があります。

ニカド電池は、電話の子機や電動工具などに使われています。ニッケル水素電池はニカド電池と同じ1.2Vの電圧なのですが、ニカド電池に比べて、約2倍の容量を持っています。単1~単4形があり、乾電池の代わりに使うこともできます。リチウムイオン電池は電圧が3.7Vと高く、軽くて小さくても大容量であるのが特徴です」

小形二次電池の中でも、総数、総額ともに伸びているのがリチウムイオン電池。1991年に登場して以来、携帯電話やノートパソコンの伸びとともに右肩上がりで販売個数を伸ばし、2008年には12億6000万個を販売した。現在では、電池の総売り上げの46%を占める、電池界のモンスタープレーヤーなのだ。

リチウムイオン電池のメリットは、軽くて小さいのに大容量というだけではない。放っておくと自然に容量低下する自己放電も少なく、ニカド電池等の弱点でもあるメモリー効果(電気を完全に使い切る前に継ぎ足し充電ををすると電気容量が低下する減少)もない。また、繰り返しできる充放電回数も向上している。

いっそのこと、乾電池も含めて、電池はすべてリチウムイオン電池にしちゃえばいいのに。

「電池は多くの種類がありますが、万能な電池はありません。たとえば1~2年に1度取り替えればいい掛け時計の電池は、安くてどこでも売っているマンガン乾電池で十分です。リチウムイオン電池を2年に1回充電して使うのは、かえって不便で不経済です。またリチウムイオン電池は、使用する機器ごとに専用の部品として扱われており、使用する機器に制御回路と共に組み込まれているという理由もあります」

確かに、乾電池のように汎用的に使うリチウムイオン電池は見たことがない。携帯電話にしろ、パソコンにしろ、デジタルカメラにしろ、すべて専用のリチウムイオン電池が使われているのには、そんな理由があったのだ。また、リチウムイオン電池は、素材にレアメタルやカーボンナノチューブなどを利用しており、コスト自体が高いのも、軽々しく使えない理由の一つ。

それでは、すべての電池をリチウムイオン電池にするのは無理でも、使いきりの一次電池を充電して繰り返し使える二次電池にすることはできるのでは? 経済的にもエコ的にも二次電池の方がいいような気がするし。

「二次電池は一次電池に比べると値段が高いので、掛け時計やリモコンなどの電力をあまりつかわずに長期間電池交換が必要ない機器だと、値段が安いマンガン電池を使う方が向いています。逆に、デジカメや携帯オーディオプレーヤーなどは消費電力が大きく、マンガン電池やアルカリ電池だと比較的すぐに電池が切れてしまいます。そういった機器では頻繁に電池交換する必要があるので、繰り返し充電できる二次電池の方がオススメですね。電池は性能や特長によって相性のいい機器があるので、単純に一次電池が必要ないとはいいきれません。適材適所ですね」

たくさんの形や種類がある電池。一見、マンガン電池よりもスペックが高いリチウムイオン電池の方が、使い勝手もよくて機器類の性能も引き出せるような気もするけれど、機器類との相性によってはマンガン電池を使った方が適切なこともある。スペックが低いから使えないわけじゃないなんて、なんだか人生訓にもつながるような。 電池を取材するにあたって真っ先に思いついたのが、水素と酸素の化学反応で電気を発生させる燃料電池と太陽の光エネルギーを電気に変換する太陽電池。

両方とも、現在の電池とは仕組みが異なり、電力発生装置に近いのだが、次世代の担い手として、今最も注目を浴びている分野のひとつだ。

まだまだ『半径3m以内』には入っていなさそうなので、今回は詳しく触れなかったが、燃料電池と太陽電池は実用段階に入ってきている。2015年ごろには、半径3m以内に入り込んできているだろう。

これらの技術は世界中でも日本が最先端を走っている。ちなみに、乾電池の発明者も屋井先蔵という日本人。これからの電池の進化が楽しみだ

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