半径3メートルの身近なデジタル

第5回 電動自転車の限界に挑戦してみた

2009.08.05 WED

半径3メートルの身近なデジタル


「PAS Brace-L」はスポーティーな外観と長距離走行を両立した最新モデル。1回の充電で最大118kmの走行が可能(標準・オートエコモードプラスON時)

人力だけの3倍のパワー!?電動アシスト自転車のスゴイ進化



最近、電動アシスト自転車を取り上げているモノ系雑誌やニュースなどをよく目にする。

実は道路交通法の改正により、2008年12月1日から電動アシスト自転車のアシスト比率が緩和され、これまで以上に漕ぐ力を補助してくれるようになったのだ。

これによって、各社から新モデルが続々とリリースされている。進化して乗り心地もよくなったとのことだが。

新しもの好きの筆者は、電動アシスト自転車が出始めたころに積極的に利用したことがあった。

当時の電動アシスト自転車は、航続距離は短い、デザインはThe・ママチャリ、そしてなにより、肝心のアシスト効果がうまく作動していなかった。いきなりモーターが作動したりして、走っていてかなりのストレスを感じた記憶がある。

それ以来敬遠していた電動アシスト自転車、いったどう進化したのだろうか。

ということで、1993年に世界初の電動アシスト自転車「ヤマハ パス」を発売したヤマハ発動機にお邪魔させてもらった。

「昔の電動アシスト自転車って、すごく乗り心地が悪かったんですけれど、今はどれくらい進化してるんですか」という失礼な質問に答えてくれたのは、広報部の北川さん。

「最も進化したのはアシスト力です。これまでモーターと人力の割合は最大1:1でしたが、2008年12月の道路交通法改正によって、最大で人力1に対してモーター2の出力が認められたんです。これによって、踏みだしの瞬間や低速時、急坂などがかなり楽になりましたね。街乗りなどで子どもを乗せていても、ふらつきが少なくなると思いますよ」

例えば、人力で20km/hを出したら、モーターが40km/hアシストしてくれて、結果60km/h出るということですか?

「そういうことではありません。正確にいえば、10km/hまでは人力1に対してモーター2の出力でアシストします。それ以降は徐々にアシスト量が減少して、24km/hを超えるとアシストはなくなります。電動アシストは、速いスピードを出すことを目的としているわけではありませんから」

確かに60km/hだと原付バイクよりも速くなってしまう。それだと危険極まりない。

「他にも、初期の電動アシスト自転車は鉛蓄電池やニカド電池といった二次電池を使用していたのですが、それがより高性能なニカド電池やリチウムイオン電池を採用することで、航続距離も伸びました」

さらに、踏む力やスピードなど、アシストする(モーターが作動する)条件を以前よりも細かく制御できるようになり、効率的な走行ができるようになったことも、走行距離が伸びた一因だとか。ヤマハ・パスシリーズの最新型には「オートエコモードプラス」という走行モードが搭載され、速度や踏む力を考慮し自動で最適のアシストしてくれるのだ。

「もう一つ、大きく進化した部分に乗り心地があります。電動アシスト自転車はペダルを踏む力をトルクセンサーが、速度をスピードセンサーが感知します。その情報はコンピューターを内蔵したコントローラーへと送られて必要なモーター回転数が解析されます。このモーター回転数の多少によってアシスト力が決まるんです。この間、わずか約1/100秒程度。違和感なくスムーズにアシストしてくれます」

自転車とは思えないハイテクっぷりですね。

「スムーズなアシストにはもうひとつ理由があります。自転車は、急に漕ぐ力を緩めたり、加速したりするものです。そのときに、どの程度モーターが力を出せばいいのかは、データベースが重要なで、過去に培ったデータパターンを参考にしながら、ペダルの踏み方に対する最適なモーターの力を導き出します。ヤマハは1993年から電動アシスト自転車に取り組んでいて、そのパターンを蓄積してきたので、初期の電動アシスト自転車に比べると、アシストが自然に行われて乗り心地が改善されています」

トルクセンサーにスピードセンサー、そしてデータを解析するコンピューター内蔵のコントローラーとリチウムイオン電池。もはや電動自転車は立派なデジタルアイテムだ。

おまけに、最近ではラインナップも豊富になっていて、ママチャリタイプ以外にも、折りたたみできるシティサイクルタイプや、フロントサスペンションがついたMTBタイプなどデザインも豊富。自転車ブームに乗っかって、通勤に使ってみるのもいいかもしれないぞ。
出発前の日本橋にて。左がヤマハ「PAS Brace-L」。雨が心配だったが、メカ部にはヤマハがバイク技術で培った防塵、防滴技術を活かしてあるので、水没でもしない限りは問題ないそうだ。心強いぞ。当初は茅ヶ崎あたりで電池がきれるんじゃないかと予想をしていた

ヒト×モーターのハイブリッドで箱根の峠は越えられるか?



夏本番を迎えた7月下旬。R25.jp編集部からある提案が。『電動自転車でどこまで行けるか、体を張って試してみませんか』。国道1号を日本橋からひたすら南下し、どこまで行けるかを記事にしようというのだ。

電動アシスト自転車は、2008年12月の道路交通法改正でより強いアシスト力が認められるようになり、各社からそれに対応した新型が発売されている。電池や回路の進化で走行距離も伸びているという。今回のテストに使用した「ヤマハ PAS Brace-L」は1回の充電で最大118km走ることができる。

今回は、一人で100km以上も走るのは無理、との弱気な判断から後輩に助っ人を頼み交代で走ることにした。サポートカーとしてワゴン車を用意し、ドライバーとして担当デスクが乗車。また、ペース配分や走行中のアシストを考えて、80万円ものロードタイプ自転車に乗る本物のチャリストに伴走をしてもらうことに。まるで24時間マラソンばりの準備を整えて箱根に挑むことになった。

まだ涼しい早朝5時に日本橋をスタート。まずは後輩がペダルを漕ぐ。10kmごとに休憩をとって走者を交代する作戦だ。しかし、後輩がなかなかバテない。気付くと、多摩川を越えて川崎市、そして開港150年で盛り上がっている横浜市に到着。約30kmの道のりを2時間弱で走りきった。しかも、電池残量を示す目盛りは1つも減っておらず、4つのまま。今回は「オートエコモード プラス」という電池消費を抑えるモードで走っているのが功を奏しているようだ。

「まだ行ける?」と尋ねると「大丈夫です」と頼もしい返事。信号で止まってもスタート時にアシストが働くので、あまり力を使わなくて済み疲れないのだとか。引き続き後輩がライディングすることに。40km地点で電池残量ランプが1つ消灯。残り4分の3。単純計算だと、あと120km走れるってことか。これなら箱根を越えちゃうんじゃないの?

徐々にペースは落ちていったもののお昼前には湘南を通過し、12時30分ごろには小田原市内へ到達。84km地点で電池の目盛りがさらに1つ減り、残り2つに。1目盛り40kmと考えるとあと80kmも走れる計算だ。国道1号は箱根まで急な坂がないのも、電池残量があまり減らない要因かもしれない。
今回多用した「オートエコモードプラス」とは発進、加速、登坂、向かい風走行などペダルを強く踏み込んでいる間はアシスト力が働くが、負荷が小さくなるとアシストを自動的にカット。負荷を感知してアシストのオン/オフをなめらかに行い、電力を節約する仕組み
小田原城の近くで休憩時『こりゃ、後輩だけで箱根を越えられるな』とゆったり構えていたら、担当デスクが鬼の一言。「箱根の峠は林田さんが登っときましょうよ」。仕方がない、ここは男気を見せとくか。

電動アシスト自転車にまたがると、気分はツール・ド・箱根。初体験の「PAS Brace-L」は非常に快適だ。なによりアシストが自然で、自分の脚力がアップしたかのような錯覚に陥る。これだけ自然なアシストだと、ゆっくり走ってもまったくバランスを崩さない。

箱根口を越えたあたりから坂道が始まったが、まだまだ余裕で箱根湯本駅に到着。この先にひかえる高低差800mの天下の険もこのペースなら。あれ、ちょっときつくなってきたぞ。やはり、電池の持ちを重視したオートエコプラスモードでは箱根の峠は厳しいか。ここは最も強力なアシスト力を得られるhighモードで乗り切るか。

モードを変えた瞬間、それまでつらかった坂がまるで下り坂のような感覚になり、ぐいぐい進む。しかも裏技を発見。漕ぎ出しのときが最もアシストされる特性を生かして、3回漕いだら惰性で進んで、また3回漕ぐ。これをやると、かなり急な坂でもラクラク上れてしまうのだ。

しかし、裏技の代償は大きかった。あれだけ余裕を持っていた電池残量が激減。気付いたら3つめが消え、最後の1つが点滅してるじゃないか。なんだか、親の遺産を食いつぶしたバカ息子の気分だなどと思っていると、急にペダルが重くなった。重くなったというより、動かなくなった。ついに電池切れだ。箱根湯本から坂道を5km、都合15kmで電池を使い果たしてしまった。

この電動アシスト自転車、リチウムイオン電池やメカ部があるので総重量は23.4kg。電池が切れると、普通の自転車以上に体力を使う鉄の塊になる。重い自転車を押しながら(もはや乗って漕ぐのは無理!)箱根の坂をのぼる。頭の中ではサライが流れている。

結果『電動アシスト自転車で行けるところまでいったら』は、日本橋から箱根まで、距離にして101.9km走行できた。箱根峠ほどの坂がなければもっといけたハズと思うと少し悔しい。

とはいえ、素人でも自転車で東京から箱根まで来られるなんて、電動アシスト自転車恐るべし。うーん、本気で購入考えちゃうな。 健康意識やエコ意識の高まり、
そして経済状況などから見直されている自転車。

電動アシスト自転車もその追い風に乗って、
2000年から2008年までで売り上げが2倍に。
以前よりもスタイリッシュなモデルが充実したことで
通勤・通学に使う人も増えているとか。

ちなみに、日本橋から小田原まで走った後輩も、
箱根の坂を10km近くのぼった筆者も、
当日に疲れて動けなくなることもなく、
翌日も筋肉痛に悩まされることもありませんでした。

最後に、国道1号で箱根に向かおうと思っている方がいたら、
くれぐれも注意してください。
自転車では走れない自動車専用区間や、
交通量が多くて危険な場所もあります。
今回も、迂回の連続で大変でした。

電動アシスト自転車の乗り心地や
急坂をのぼった感想が知りたい方がいたら、
どしどし投稿してください!

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