生命保険はボクらを守ってくれるの?

第22回 保険に入らない選択ってどうなの?

2009.12.21 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

保険に入らない選択をしたその理由とは?



万が一の病気や事故…そんな将来のリスクを考えれば、当然入っておくべきだと思い込んでいた保険。でも、保険に詳しい人のなかには、保険に入っていない人もいるんだとか…。それって本当なんですか。

「保険についてそれなりに詳しい人のなかに、保険に入らない選択をしている人がいるというのは本当です。むしろ詳しいからこそ、保険に入らない選択ができるのかもしれませんね」と教えてくれたのは、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著書があり、生命保険の事情に詳しい後田亨さんです。

たとえば、税理士のAさん(35歳)は、「結婚はしているけれど、子どもができるまでは保険に入らない」と公言しているひとり。なぜ保険に入らないかというと、奥さんは商社の総合職としてバリバリ働いているし、もし自分に万が一のことがあっても、残された奥さんひとりで十分働いて食べていけるから、だそうです。

「考え方として、とても筋が通っていると思いますね。保険にできることは、なにかあったときにお金を支払ってくれること。つまり資金準備の1つの手段なんです。ですから、その分のお金を別の手段で調達できるのであれば、必ずしも保険に頼ることはないと言えます」(同)

個人で保険代理店を営んでいるBさん(33歳)が保険に入らない理由は、公的保険の保障だけでいまのところ十分だと考えているから。たとえば、国民年金の被保険者が死亡した場合、残された奥さんとお子さんには遺族年金というものが支払われます。子どもが2人いる場合は月に約10万円で、受給期間は子どもが18歳になるまで。サラリーマンが加入している厚生年金、公務員が加入している共済年金なら、受給額はさらに大きくなります。

「保険に詳しい人は、まず公的な保障でどの程度リスクをカバーできるのかをきちんと把握しています。遺族年金は死亡した場合の保障ですが、医療に関しても、高額療養費制度というものがあり、自己負担は一般的な年収の場合、上限月8万円程度で済みます。ある程度の貯金があるなら、年間数万円の保険料を支払うことになる民間の医療保険に入らないというのは、賢い選択といえるかもしれません」(同)
生命保険は万が一に備えて入るもの。経済的余裕があるなら、入らなくても構わない!?
保険は、死亡や病気などで保険金が支払われるだけ。万が一のことが起きたとき、それに対処できる貯金があるなら保険は不要というわけです。

また、情報誌編集者のCさん(25歳)が保険に入らない理由は、保険料に回すお金があったら、人生を豊かにするために使いたいからだそうです。Cさんは業界関係者と頻繁に飲みに行くそうですが、そうやって多彩で強固な人脈を作ることの方が、いまは大事だと考えています。

「これも一理ありますね。病気や死亡のリスクは否定しませんが、いまの時代、失業するリスクもある。まず普通に生きていくだけでお金がかかりますよね。そのためには、自分の市場価値を高めていくことも大切です。保険にかけるお金を自己投資に回し、収入を増やす努力をする。収入が増えれば、貯金もできる。そして貯金が増えれば、保険への依存度は下がるのです」(同)

なるほど、保険でカバーできるリスクは、人生のリスクの一部だけというわけですね。様々なリスクを想定していたつもりですが、保険でカバーできないリスクのことはあまり考えていませんでした。自己投資のためにも、月々支払う保険料は節約したいと思います。

保険に入る本当の意味ってなに?



妻も働いているので死亡時の保障は不要。入院で必要になる医療費は、公的な保障と貯金で十分。保険にお金をかけるくらいなら、人生を豊かにするために使いたい。保険に入らない理由は、人それぞれ。なかには確率論で保険に入らないと決めている人もいるそうです。

「厚生労働省による2005年の生命表によれば、35歳の人が60歳まで生存する確率は約92%。ただし、この数字にはそもそも保険に入れないような疾病にかかっている方も含まれています。死亡保険金の支払い実績を調べると、保険金が支払われる確率って実は1%未満なんですよ。ですから、『確率論から、高い保険料を払うのはあまりにも無駄が多い』と考える人がいても不思議ではありません」と語るのは、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者であり、生命保険の事情に詳しい後田亨さんです。

でも、将来の貯蓄のために保険に入る人もいるじゃないですか?

「なんとなく掛け捨ては損だから貯蓄性のある保険に入る、という方がいますが、それは間違いです。そもそも保険は、ほかの金融商品に比べて手数料が高いので、よほど金利が高くない限り、貯蓄には向かないんです。貯蓄と保障を兼ねるなどと言われると、お得な気がするかもしれませんが、別々に考えるべきものなんです」(同)

なんか典型的なダメなパターンにこちらから勝手にはまってしまったような…。

「確率論の話に戻ると、入院する可能性の方が高いからといって医療保険を重視しがちな方もいますが、こちらもオススメできません。確率が高いということは、それだけたくさんの人に保険金を支払わなくてはいけないということなので、万が一のときに大きな恩恵は受けにくくなります。つまり、保険会社に手数料を取られてまで保険を掛ける必然性が低くなるのです」(同)

そもそも保険なのに元を取ろうとする発想自体が問題なんですね。だとすると、保険に入る意味ってどう考えればいいのでしょうか?

「起こる確率が低いといってもゼロではなく、もしそれが起こってしまえば、本人や家族に取り返しのつかないダメージを与えるリスクに備える、というのが保険本来の考え方ではないでしょうか。つまり、『こんなことが起きたら人生設計が破綻してしまう』という事柄に限って、保険に入るという考え方です。そうすれば、必要な保障は決まってくるので、後はその保障を最も安い保険料で実現している保険を探せばいいのです」(同)

リスクそのものを恐れるのではなく、リカバリーできるかどうかで判断するということですね。
人生設計が破綻するレベルは人それぞれ。万が一を考えると、貯金の少ない人の方が、むしろ保険は必要という厳しい現実も…
「ただし、気を付けてほしいのは『人生設計が破綻してしまう』レベルというのは人それぞれだということです。貯金が十分にあれば、万が一のことが起こっても保険ナシでなんとかできるでしょうし、逆に貯金がなければ、ちょっとした病気や事故にも備えておく必要があります。どちらにしても、自分にとっての『人生設計が破綻するレベル』を見極めることが大切ですね」(同)

厳しい現実ですが、やはり“備えあれば憂いなし”ということなんですね。保険以外の備えも考えながら、コストパフォーマンスの高い保険選びをしたいと思います。 今回、保険に入っていない人の理由を聞き、“保険ありき”で考えていたときには気づかなかった発見がいくつかありました。

特に、死亡や病気のリスクだけでなく、失業のリスクへの備えも必要では…という話は、現実感がありすぎてドキドキしてしまいました。

保険以外の備えにもお金が回せるように、これからはコストパフォーマンスの高い保険を選びたいと思います。

次回は「共済って保険とどう違うの?」というテーマを取り上げます。

取材協力:後田亨氏

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