生命保険はボクらを守ってくれるの?

第23回 「共済」って保険とどう違うの?

2010.01.12 TUE

生命保険はボクらを守ってくれるの?

「共済」のシステムってどうなっているの?



保険料が安い保険をネットで探していると、ときどき出てくる“共済”というキーワード。どうも保険会社が扱う保険とは違うようだけど、「入院(1日あたり)5000円」「死亡400万円」など、その内容は保険そのもの。お得なものならぜひ検討したいけど、実態がわからないとちょっと怖い。ということで、『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者であり、生命保険の事情に詳しい後田亨さんに「共済」について聞いてみました。

「共済とは、正しくは共済組合という相互扶助団体のこと。または、共済組合が組合員向けに行っている福利厚生事業を指します。世の中には、職業や地域ごとに様々な共済組合が存在しますが、一般によく知られているのがJA共済、全労済、都道府県民共済、CO・OP共済の4つ。これらを四大共済といいます。都道府県民共済は都道府県ごとに運営されていて、たとえば、東京都の共済が『都民共済』ということになりますね」

ちなみに共済では、保険の「保険料」にあたるお金を「掛け金」、「保険金」にあたるお金を「共済金」と呼ぶんだとか。とはいえ、それって単に用語が違うだけで、実質的には保険と同じなんですよね?

「確かに共済の福利厚生事業は保険とよく似ています。生命保険のような死亡・医療保障もあれば、損害保険のような火災・自動車事故の保障もある。とはいえ、保険が契約者を広く募集しているのに対して、共済はあくまでその組合の組合員にのみ提供されるサービス。生協をイメージするとわかりやすいかもしれません。したがって、そのサービスを受けるためには、まず組合員になることが前提になります」(同)

ということは、たとえばJA共済に加入したい場合は、まず農協の組合員にならなければいけないってことですね?

「その通りです。共済はもともと、組合員同士が掛け金を出し合って互いに支え合うシステムですから。農家以外の人がJA共済に加入する場合は、その地域の農協に数千~数万円の出資金を払って、準組合員にならなければなりません。全労済、都道府県民共済、CO・OP共済の場合も利用の手順は同じ。組合員になるには、それぞれ100~5000円程度の出資金が必要になります。ただしJA共済の場合、集められた掛け金のうち2割までは『員外利用』が認められているので、枠が空いていれば、一般の人でも利用できる可能性はあります」(同)

そのほか、共済が保険と異なるのはどんなことですか?
集めた掛け金の余った分を組合員に返還する「割戻金」は、共済の精神がよく表れているところかも…。
「営業経費などを最低限に抑えているので、保障内容のわりに掛け金が安いという特徴があります。また、集めた掛け金は共済金の支払いと組合の事業費に使われますが、余った掛け金は年度ごとに『割戻金』として組合員に返還されます。都道府県民共済の場合、掛け金の3割程度が戻ってくるようです」(同)

掛け金が安い理由はそのあたりにあったんですね。

相互扶助の精神で支えられており、契約するには組合員になる必要がある「共済」ですが、たくさんの人からお金を集めて、万が一のことが起こった人に保障を提供するという仕組み自体は保険と同じなんですね。

共済のメリットとデメリットってどんなことなの?



「共済」とは、共済組合が相互扶助の精神で運営し、組合員から集めた掛け金で、死亡、入院などの不幸に見舞われた組合員に共済金を支払うシステム。加入するには、まず組合員になる必要があるけど、利益を追求していない分、保障内容のわりには掛け金が安いらしい。では、保障内容や掛け金は具体的にどんな感じなのでしょうか。『生命保険の「罠」』(講談社+α新書)などの著者であり、生命保険の事情に詳しい後田亨さんに聞いてみました。

「それでは、都道府県民共済の第1号である、埼玉県民共済を例に説明しましょう。埼玉県民共済には、『こども共済』『生命共済』『熟年型共済』『新型火災共済』の4つの共済商品がありますが、いわゆる生命保険に近いのが『生命共済』です。この『生命共済』には、月の掛け金が2000円のコースと4000円のコースがあり、埼玉県内に住居か職場のある15歳から59歳までの健康な人なら誰でも加入できます。加入者の死亡、後遺障害、入院、手術、通院を保障し、2000円のコースでは、交通事故死した場合に1000万円、病気死亡の場合に400万円、交通事故で入院した場合に1日5000円、病気入院の場合に1日4500円の共済金が支払われます。保障期間は1年ですが、60歳になるまで自動継続される仕組みです」

なるほど、交通事故に遭った場合の保障が手厚いんですね。

「というのも、埼玉県民共済が生まれたきっかけが、県内で増加傾向にあったバイク死亡事故だったからです。悲嘆に暮れている遺族を助けようと、亡くなった方の職場の仲間たちが立ち上がり、今日の埼玉県民共済の母体がつくられたそうなんです。それが1973年のことで、その後、地域でこうした共済組合をつくる試みが全国に広がっていきました。現在では全国39の都道府県に共済組合があり、加入者総数も1800万人にまで急増しています」(同)

都道府県民共済だけで加入者数1800万人もいるんですか。ところで保険会社の保険と比較した場合、共済のメリット、デメリットって何かありますか?

「メリットは、内容がシンプルで掛け金が安いことです。しかも、保障内容は何度も改定され、手厚いものになっているのに掛け金は据え置き! 掛け金が余ったら割戻金として加入者に返す仕組みも明快です。埼玉県民共済など、共済金の支払いも迅速で、可能な限り請求書が届いた当日に支払うそうです。大手保険会社をしのぐ加入者数になっているのは、こうしたメリットが口コミで広まったからかもしれませんね」(同)

逆に、共済のデメリットってありますか?

「やはり保障の絶対額が少ないことですね。少ない掛け金でより多くの人に保障を与えるのが共済のそもそもの発想ですから、保障額もそれなりです。都道府県民共済の場合、4000円コースでも病気死亡では800万円しか支払われません。しかも、ひとつの共済には一人一口しか入れないため、保障額を任意に増やすこともできません。また、15歳でも59歳でも掛け金の額は同じですから、リスクの低い若い世代の人に、負担を求める仕組みとも言えます。それでも単価は十分低いですけどね」(同)

なるほど、若い世代の払った掛け金は、結局おじさん世代への共済金にまわる可能性が高いってことですね。とはいえ、共済のシステムそのものはなかなか魅力的。ボクら若い世代が、共済と上手につきあっていく方法ってあるんでしょうか。
共済は使いやすいが保険に比べて保障額が少ない。そこで、希望の保障額に足りていない分を保険で補うという考え方もありかもしれません
「共済をベースに、死亡保障を保険でプラスするのもひとつの方法ではないでしょうか。その場合は、保険料が少なくて保障額の大きいコストパフォーマンスの高い保険を選びたいですね。より本格的な保障を得るには、やはり共済よりも保険ということになるかと思いますが、その際の保険選びは、今回の共済の話をヒントにしてみてはいかがでしょうか?」(同)

つまり、営業経費などをあまりかけていない保険会社で、シンプルな保障を選ぶというわけですね。共済に関する調査から、保険選びについてまたひとつ賢くなった気がします。 これまで名前だけしか知らなかった「共済」でしたが、都道府県民共済だけで1800万人も加入しているとは驚きました。

月々の掛け金は安く、死亡から入院まで保障してくれるのが「共済」の魅力。ただ、保障額が少ないので、本格的な保障が必要な場合はやはり“保険”ということになりそうです。このあたり、自分がどの程度の保障を必要としているかをキチンと把握しておく必要がありそうですね。

さて次回は、ライフネット生命・出口治明社長へのインタビューを掲載する予定です。「保険の原価」を開示するなど保険業界で話題の保険会社から見た、保険業界の問題点や今後の取り組みについて、いろいろ聞いてみようと思っています。ご期待ください。

取材協力:後田亨氏

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