火星移住も具体的に?

テラフォーミングの実現可能性は?

2015.02.03 TUE


キュリオシティから送られてきた火星の写真は、まるでアリゾナの砂漠のような風景。酸化鉄成分を多く含む赤い岩盤が共通しているのだとか。これなら、住めそうな感じもするけどな 写真提供:MSSS/JPL-Caltech/NASA/AP/アフロ
宝島社発行の『このマンガがすごい!2013』。今年度のオトコ編は、貴家悠原作・橘賢一作画の『テラフォーマーズ』が1位に選ばれた。舞台は26~27世紀。火星移住を目指す人類は21世紀後半、地表を温めるために、特殊なコケと、それを食べて育つゴキブリを火星に大量投入。火星のテラフォーミング(惑星の地球化計画)を開始する。しかし、それからわずか500年後、ゴキブリは彼の地で人型へと独自進化を遂げ、火星の支配者として君臨するように…。驚異的な身体能力を備えた“ゴキブリ人間”から火星を奪還するために、昆虫のDNAを移植した人類が戦いを挑む…。

なんともSF的な設定と思うかもしれないが、「火星を人類の生存に適した環境に変えてしまおう」というこの発想。決してフィクションの世界だけの話ではない。実は、受賞が決まったのと同じ頃、ネット上で盛り上がったもうひとつのニュースがあった。それが、アメリカの宇宙ベンチャー、スペースX社が発表した計画。なんと、今後15~20年で地球から火星に8万人を移住させ、火星で自給自足の生活を送り、子孫を残していくとのこと。また、オランダの企業家が立ち上げた民間プロジェクトチームは、2023年までに飛行士4人を火星に着陸させる「マーズ・ワン」という計画を発表している。

まさかとは思うけれど…本当に火星に移住できる日が来るのだろうか? 国立天文台で惑星科学を研究する佐々木晶教授に詳しい話を聞いた。

「火星にはオゾン層がありません。紫外線が直接降り注ぐ状況なので、地上で生物が活動するのは難しいでしょう。また、大気はほとんどが二酸化炭素で、気圧も約6hPaと極端に低い。風も強く、惑星規模の大嵐も発生します。地表面温度もマイナス120 ℃から0 ℃と過酷な環境。もしも人間が移住するならば、シェルターでの生活になるでしょう。たとえるなら、外に出られない南極の昭和基地といった感じでしょうか」

それでも、火星は自転周期がほぼ地球と同じで昼夜があり、太陽光を定期的に受けられる。また、地下深くには大量の氷も確認されている。水と光があれば光合成から酸素を作り出すこともできるし、昨今の野菜工場のように、限られたスペースで作物を作ることも可能だ。この状況は、他の惑星に比べると、断然環境がいいといえ、それが、火星への移住が取りざたされる理由のひとつなのだとか。

「まずは、人が火星に降りて調査をすることからでしょう。100年以内に実現すればいいと思いますね。現在は、無人の火星探査機“キュリオシティ”が着陸に成功しており、写真を撮影したり、掘削作業を行って地表成分を分析したりしています」

このキュリオシティは、1t近くある巨大モビリティ。実は、これだけの質量の着陸に成功したのには大きな意味があるという。

「キュリオシティの着陸により、理論上、火星に人をはじめとして、さまざまな機材を運べることが分かりました。極端な話、1週間程度過ごすだけならば、今の技術でも火星に行くことはできるんです」

行くことはできる…?。そういえば、冒頭の「マーズ・ワン」計画は、乗組員は地球に戻らない前提だったような。もしかして…、火星に行ったら帰ってこられないの?

「月に着陸したアポロ計画では、着陸船の上部を加速させて月から脱出しました。しかし、月の質量の10倍もある火星から脱出するには、相当な規模のロケットが必要です。ロケットや発射台を建設するためには、大量の資材を火星の同じ場所に送らなくてはいけません。また、ロケットに使用する大量の燃料も必要。これらをクリアするのは、現在の技術ではほぼ不可能といえます。だから、帰ってこられないんです」

とはいえ、「仮に人類が数十億年先まで生きていたら、太陽の巨大化によって、地球からの移住を真剣に考えなくいけないので、その時は、まず火星移住を目指すでしょう」と佐々木教授。んー、火星移住は夢のまた夢の話のようだ。
(コージー林田)

※この記事は2013年2月に取材・掲載した記事です

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