低価格で栄養価も高い!?

LED野菜「ビタミンC」3倍の謎

2015.04.07 TUE


写真は玉川大学Future Sci Tech Lab内の植物工場研究施設。水は循環させているので最低限で済み、LEDを用いて効率的な栽培ができる。このことから、砂漠やアフリカなどでの工場建設も考えられるとか。渡邊教授は「将来的な地球規模の食糧難に対して、ひとつの解決方法になればいい」と語る
一人暮らしの自炊男子にはつらい、昨今の野菜の価格高騰。落ち着いてきてはいるものの、昨年ごろは平年の2倍近い価格になっている野菜もあったとか。店頭には400円弱のリーフレタスが並ぶなか、200円前後で販売されているものがあった。名前は『夢菜(ゆめさい)』。玉川大学と西松建設の産学連携による野菜工場「Sci Tech Farm」で栽培されているLED野菜だ。

「価格を安く抑えることができる理由は、安定した生産体制にあります。特徴は3つ。1つ目は、太陽の代わりにLEDランプを使用する。2つ目は、広い土地が不必要で、害虫や病気の心配もない水耕栽培を行う。3つ目は、日本が得意とする自動生産システムを応用したオートメーション作業。これらを組み合わせることで、効率的に価格の安定したリーフレタスを栽培することができるようになりました」

こう教えてくれたのは、玉川大学農学部でLED野菜を研究する渡邊博之教授。しかし、効率化を求めすぎると、サイズや味が劣りそうな気も…。やっぱり、太陽の光をたっぷり浴びた野菜の方が栄養もありそうだし…。

「LEDで育てたリーフレタスは露地栽培と比べて、ビタミンCは3倍、ビタミンAは14倍、ビタミンEは6倍、抗酸化力は3倍という結果が出ています」

むむっ、でも、味はどうだろう? 実際に試食をしてみると、リーフレタス独特の青臭い苦みが少ない。それどころか、甘みが強くておいしい。

「栄養価の増加や味の変化に関係しているのが、様々な光を出せるLEDです。太陽の光は波長の長さによって、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7つの色に分けられます。露地栽培の野菜は、これら光を均等に浴びているのですが、本来野菜は、浴びる光の色によって性質が大きく変化するんです。例えば、リーフレタスは赤色の波長の光を浴びると、ブドウ糖やオリゴ糖が増えて甘みが増加します。そこで、LEDを使い、欲しい栄養価が増加する光を集中的に照射しているんです」

どの色の光をどの程度照射すれば、どういった効能が表れるのかは、野菜によって違う。この部分にノウハウが必要で、簡単に商品化することは難しい。渡邊教授の研究室では、葉菜、果菜、根菜、ハーブ、薬草など、20種類以上の品種で研究を進めている。

「必ずしもおいしくすることだけが目的ではありません。果物なら甘み、薬草なら薬効、ハーブなら香りや風味、根菜類なら歯ごたえやカロリーといった形で、それぞれの用途に合わせて、必要な栄養価や特性を伸ばす研究を進めています」

具体的には、とても甘くてビタミンも豊富なイチゴ、機能性の高いペプチド成分を含む大豆、カロリーが高いジャガイモなど、一点特化型の野菜などを研究中とのこと。TPP交渉参加などで、農業のあり方が見直されている今、おいしい、カロリーが高いなど、ある目的に特化した野菜を、安価で安定的に生産できるとなれば、将来的には、日本発のLEDブランド野菜が世界を席巻するのも、夢ではないかもしれない。
(笹林司)

※この記事は2013年4月に取材・掲載した記事です

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