大田区「現状は様子見多い」、民間「法律緩和でも不十分」

「民泊」制度スタートも、行政と民間業者の声は乖離

2016.04.21 THU


民泊は、コンサートや祭りなど一時期に観光客が急増するタイミングに起こるホテル不足解消にも有効だ。 写真提供:とまれる
東京都大田区と大阪府で、自宅の空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」制度がスタートしている。

Airbnbなどのサービスをきっかけに世界中で注目された「民泊」だが、日本では「人を宿泊させる」「宿泊料を取る」「継続性」という点から、旅館業法の許可が必要となる。しかし近年は、許可を得ない「ヤミ民泊」のトラブルが急増。そこで今回のように、東京圏や関西圏といった「国家戦略特区(以下、特区)」に限り、旅館業法の適用を除外し、各自治体の条例に基づいた民泊であれば、合法的として認めようという流れになってきたわけだ。

はたして、合法的な民泊の現状はどうなっているのか? 全国で初めて民泊物件を認定した大田区に聞いた。

「現在、認定件数は8件です(4/13時点)。旅館業法の規制緩和議論も進行中で、様子見をしている人が多いのだと認識しています。民泊に対しては、安全・安心面や衛生面などに不安を感じている人が多いようなので、まずは数よりも質を重視し、安心して利用できる実績を作ることが重要としています。ただ、ルールが厳しくて申請しづらいという声もあり、今後運用を進めるなかで、対応を検討していく予定です」

一方、観光庁などの有識者会議では、民泊を旅館業法で定める「簡易宿所(民宿やカプセルホテルなど)」と位置づけ、客室延床面積とフロント設置に関する要件を緩和する改正法が、4月1日に施行されている。こうした特区が定める民泊の条件や旅館業法の緩和を、事業者側はどうとらえているのだろうか。民泊予約サイト「STAY JAPAN」を運営し、大田区と大阪府で物件の認定を受けた民泊事業者「とまれる」代表の三口聡之介さんに聞いた。

「一言でいえば、どちら(特区の民泊条件・旅館業法の緩和要件)も利用者のニーズに応える形になっていないですね。特区が定める民泊の要件の1つに『6泊7日以上』の項目があります。私たちが把握しているデータでは、それに該当する訪日外国人は10%程度。観光客の多くはアジアからの2~3泊が主で、6泊以上するのは欧米人くらいです。さらに、来日したら東京で2泊、大阪で2泊というように、移動するのがほとんど。同じ場所にとどまる人は1%くらいではないでしょうか。そのため、訪日外国人の急増で宿を整備しているにもかかわらず、その多くを取りこぼしているのです」

ほかにも、特区で定められている民泊では、消火器や誘導灯、自動火災報知器の設置など、高度な設備が求められることもある。さらに、居室の床面積が25平方メートル以上など、日本の狭いワンルームマンションの空き部屋を活用するにはハードルが高いという。

「旅館業法の緩和では、許可を取りやすくなるように簡易宿所の延べ床面積基準が『1人当たり3.3平方メートル』となりました。しかし、元々は共同利用を想定しているため、トイレは男性用と女性用を分けるなど、とても住居の一部を利用してできるものではありません。まだ特区の条例のほうが一般住居を想定しているので、その点は問題ありません。また、今回の緩和の影響で、条例制定の検討をやめてしまった特区もあります」

もちろん、行政からすれば信頼性担保のために厳しくせざるを得ない状況もある。しかし、合法的な民泊の広がりが鈍くなるような…。

「民泊で問題となるのは、誰が運営しているのかが分からず、トラブルが起きた時に苦情の伝え先が分からないことにあります。宿泊者の身元管理と運営者を明らかにするだけでも、ある程度の不安を払しょくできるのではないでしょうか。合法的な民泊が増えないと違法な民泊が淘汰されません。緩められるところは緩め、不法の取り締まりを強化する方が効果的かと思います」

民泊の本格化には、まだまだ課題が多いよう。とはいえ、民泊が宿泊スタイルの1つとしての地位を確立しつつあるのは間違いない。ホストとして、自分の家を貸し出す可能性が増すことを考えても、“気軽に貸せる”“気軽に泊まれる”という2点を両立できる体制になってほしいものだ。
(南澤悠佳/ノオト)

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