痛みの基準は1ハナゲではないけれど…

痛みを数値化する機械はどんな医療に役立つの?

2007.05.17 THU



イラスト:かわしま あきこ
「人の痛みはわからない」とはよく言われることだが、確かに他人の痛みを完全に共有することは無理というものだ。医師も、これまで患者の表情や反応で推察するしかなかった。

しかし、このほど痛みのレベルを数値化する機械が開発されたという。昔、痛みの基準が、鼻毛を抜いたときに感じる痛み=「1ハナゲ(hanage)」として定義された、というジョークが流行したが、痛みを数値化するという技術は現実になったようだ。

では、どのように痛みを数値化するのか。まず体に電極を貼り、本人が刺激と感じるまで微弱な電気刺激を与える。つまり電気に対する感度を測り、これを基準とする。次に電気刺激を上げていき、患部の痛みと同じくらいの刺激だと患者が感じた時にスイッチを押してもらう。これを最初の基準と比較し、痛みを数値化するというわけだ。

だが、これでは患部と電気刺激という倍の苦痛を患者は強いられるのでは? 開発者の杏林大学教授、嶋津秀昭氏はこう語る。

「電気刺激といっても、痛くはありません。痛みを感じる神経を刺激しない波形の電気刺激を与える。これが従来は難しかった」

では、実際の医療現場では、どのような役に立つのだろうか。

「痛みを軽減する治療でいえば、どれだけ効果が上がっているかの指標になります。逆に知覚神経に麻痺が生じてきた患者さんの場合、自覚症状が鈍くなるので、データを取っていれば、麻痺の進行がわかります」

患者さんごとにデータを取るということは、数値は個人的なものということですか。

「万単位でデータを取っているので、だいたいこの程度、という平均値はわかってきています。ただ、患者さんが心理的にどんな状態にあるかで主観的な苦痛と機械の数値にズレが生じる場合もある。かわりに、ただ痛みをとればいいのか、不安を除くのが重要なのかを判断する材料になります」

実際の苦痛は本人にしか知りえるものではないが、痛みの数値化は治療の指針に有益な情報を与えてくれそうだ。


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