生命保険はボクらを守ってくれるの?

第3回 ボクらのために使われない保険料の謎?

2009.02.23 MON

生命保険はボクらを守ってくれるの?

同じ保障内容なのに保険料に差が出るのはどうして?



月々支払う生命保険の保険料の全額が、万が一のとき、ボクたちを助けてくれる保険金だけに使われているわけでない。ほかのモノやサービス同様に、社員の人件費や新規顧客を獲得するための宣伝費、オフィスビルの家賃といった保険会社を運営するためのコストや、保険会社の利益が保険料には含まれている。

万が一のときに助けてくれる保険とはいっても、それを販売しているのは、共済など一部の団体を除けばほとんどが一般の企業。コストもかかるし、利益を得るのは当然なこと。でも、同じような保障内容の生命保険で、保険料が2倍も違う場合がある、なんて聞くと、事情は変わってくる。

大手生命保険会社、外資系生命保険会社、ネット生保それぞれで、30歳男性が死亡保障3000万円(10年定期)の死亡保険に加入した場合の保険料を編集部で調査したところ、高いところで保険料は年額約8万円。一方、安いところの保険料は年額約4万円で、およそ2倍も保険料が違っていた。

保険料のうち、ボクらの保障のために使われる金額(これを「純保険料」と呼ぶ)は、死亡率(※)をもとにして算出されている。この死亡率は、国勢調査などの調査データからはじきだされた数字をベースにしているため、保険会社ごとに大きな差はない。つまり、純保険料の差で、ボクらが支払う保険料が約2倍になるとは考えにくい。ということは、コストや利益率が保険会社で大きく異なっていると予想される。

そこで『生命保険の「罠」』(講談社α文庫)などの著者である後田亨氏にこのあたりの事情を聞いた。
せっかく支払っているのに、その多くが経費や利益に回されている。しかもその内訳はなかなかうかがい知ることができない、というのが現状なのだ
「我々が払っている保険料から純保険料を引いた部分のことを『付加保険料』といいます。この付加保険料には、人件費、宣伝費、オフィスの家賃など保険会社が会社を運営するためのコストや、保険会社の利益が含まれています。純保険料も保険会社間で多少の差はありますが、保険料が2倍も違ってくる大きな原因は付加保険料の差が大きいと考えられます」

やはりそうなんですね。ところで付加保険料って、ボクらが払っている保険料のうち、どのくらいの割合を占めているものなんですか?

「保険料の価格差から付加保険料が各社で違うことはある程度わかっていましたが、付加保険料がどのくらい保険料に含まれているかは公式に発表されたデータがなく、はっきりしていませんでした。しかし、昨年11月にライフネット生命が、保険料に含まれる付加保険料の割合を開示したため、各社の付加保険料がどの程度なのかイメージできるようになりました」

昨年11月のライフネット生命のニュースリリースによると、同社が販売する30歳男性の定期死亡保険(保険金額3000万円、保険期間10年)の付加保険料は、月額保険料3484円のうち815円。つまり、月額保険料の約23%が付加保険料になる計算だ。

仮に純保険料が同じだと仮定すると、なんだか他の保険が高く思えるけど…。もちろん保険料が高い死亡保険には、何かあったときにすぐ駆けつけてくれる営業のサービスや、定期的に保険のことについて相談にのってくれるようなサービスが料金に含まれており、単純な横並びで保険料を比較するものではないかもしれない。だが、通販やネットの会社でも、電話やメールでいつでも相談できる体制を用意しているのも事実。それに、不況なこのご時世、保険料の安さにプライオリティが上がっているのも確か。問題は、どの保険のサービスが充実しているのか、どの保険の保険料が安いのかといった、比較情報が十分に公開されていないことだと思う。

「ライフネット生命が付加保険料の割合を開示したことで、今後は保険会社の情報公開が進むことを期待したいですね。そうなれば、保険料の比較もしやすい環境になるので、サービスがともなっていない付加保険料だけが高い保険は淘汰されることになるでしょう」

生命保険が、少しでも比較検討しやすくなることを期待したいものです。


※30歳、40歳など、それぞれの年齢ごとの一定の人口数に対するその年の死亡者の割合のこと
付加保険料の用途は、大きく分けてこの3つ。集金にまで経費が使われていたとはちょっと驚きだ

月々の保険料からどれだけ経費や利益に回されているの!?



ボクらが月々支払っている保険料には、保険会社の人件費や宣伝費、事務所費用などの経費や、保険会社の利益が含まれている。これらの経費や利益は「付加保険料」と呼ばれていて、保険料に占めるその割合は各保険会社や生命保険によってまちまち。なかには半分以上が付加保険料になっている生命保険もあるとか。ボクらとしてはせっかく払った保険料なので、なるべくボクらの保障に回してほしいわけで…。そこで、なぜ付加保険料が高くなってしまうのかを、『生命保険の「罠」』(講談社α文庫)などの著者である後田亨氏に聞いてみた。 「価格に経費や利益分が含まれているのは、生命保険に限らずどの商品も同じことです。ただ、普通の商品は比較検討されて選ばれるため、無茶な価格設定にはしませんし、できません。しかし、生命保険の場合は商品が複雑で比較検討しにくいため、こうした競争原理が働きません。付加保険料が3割4割というのはまだマシな方で、推定では7割?という保険もあります」

え、付加保険料が7割なんて保険もあるんですか! それでは何に保険料を払っているのかわからないですね。しかし、なぜこんなに高くする必要があるのでしょう?

「原因として、まず人件費の高さがあげられます。生命保険は対面方式で売ることがほとんどなので、大量に人員を抱える必要があるうえに、長期間働く営業が少ないのでロスも大きい。総額にするとかなりの金額になるでしょう」

日本の生命保険は、営業がお客さん一人ひとりに直接会って受注する場合が大半。生命保険は、万が一の事態という普段想定していないことを丁寧にお客さんに説明しなくてはいけないので、営業一人あたりが1日に回れるのはせいぜい4~5件くらいだ。もちろんそのすべてが契約してくれるわけではないから、一定の新規顧客を獲得し続けるには大量の営業を抱えておく必要がある。そのため、保険会社としては人件費がかなり多くなってしまうのだ。

「もう一つは、“保険会社としては利益が低いが、顧客に人気のある貯蓄型保険”の存在があげられます。これは年金のように一定期間を過ぎた後、毎月お金が支払われるというタイプのものですね。こういう保険は銀行の定期預金などほかの金融商品と比べられるため、付加保険料を加えにくいのです。顧客に『そんなに高いなら貯金した方が得だよ』と言われたらおしまいですからね。そこで、その分を死亡保険や医療保険といったほかの商品に付加保険料を上乗せしてしまう場合があります」

なるほど、そんな裏事情もあるんですね。でも、それなら貯蓄型保険なんて売らなければいいのに?

「万が一が起こらなければ、払った保険料が戻ってこない掛け捨ての保険は『損をしたくない』という心理が働くのか、それ単体ではどうしてもお客さんの反応が悪い。一方、決まった金額が戻ってくる貯蓄型保険は、お客さんの反応がいい。そのため、各保険会社とも新規顧客を獲得するためには貯蓄型保険が必要なのです。つまり、人気のある貯蓄型保険で営業をかけ、ほかの死亡保険や医療保険などをオプションとしてセットで売ってその分のコストは回収しているわけです」

さらに生命保険には、貯蓄型保険や掛け捨ての保険を混在させて、1つの保険商品にしている事例もある。この場合、各保険の付加保険料がどうなっているのかはさらにわかりにくくなる。

生命保険…もう少しシンプルな構造にして、ボクらでも比較検討しやすくなってほしいものです。 経費や利益が商品価格に含まれるのはどの商品も同じこと。でも生命保険の場合、個人で商品を比較検討することが難しく、保険会社によって付加保険料が大きく違っていても我々はなかなか気づくことができない。

とはいえ、付加保険料の割合を公開する保険会社が登場したり、保険業界も少しずつ情報公開が進みつつあるようです。今後、この流れが加速して、ボクらが生命保険を選ぶときに比較検討しやすくなることを期待したいと思います。

さて、次回は「生命保険会社が潰れたらどうなるの?」を調査します。

今後の調査の参考に、皆さんの生命保険に関する疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

取材協力・後田亨氏

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