世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

日本で“貧困層”が増えてるってホント?

2009.11.19 THU

経済学ドリル


【問1】先日発表された日本の「貧困率※」。
その割合と「貧困」の条件は? (※貧困率=相対的貧困率)

A 貧困率9.5%・可処分所得約7.6万円/月以下
B 貧困率15.7%・可処分所得約9.5万円/月以下 
C 貧困率20.8%・可処分所得約11.4万円/月以下

【解説】かつての日本は、国民の所得格差が小さく、「1億総中流」という言葉も誕生しました。しかし、近年では、規制緩和政策にともなう競争の激化などによって、国民の所得格差が拡大しつつあります。そうしたなか、「ワーキングプア(働く貧困層)」や「ネットカフェ難民」のように格差社会の底辺に位置する低所得層も増加しています。たとえば、厚生労働省が推計・発表した日本の「相対的貧困率」を見ると、この数字が1990年代後半から上昇傾向で推移していることがわかります。「相対的貧困率」とは、国民の可処分所得を多い人から順番に並べていき、可処分所得が、ちょうど真ん中の順位にあたる人の金額の半分に満たない人の割合を指します。国際比較で見ても、日本の「相対的貧困率」は高い水準となっており、日本はOECD加盟30カ国中、4番目に悪い数字となっています。
(注)可処分所得=所得から所得税・住民税や社会保険料、固定資産税を差し引いた額

【問2】OECD加盟30カ国の中で、最も貧困層の割合が高いのはどの国?

A トルコ B メキシコ C ハンガリー

[正解] 問1:B 問2:B


門倉貴史 かどくら・たかし 慶應義塾大学経済学部卒業後、金融機関のシンクタンクで主任研究員などを歴任。現在、BRICs経済研究所代表。専門は日米経済、BRICs経済、地下経済など。著書に『大失業時代』(祥伝社新書)、『世界不況を生き抜く新・企業戦略』(朝日新書)など多数

日本の“貧困率”が高い理由をひもとくと…



OECD(経済協力開発機構)や日本の厚生労働省の調査によると、日本では貧困層の割合が上昇傾向にあり、国際比較で見ても高い水準にあるとの結果が出ています。
しかし、いくら景気が低迷しているとはいえ、日本がアジア随一の経済大国であることに変わりはありません。07年の1人あたりの国民所得が約404万円に達する日本国内に、これほど高い割合で貧困層がいるはずがないと考える読者も多いのではないでしょうか。
実は、日本の貧困層の割合が高いのは、貧困層を「相対的貧困率」によってとらえているためなのです。ある国における貧困層の割合を把握するには、その尺度として「相対的貧困率」を使う場合と「絶対的貧困率」を使う場合があります。
「相対的貧困率」は、他の人たちとの相対比較において、貧しい人の割合を測る尺度です。ですから貧困層といっても、その収入の水準は国によって異なります。
一方、「絶対的貧困率」は、収入が極端に少なくて、今日明日の食事の心配をしなければならないほど困っている人たちの割合を指します。「絶対的貧困率」は、他の人たちとの相対比較ではなく、収入の絶対水準で測ります。「絶対的貧困」となる収入の定義は、調査機関によって異なりますが、世界銀行は、1人あたりの年間所得が370ドル(日本円に換算すると3万3000円程度)以下の人を「絶対的貧困」としています。
この「絶対的貧困率」の尺度で測れば、日本の貧困層はゼロに近い数字となるのです。つまり、日本ではこれまでの経済発展によって絶対的な貧困に苦しむ人の数は減っているが、格差の拡大によって、他の人たちと比べた場合に低い収入の人たちが増えているということです。このように、(日本は国民の平均所得が国際的に高いので)絶対的な貧困に直面していなくても、「相対的貧困率」の尺度で測ると、統計上貧困層に分類されてしまう人が増えるというわけです。

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