よくわかる統計マジック

第5回 食料生産力は自給率だけでは測れない!?

2010.04.06 TUE

よくわかる統計マジック


畜産物のカロリーベース自給率が総じて低いワケは飼料自給率(家畜が食べる国産飼料の割合)にあります。いくら国内で家畜を飼育していても、エサが輸入品である限り自給率の対象にはなりません 図版デザイン/坂井大輔

国内で生産された畜産物が「国産」扱いされないフシギ



「40%って、低すぎじゃない?」と、ことさら心配される日本の食料自給率ですが、これはカロリーベースで計算したもので、生産額ベースなら65%(2008年度概算値)になり、そう悪くない数字であると前回お話ししました。で、今回はカロリーベース自給率についてもう少し突っ込みます。一般的に、自給率というのは、「1日に必要な食料(分母)のうち、どの程度が国産(分子)でまかなえているか」を表す数値と解されがちですが、そう単純な話ではありません。まず、カロリーベース自給率の計算方法は

1人1日あたりの国産供給カロリー ÷ 1人1日あたりの供給カロリー

でした。これに2008年の数字を当てはめると

分子=1012kcal
分母=2473kcal

なので、自給率は41%になります。しかし、ここで注意すべきは、分母となる「供給カロリー」は、ぼくらが1日に「摂取したカロリー」ではないということです。厚生労働省の資料によれば、2008年の国民1人1日あたりの摂取カロリーの平均は1867kcalでした。ということは、農林水産省の自給率計算では、分母に606kcal余計に加算されていることになります。 では、この供給カロリーの4分の1にも相当する606kcalは何なのかといえば、毎日大量に廃棄されるコンビニ食品や、外食産業および一般家庭から出る食べ残しなどのカロリーです。つまり、“誰にも供給されなかったカロリー”も勘定に入れられているわけです。

また、分子の国産供給カロリーも、日本国内で生産された食料すべてのカロリーがカウントされているわけではありません。牛肉や豚肉、鶏卵、乳製品などの畜産物の場合、重量ベースで計算した品目別の自給率に飼料自給率をかけ算してカロリーベース自給率を出すからです。たとえば、2003年の豚肉の品目別自給率は53%ですが、飼料自給率は9.7%しかないため、カロリーベース自給率はわずか5%に落ち込んでしまいます。

他方で、野菜の自給率は80%以上なのに、低カロリーゆえカロリーベースの自給率アップには貢献できません。それ以前に、販売を行わない自給的な農家で生産される農産物、あるいはプロの農家が廃棄している農産物などはハナから国産供給カロリーに計上されないので、国内の農業生産力を過小評価するカタチになってしまっています。こうした要素を踏まえると、カロリーベース自給率が示す数字よりも、日本の食料生産力のポテンシャルは高いように思えるのです。 この連載で取り上げてほしいテーマや、気になる統計データがあれば、右下の投稿ボタンから投稿ください!

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト