よくわかる統計マジック

第9回 グラフの「見た目」にダマされるな!

2010.05.11 TUE

よくわかる統計マジック


2010年の子供の数は1694万人ですが、1500万より下を省略しているため、単純に194万人ほどしかグラフ上には表れません 図版デザイン/坂井大輔

数字にウソはないけれど、見せ方次第で印象は大きく変わる



総務省統計局では、5月5日の「こどもの日」にちなんで、毎年、日本の子供の数(15歳未満人口)を発表しています。2010年4月1日現在の概算値は1694万人で、前年より約6万人減っています。ちなみにこれで29年連続の減少となり、過去最低の数字を更新しています。

とりあえず少子化はいまなお進行中なんだ、というのはおわかりいただけるかと思います。でも、文章だけで説明するよりも効果的な伝え方があります。よく新聞やテレビなどでは、こうした増減の推移をグラフにして見せてくれますよね。右のグラフaのように。

グラフを見て「うわ、めちゃくちゃ減ってるじゃん!」と驚かれるかもしれませんが、それは正しい反応です。なぜなら、これは“めちゃくちゃ減っているように見える”ように作ったグラフですから。タネ明かしをすると、このグラフの縦軸は1500万人からはじまっているから、つまりグラフの下半分をぶった切っているから、減り具合が急に見えるんですね。図のなかでピークにあたる1955年は2980万人で、2010年は1694万人なので、数字のうえでは55年間で4割強の減少ですが、グラフの棒の長さで比較すると8分の1近くまで落ち込んでしまいます。
グラフaでは見えなかった部分を表すとこうなります。まったく同じ数字を用いても、グラフaとbでは、見る人に与える印象は大きく異なるでしょう
参考までに縦軸の底を0人にすると、右下のグラフbのようになります。こちらだと、人口減少の度合いはだいぶゆるやかに見えますね。まあ、たしかに少子化は日本が抱える大きな課題であり、子供の数が年々減少しているのは厳然たる事実ですから、国民に対してその深刻さをより強く訴えかけるならグラフaもアリかもしれません。しかし、このような見せ方は印象操作、あるいは煽動と紙一重でもあります。たとえばこれが子供の人口ではなく、サラリーマンの平均年収の推移だったらどうでしょう。

国税庁の調査によれば、給与所得者の平均年収は、98年の465万円から08年の430万円まで、10年間で35万円減っています。これを縦軸=金額、横軸=年度のグラフにしたとき、縦軸の底を省略すればするほど、急な下降線を描くことができます。すなわち、必要以上に不況感をあおることになり得るわけです。数字をビジュアル化できるグラフは非常に便利で、様々な場面でお目にかかりますが、作り方次第でガラリと印象が変わるという点には注意が必要です。 この連載で取り上げてほしいテーマや、気になる統計データがあれば、右下の投稿ボタンから投稿ください。

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