社会性とやらを生物に学べるか?

第12回 編隊を組んで長距離移動するマガン

2010.11.16 TUE

社会性とやらを生物に学べるか?


見事なV字型になって飛ぶマガンの群れ。このほか、V字が崩れて斜め一直線に広がる竿型になることもある 画像提供:蕪栗ぬまっこくらぶ

V字型で飛ぶことでエネルギーを節約



冬が近づくと「暖かいところに行きたい」と思ってしまいますよね。これは人だけにあらず、越冬のために日本へやってくる動物もいます。たとえばマガンは、シベリアから約4000kmも飛んで、冬でも食べ物が豊富にある場所へ移動します。編隊を組んで飛ぶその姿は雁行と呼ばれ、日本でもなじみ深いですよね。このマガンの群れについて、日本動物科学研究所所長の今泉忠明先生に伺いました。

遠くシベリアから北海道を経て、宮城県などへ越冬しにやってくるマガン。渡りの最中に統率されたようなV字型の編隊をとることが知られていますが、これには理由があるんでしょうか。

「編隊を作ると、前を飛ぶ鳥が生み出す気流が揚力になり、後ろにいる鳥はその分エネルギーを節約して飛べるんです。戦闘機の編隊と同じで、真後ろには乱気流が発生しているので、それをわずかに避ける結果、V字になります」(今泉先生)

マラソンの風よけとは違って、真後ろではいけないんですね。また、V字型の先頭役は大変そうですが、損な役目は仲間を率いるリーダーが引き受けていたりするんでしょうか。

「数家族が集まって編隊を組んでいて、特にリーダーはいません。先頭も交代しながら飛んでいます。ただ、交代は意識して行っているわけではなく、疲れのために自然と入れ替わることになります」(同) 一家族だけではなく数家族で飛ぶのには理由があるのでしょうか。

「集団だとワシやタカなどの猛きん類に襲われにくいことを経験的に知っているのだと思います。少しでも傷を受けることは高速飛行するものにとって致命的です。そのため、敵があらわれると、密にかたまります。猛きん類もかたまりのなかには飛び込まないからです」(同)

危険なときはV字ではなく、かたまりになるんですね。そうやって遠く離れた越冬地へやってくるマガン。日本の代表的な越冬地となっている宮城県北部では、1カ所に数万羽がやってくることもあるそうです。

「なかには通常のコースを大きく外れて単独で沖縄などへ行ってしまうマガンもいます。このような異端者がいることが、突発的な出来事などによる種の全滅を避ける仕組みになっていると思います」(同)

はぐれると編隊を組めなくて大変そうですが、そういう役割もあるんですね。また、V字型の編隊は大型の渡り鳥特有のもので、ツルやハクチョウでも見られるそうです。渡りの時期、空を見上げたらもしかしたら編隊飛行が見られるかもしれませんよ。 当テーマは今回で最終回となります。
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