政治上の決まり文句でも訳し方は多種多様

遺憾の意ってどう訳しているの?

2012.10.04 THU


英語圏では国際社会に影響を及ぼす懸案が発生すると、強い非難を表明し即座に是正措置を求めるため「遺憾の意」のような発言は少ないそう
イラスト/坂本綾子
難しい外交問題を抱える日本。ニュースでは「不退転の決意」とか「毅然とした対応」とか「遺憾の意」といった政治家のコメントが連日報道されている。正直、何が言いたいのかイマイチわかりづらい言葉だが、こうしたコメントはどんな言葉に訳して相手に伝えているのか? 政府間交渉や国際会議などの通訳者として活躍する十河やよいさんに、英語での訳し方を聞いてみた。

「たとえば『遺憾の意』を英語で伝える場合、外交シーンでは“regret”を使って“I regret to say that…”のように表現することが多いですね」

より婉曲的に表現したい場合は“It is regrettable that”のように主語を人ではなく“it” にしてニュアンスを変えたり“deeply regret”など前につける形容詞で、強弱をつけたりする場合もあるそう。しかし“regret”は「起きたことに対する遺憾の意」という意味合いが強く、誰に非があるのかは不明瞭。相手を糾弾する意味をこめる場合は“It is deplorable that…”と訳すことが多いんだとか。一口に「遺憾の意」と言っても、状況によって伝え方が異なるんですね。

また「前向きに検討する」のように、前後の文脈や状況によってYesともNoともとれる日本語は、外交シーンで直訳して伝えることは少ないのだとか。このほか、訳すときに悩ましいのは「忸怩たる思い」のように本来の意味が変容しつつあるケース。この言葉はもともと「自分の振る舞いが恥ずかしい」という意味だったが、最近では「自分以外の対象に憤慨している」場合に使われるケースも増えている。そのため、発言者が「忸怩たる思い」といった場合には、どちらの意図か推量しつつ、前者の意味の“I am embarrassed that…”と訳すか、後者の意味で“resentful”などと訳すか判断するそう。緊迫した外交シーンでは、通訳ひとつで日本の将来に影響を与えかねない。政治通訳って本当に責任重大なんですね。
(有栖川匠)


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