乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×駒崎弘樹(1)

2013.02.08 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


ひょんなきっかけで関心を持った病児保育問題を解決するために、一念発起してNPO法人を立ちあげた駒崎氏(右)。新しい社会を切り拓くためには「空気を読まないことが大事」という点で2人の意見は一致した

「“お上”を“お下”と呼ぶのを流行らせたい」(乙武)



病気になった子どもの看病に頭を悩ませる“働くお母さん”は少なくない。これを改善すべく、仕事と育児を両立するうえで避けられない「病児保育」という問題に真っ向から取り組んでいるのが、認定NPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹氏。その思いを乙武洋匡が直撃した。


乙武: 駒崎さんが病児保育の分野に関心を持ったきっかけって何ですか?

駒崎: 僕はもともと、大学在学中からITベンチャーの経営に携わっていたんです。でも、どこか肌に合わないように感じていて…。そんなある日、ベビーシッターをやっている母から、子どもの看病のために仕事を休んだことを理由に解雇された人の話を聞いて、衝撃を受けました。幼い子どもが熱を出すのは決して珍しいことじゃないし、親が病気の子どもの看病をするのも当然なのに、と。

乙武: それはそうですよね。にもかかわらず、子どもが熱を出すと、多くの保育園は子どもを預かれる体制にない。

駒崎: これがきっかけで会社を共同経営者に譲り、NPO法人「フローレンス」を立ち上げたのが2004年のことでした。

乙武: 駒崎さんが取り組んでいる病児保育支援事業を見ていると、そこに「官」が介在していない点に大きな意味を感じます。最近、「新しい公共」という言葉も登場しましたが、まさしくフローレンスはこれにあたりますよね。

駒崎: そうですね。「新しい公共」とは、これまで「官」が主導していた行政サービスを、一般企業やNPOといった「民」も分かち合って担っていこうというものです。財政面でも「官」だけに任せることに限界が見えてきたため、我々みんなが公共に関わり、支えようという考え方ですね。

乙武: 僕はこの対談記事が、多くの若い世代が社会に関わるきっかけになってほしいと願っているんです。家電をばんばん作って売ることが社会のためになっていた戦後と違い、物が行き渡った現代は、誰しも社会の役に立つことを実感するのが難しい時代です。だからこそ、公共の一部に参加することには、大きな意味があるのではないかと。

駒崎: ええ。社会起業はモチベーションの供給源になると思います。

乙武: これからの時代は、民間の取り組みを官が下から支える構造が増えればいいなと思っているんです。官のことを「お上(おかみ)」といいますが、逆に「お下(おしも)」と呼ぶのを流行らせたい。

駒崎: いいですね(笑)。ただ、既存のしきたりを変えることが大変なのも、よくわかるんです。今の社会って、「ハイッ!」と積極的に手を挙げるだけでも、ちょっと浮いてしまう雰囲気があるじゃないですか。

乙武: うん、何か特定の意見を述べる際にも、ちょっと勇気が必要な風潮がありますからね。その点、駒崎さんは、いい意味で“空気を読めない”ところがあったんだと思う。だからこそ、経営していたIT企業を投げ出して、NPOを興すような行動にも出られた(笑)。

駒崎: そうかもしれません(笑)。挑戦する人を茶化したりディスったりするのは、実はすごくカッコ悪い行為だという認識を僕らの世代で浸透させ、そこで逆に、周囲が拍手するような文化を作っていきたいですよね。

乙武: そして日本人特有の、「空気を読む」という雰囲気を排除していきたい。空気を読まない文化。それによって、世に出てくる人もいるはず。

駒崎: 若い人たちは内にこもっていないで、とにかくユニフォームを着てグラウンドに出てほしい。そうしなければ何も始まらないし、たとえ失敗したって、若者には転ぶ権利があるんですから。

乙武: そういう熱いチャレンジを受け止め、素直に応援できる世の中になったら、社会が半歩前進したといえるんでしょうね。

(構成:友清 哲) 【今回の対談相手】
駒崎弘樹さん
1979年生まれ。NPO法人フローレンス代表として病児保育支援に取り組むかたわら、内閣府非常勤国家公務員(2010年)、明治学院大学・非常勤講師など幅広く活躍。07年にはニューズウィーク誌上で「世界を変える社会起業家100人」に選ばれた

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