乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×津田大介(2)

2013.06.14 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「ネット選挙解禁で、いっそう政治家に民意が届くようになる。今後は、たくさん届く“陳情”を適切にさばく秘書のスキルも重要になるでしょう」(津田)

津田大介「今はネットの声がちゃんと行政に届く時代」



乙武: ネット選挙解禁といっても、ネットで投票できるようになるわけではありませんよね。では、いったい、どんなことができるようになるんでしょうか?

津田: いろいろありますが、まず候補者が選挙期間中にホームページやブログ、SNSを更新できるようになります。また、動画がOKになったことも大きな変化でしょうね。これまでは映像によるPRといえば政見放送しかなかったわけですが、今後はYouTubeやニコニコ動画などを活用できるんです。

乙武: それは僕ら有権者にとってもありがたいですね。ネット動画なら、いつでも好きな時にチェックできるようになるわけですから。

津田: ただ、ひとつ争点になっているのは、メールです。今回の改正では、立候補者本人以外の有権者による応援メールの発信は禁じられています。「○○候補への投票を、よろしくお願いします」というやつですね。

乙武: それはなぜですか? 候補者本人が「よろしく」とメールするのはOKなのに、周囲の運動員が送るのはNGというのは、いまひとつ腑に落ちないのですが…。

津田: SNSと違ってメールはクローズドなやり取りですからね。「○○に入れてください。△△はこういう悪い噂もありますし…」などと、他の候補者を貶めるようなことがないともかぎりません。それに、細かなルールを熟知していない有権者が、応援候補のために良かれと思って送ったメールが罰則規定に抵触していて逮捕されてしまう…なんてこともあり得るかもしれません。だったら、メールについては当面、候補者本人のみ解禁しようということでしょう。

乙武: なるほど。そうした理由から、「全面解禁」とはならなかったんですね。

津田: なんだかんだいっても、今回はけっこういい形で解禁されたと個人的には思いますよ。民主党政権下で議論されていた時は、「公式サイトやブログはOKだけど、Twitterの更新はNG」などという、わけのわからないものでしたからね(苦笑)。

乙武: それはたしかに中途半端ですね。そもそも津田さんがこうした「ネットと選挙」というテーマに関心を持つようになったのは、何がきっかけだったんですか?

津田: 僕は2006年から2008年まで文化庁・文化審議会の審議委員を務めていたのですが、この際、政策が決まるプロセスに違和感を覚えたことがきっかけなんです。政策って、もっと当事者の声やユーザーの考えが反映されるべきじゃないのか、と。

乙武: たしかに僕らの生活に密接に結びつくような問題であっても、僕らとは切り離されたところで意思決定がなされていることが多い。民意が介在せずに決まる政策では、意味がないですものね。

津田: その後、スタートしたばかりの民主党政権が、記者クラブに属さない記者にも政府主催の記者会見をオープンにするという公約を守らず、猛烈に批判を浴びたことがありました。その時、Twitterユーザーである民主党の藤末健三議員が批判ツイートをすべて印刷し、党の上層部に紙の束を見せながら、一刻も早く記者会見の開放に向けて動くべきだと説得したんです。この時、ネットからでもちゃんと民意が届く時代になったんだなと実感し、それがなんだかとても面白く思えたんです。

乙武: これまでは僕らの声を政治家に届けようとしても、どうすればいいのかいまひとつわからなかった。政治家につてのある人なんて一握りだし、わざわざ事務所に電話をかけるのも、ちょっとハードルが高い。今回のネット選挙解禁もそうですが、有権者と政治家の距離を縮めていくツールとして、今後ますますインターネットの重要性は高まっていきそうですね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
津田大介さん
1973年、東京都生まれ。早稲田大学・社会科学部卒。IT系のライターとして文筆活動をはじめ、現在はジャーナリストとして多方面で活躍中。メディアプロデューサー、メディア・アクティビストとしての顔も持つ。2012年末には様々な問題の是非についてネット上で投票を募る「ゼゼヒヒ」をオープンした

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