乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×高木新平(2)

2013.09.13 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「自分の意志で入ったり抜けたりできるのは、シェアハウスの大きなメリット。家族に代わるコミュニティとして、新しい選択肢になりえるかもしれない」(乙武) 撮影=後藤 渉

高木新平「“家が欲しい”は単なる固定観念では?」



乙武: 高木君が以前に六本木でやっていた「トーキョーよるヒルズ」は、誰でも立ち寄れる空間という新しいコンセプトのシェアハウスだったわけだけど、当時、まさかこれほど話題になるとは思っていなかったでしょう?

高木: そうですね。最初はあくまでも、お金のない者同士が生き延びるために、一緒に暮らし始めただけでしたから(笑)。それがSNSやネット中継などをフル活用して積極的に情報発信していったことで、ネットとリアルが絡み合って一気に広がっていきました。

乙武: 24時間、夜中までリビングを一般開放するなんて、じつに斬新な発想だよね。

高木: 僕は会社を辞めてからシェアハウスを立ち上げるまでの間、自分の家を持たずに放浪していた期間がけっこうあって。その時期に、「1人でいるための空間って、あまり必要ないのかも」と気付かされたんです。とくに僕みたいにフリーランスの人間にとっては、仲間が集まることのできる場を持ったり、仲間を集めるために情報を発信したりすることの方が、難しいし大切なことなんですよ。

乙武: なるほど。それが“家を公共化する”という社会実験につながったわけだ。

高木: 僕、この「よるヒルズ」とは別に、「Liverty」というモノづくり集団をプロデュースしていて、そっちでも若手クリエイターを中心としたシェアハウスを全国で6カ所ほど展開しているんです。そこに住んでいる連中を見ていると、プライベートのない居住空間にちゃんと適応していて、たとえば「広々としたソファでくつろぎたい時は、○○美術館のロビーがいいぞ」とか、「オナニーする時は××ホテルのトイレが快適だよ」なんて情報交換をしていたりする(笑)。

乙武: あはは、それはたくましいね(笑)。

高木: 結局、プライベートな空間が必要だというのは、単なる固定観念ではないかと。僕の世代の多くは、生まれた時から1人部屋が与えられているケースが多いし、だからこそ1人のための空間を所有することに対して“憧れ”を持つことがない。街に出れば1人になるための余白なんてたくさんありますしね。むしろいま探しているのは、生活レベルで仲間と一緒にいられる空間なんですよ。

乙武: たとえば、「なぜ人は結婚するのか?」と考えてみると、もちろんそこには様々な理由があるんだけど、ひとつには「1人で生きていくのは寂しいから」というのも無視できない理由だと思う。人間って勝手だから、思春期になると1人で自由に暮らしたいという欲求を持つけど、さらに年齢を重ねると、今度はその1人での生活に寂しさや焦燥感を覚えるようになるんだよね。

高木: そうですね。僕自身、自由でありたいという気持ちも強くあるけれど、それ以上に、1人で生きる寂しさには耐えられないと思います。

乙武: ところが、昨今の離婚率を見てもわかるように、結婚には破局のリスクだってある。その場合、金銭面や精神面で大きなマイナスを背負うことだってあるかもしれない。その点、シェアハウスというのは入るのも抜けるのも自由。これは大きな特徴で、もしかすると、これからの“集団”の在り方、もっといえば、人々の生き方に大きな変化をもたらすことになるかもしれないって思うんだよね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
高木新平さん
1987年、富山県生まれ。博報堂退社後、シェアハウス「よるヒルズ」やモノづくり集団「Liverty」など実験的なコミュニティを立ち上げて活動。また企業ブランディングや政治キャンペーンも手がける。

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