乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×石川大我(2)

2013.10.11 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


石川大我「隠そうと思えば隠せることが、大きな葛藤を生む」



乙武: 僕がLGBTの分野に興味を持つようになったのは、もともと身近にトランスジェンダーの友人が何人かいたからなんです。その後、「恋愛対象は女性だけど、性的興奮を覚えるのは男性」という“男性”と知り合って、L(レズビアン)にもG(ゲイ)にもB(バイセクシャル)にもT(トランスジェンダー)にも分類できない人がいることも知りました。そこでようやく、「ああ、性というのはグラデーションなんだな」と実感できたんです。

石川: うん、“性はグラデーション”というのは、とても適切な表現ですよね。人間の性的指向は、男性を愛する女性、女性を愛する男性という2パターンだけじゃないことが広く知られてきたいま、その多様性を尊重できる社会こそが、本当の意味で豊かな社会だと思います。

乙武: やはり、同性愛者にとっていまの日本の社会というのは、暮らしにくい環境ですか?

石川: 僕の場合はゲイであることをオープンにしたことで、ある程度自分が暮らしやすい環境を作ってこられた面はあります。ただ、周囲のLGBTの話を聞いていると、やっぱり生き方の選択肢は狭まっていますよね。ある程度の年齢になったら、結婚して子どもを作って家庭を営んで…という、社会が提示するモデルに対応できないわけですから。

乙武: たしかに、同性愛者として生きていくロールモデルのようなものは、まだ確立されていない印象ですね。

石川: 僕は大学を出たあとしばらくフラフラしていたんですけど、少なくとも、普通に就職して一般企業に勤めるなかでパートナーを見つけて幸せに暮らしていく、というイメージはまったく持てませんでした。それでも、最近はLGBTの受け入れを表明する企業も出てきましたし、少しずつ環境は改善されているんでしょうけど。

乙武: 環境面でいえば、インターネットの登場で、同性愛の人同士がつながりやすくなったことは大きいんでしょうね。思春期に性的指向について悩み始めた時、ネットで検索してみる。そこで、「ああ、自分のような人間は決してひとりじゃないんだ。社会には同じ悩みを抱えた人がたくさんいるんだ」と知ることができる。これは大きい。

石川: そうですね。それに、乙武さんみたいな著名人がLGBTの問題に興味を持ってくれるのも大きいんですよ。以前、乙武さんがLGBTパレードに参加された時、メディアにいろいろコメントしているのを見て、心強く感じた人は多いはず。

乙武: LGBTに対する理解が少しずつ進んでいるとはいえ、やはり、家族へのカミングアウト、職場や学校でのカミングアウトというのは、大きな“壁”なのでしょうか。

石川: そうですね。マイノリティという意味では乙武さんも近い立場だと思うんですが、僕らは見た目ではLGBTとわかりにくい特性があります。乙武さんの場合は見ればわかる、いわば「歩くカミングアウト」じゃないですか(笑)。僕らは隠そうと思ったら隠せちゃうので、そこに葛藤があるわけです。

乙武: たしかに(笑)。僕は自らの障害をカミングアウトするかどうかといった葛藤に悩まされることはないですもんね。

石川: 日本の社会はいまでも、同性同士の結婚は認めていませんし、男が男に対して「好き」ということも、いい顔をされないのが現状です。ゲイであることを隠す方が波風は立たないんですが、それは自分を偽ることになる。

乙武: それでも、その波風が少しずつ小さなものへと変化してきたのは、石川さんのような人々の活動があればこそ。僕も微力ながら、発信のお手伝いができればと思っています。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
石川大我さん
1974年、東京都生まれ。2000年から同性愛者であることを公言し、その権利獲得を目指して活動。11年より東京都豊島区議会議員。著書に『ボクの彼氏はどこにいる?』『セクシュアルマイノリティをめぐる学校教育と支援』(共著)ほか

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