乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×宇野常寛(2)

2014.02.14 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「AKBブームを“たかがアイドル”と拒否せず、発展のヒントを探す材料とする視点が大切なんですね」(乙武) 撮影=後藤 渉

宇野常寛「コンテンツ業界は一度“負け”を認めるべき」



乙武: 宇野さんが日頃から語られている、AKB48ブームからいまの時代を読み解こうという視点は、とても興味深いですよね。着眼点次第でアイドルのようなサブカルチャーだって、新しい社会の仕組みづくりへのヒントとなる。

宇野: でも、批評の界隈からは批判もありますよ。AKB好きってだけで、主張の内容も吟味されないまま「こいつは叩いてOK」的な扱いを受けることも多いです。まあ、もう慣れっこですけどね。たとえば僕が2008年に出した『ゼロ年代の想像力』に、「いま一番面白いことをやってる作家はクドカンだ」と書いて、袋叩きにあってますし。

乙武: 絵画や音楽、映画や小説などは多くの人に文化であると認められていますが、まだまだドラマやアイドルを文化と捉えることに拒否反応を示す方も多いんですね。そうしたサブカルチャーの傾向、ここ数年で変わった点はありますか?

宇野: ここ最近は“作品を通じてコミュニケーションをとる”ことに、みんなが快楽を覚えるようになってきていますよね。

乙武: 一方的に発信されるものでなく、双方向性を持ったものに人気が集まるということですか?

宇野: そうですね。インターネットの登場がコミュニケーションを簡単で身近なものにした結果、何らかのかたちで参加できるコンテンツに人が集まるようになってきた。コメントが付けられるニコニコ動画やボーカロイドがヒットするのも、そういう部分に理由があるのだと思います。

乙武: なるほど。たしかにそれらは10年前には考えられなかったものですよね。それらはコンテンツでもあり、コミュニケーションを図るためのプラットフォームでもある。

宇野: いままでは、作品とそれを通じてコミュニケーションすることは、基本的に別物でした。ところが現在は、“コミュニケーション”がコンテンツの一部になりつつある印象です。もっというと、コミュニケーションを活性化させるための要素として、コンテンツがあるともいえます。

乙武: AKBのファンは、楽曲というコンテンツを楽しむというより、投票というコミュニケーションを図るためにCDを大量購入しているわけですもんね。この手法には批判もありますが、たしかに新しい発想です。

宇野: AKBのようなライブ主体のアイドルは、そういう時代を巧みに味方につけた好例でしょう。握手会なんて、いわばゲーム感覚でアイドルとコミュニケーションが取れるコンテンツですからね。

乙武: 元格闘家の須藤元気くんが、いまは「WORLD ORDER」というダンスユニットを率いているのですが、「いまの時代、CDやDVDを売ろうとするだけではビジネスとして成り立たない。むしろ、コンテンツはYouTubeなどでがんがん流して多くの人に存在を知ってもらい、いかにLIVEに来てもらうかを考えている」といってました。

宇野: おそらくいまの日本では、完成された作品をただ受け取るだけの文化は、とくに若い世代にはもう飽きられています。それよりも、未完成のものを自分が参加して変化させていく過程の方を面白く感じる人が多いんです。昔の文化論が好きな人は、それを文化の堕落のように批判するけれど、僕はそう判断するのは早計だと思う。テクノロジーや社会の変化にともない、何にドキドキするのかという定義が変わってきているんですよ。

乙武: なぜ人々がAKBにこれほど熱狂するのか、その仕組みを考えることで何らかのヒントが得られるかもしれませんね。

宇野: AKBが規模として大きいのでわかりやすいですが、これはあらゆるジャンルで起きていることだと思います。一方的に与えられる「物語」的なコンテンツより、双方向の「ゲーム」的なコンテンツの方が優位になっている。僕自身、この傾向に違和感がなくはないんです。でも、だからこそこの現実を受け止め、一度“負け”を認めるべき。そのうえで、現在の文化を考えたいですね。

乙武: AKBとファンの間に、なぜこれだけの熱量が生まれるのか。以前から不思議に思っていましたが、今日の宇野さんのお話でその独自性がよくわかりました。コンテンツからコミュニケーションへ。これは、ほかの文化を育てていく手法にも役立てることができそうな気がします。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
宇野常寛さん
1978年、青森県生まれ。評論家として活動する傍ら、文化批評誌『PLANETS』を発行。主な著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)ほか多数

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