[対談]乙武洋匡×宮本エリアナ「マイノリティを考える」(2)

乙武「日本の多様性の現在地は?」

2015.07.01 WED

乙武洋匡の「自問多答」


「“日本人”の幅を狭く定義すると、社会の可能性を狭めてしまう。なるべく広く受け入れた方が、豊かになれるんじゃないかな」と乙武氏

[対談]乙武洋匡×宮本エリアナ「マイノリティを考える」(2)



乙武洋匡: そもそもエリアナさんは、なぜミス・ユニバースに出場しようと決めたんですか?

宮本エリアナ: 正直にいうと、いわゆるミスコンにはあまり関心がなくて、ミス・ユニバースのことも詳しくは知らなかったんです。長崎の事務局の方から誘っていただいたときも、一度はお断りしたほどで。出場を決めたきっかけは、同じハーフの友人が、自ら命を絶ったことでした。彼はずっと自分の出自や差別に悩んでいたので、同じように苦しんでいるハーフの人は他にも大勢いるはずだ、と。自分が表に出ることで、こういう問題にスポットが当たればいいなと思ったんです。

乙武: 外国人が多い東京で暮らしていると、どうしても問題意識が薄れる面はあると思うんですが、全国規模で見ればまだまだ差別や偏見が残っているんでしょうか?

宮本: 地方ではハーフや外国人が珍しいという理由もあると思います。ただ、地方に限らず「日本とはこういうものだ」っていう考えが強い人はいるんじゃないでしょうか。たとえば、学校の授業でも「日本美人はこういうもの」と触れたりすることがありましたし、今回、私が日本代表に選ばれたときも「日本人らしくない」という批判を受けました。

乙武: これは「日本人」をどう定義するかという話になってきますよね。もちろん、法的には日本国籍を有する人が日本人なんですけど、そういう意味では、日本国籍を持つエリアナさんは確実に日本人であるのに、「日本人らしくない」と批判されてしまうのは明らかにおかしい。

宮本: その日本人らしさって一体何でしょう? アメリカの場合、本来のアメリカ人とはネイティブアメリカンの人たちですが、今は多民族・多文化社会ができあがっています。ミス・ユニバースのアメリカ代表には、白人や黒人だけでなく、アジア系の方が選ばれたこともあります。

乙武: 国籍以外に、みんなが定義する日本人って何なんだろうって考えると、「日本人と日本人の間に生まれていること」だったり、「たとえ片方が外国人でも、見た目が日本人に見えること」だったり。その線引きは人によって違うし、すごくあいまいですよね。

宮本: ええ。たとえばミス・ユニバースのようなコンテストで、いわゆる純日本人的な顔立ちの方が選ばれるかというと、そういうわけでもありません。

乙武: 僕は、「どういう人を日本人とするか」という定義を狭めれば狭めるほど、日本は貧弱になっていくと思うんです。逆に、この人も日本人だよね、この人も日本人でOKだよねというふうに、その範囲を広くできる国ほど、多様な価値観がその国の血となり、肉となっていく。つまり、その国が豊かになっていく。そういう意味で、今回エリアナさんが日本代表に選ばれたことで世に問いかけてくれたことって、すごく意味があると思うんです。

宮本: どんな問いかけですか?

乙武: 「2015年現在、我々はどういう人を日本人として定義できますか?」という問いです。それに対して、「この範囲しか認めたくない」という狭い範囲にこだわる人たちが反発の声をあげ、その声の大きさによって日本という国の多様性はこれくらいなんだと確認できた。現在地がわからなければ、「じゃあ、これからどうしていこうか」という話もできませんから。

【今回の対談相手】
宮本エリアナさん
1994年、長崎県出身。日本人の母親と、アフリカ系アメリカ人の父親の間に生まれる。中学卒業後に渡米し、2年間現地の高校に通う。帰国後にモデルとして活動をスタート。2014年11月、ミス・ユニバース・ジャパン長崎大会でグランプリを獲得。翌2015年3月の日本大会でグランプリを獲得し、日本代表に選出された。

(構成:友清 哲)

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