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自撮りで人気のサル、人に食べられて絶滅の危機

2017.03.03 FRI

 インドネシアの森で、いたずら好きのサルが写真家のカメラを奪って「自撮り」をしたという。この一件がなければ、全身が黒い毛で覆われたクロザルが注目されることなどなかったかもしれない。

 その後、写真はインターネット上で瞬く間に拡散し、こはく色の目と逆立った頭部の毛が特徴的なクロザルは突如として世界中の人気者となった。それはちょうど、動物の保全状況を評価する国際自然保護連合が、最も絶滅が心配される25種の霊長類の一つに、クロザルを指定しようとしていたときのことだった。

 自撮りをした「ナルト」という名のクロザルは今も、スラウェシ島ビツン市近郊のタンココ=バトゥアングス=ドゥアサウダラ自然保護区の森にいる。
インドネシア・スラウェシ島にある自然保護区内の海岸に姿を現したクロザル。(Stefano Unterthiner/National Geographic)
インドネシア・スラウェシ島にある自然保護区内の海岸に姿を現したクロザル。(Stefano Unterthiner/National Geographic)

食用やペット用として売買も

 現地語で「ヤキ」と呼ばれるクロザルは、スラウェシ島で進化した7種のマカク属のサルの一つだが、ここ数年、絶滅のおそれが高まっている。食用やペットにするために捕獲されるほか、ココナツ農園や個人の畑を作るための違法な森林伐採によって生息地が縮小しているのだ。

 作物の食害を防ぐために仕掛けられたわなに、クロザルがかかることがよくある。それらを売れば、手っ取り早く現金になる。地元では、捕獲されたり親をなくしたりした赤ん坊のクロザルが、ペットとして売買されてもいる。しかし、それよりも大きな脅威となっているのが、サルの肉を何世紀にもわたって食べてきたスラウェシ島民の食習慣だ。1キロ当たり450円前後(成獣のクロザルの体重は8~10キロ)で売買されていて、祝祭の時期には需要が跳ね上がる。

 37歳のノフィ・ラランタは、スパイスの一種であるクローブを町で手広く商う一方、狩猟の元締めもしている。彼は100人ほどの男を雇って、近隣の森で動物や植物を探させているのだ。彼は大きな冷凍庫を開けて、切断されて頭と胸だけになったクロザルを中から取り出して見せてくれた。彼の家族は週に15匹ほどのサルを売るが、その4分の1がクロザルだという。

 野生のクロザルを捕り尽くしたらどうするか、と尋ねてみた。最近は以前より遠くまで行かないとサルが見つからなくなったと認めたうえで、ラランタはこう言った。「私は商売人です。クローブの商売もある。それにネズミやコウモリはたくさんいますからね。ある動物がいなくなったら、別のものを探すだけですよ」

 絶滅危惧種のクロザルはインドネシアの法律で保護されている。そういうサルを扱っていて、逮捕される心配はないのだろうか。「それほど心配じゃないですよ。警官たちも…」と彼は不敵な笑みを浮かべながら続けた。「うちに来て一緒にクロザルを食べたりしますからね」

(ナショナル ジオグラフィック2017年3月号特集「“自撮り”で脚光 クロザルの現実」より)

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